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14.ダブルデート・出発前 :大原視点



中條の家は、――金持ちだ。


ダブルデート当日。

俺は瀟洒な佇まいをみせる中條家の門の前に立っていた。

何度か訪れたことはあるが、相変わらずここの家は洗練された雰囲気に包まれている。

なんでも高名な建築家が手がけたらしく、地元でも中條の家は有名で、ときにわざわざ見物にくる人間もいるくらいだ。


待ち合わせは中條の家だったが、俺は呼び鈴を押さずにその場に留まる。

……待ち合わせ時間まではまだ少し猶予があった。

約束だからとここまで来てしまったが、未だに迷いがある。

そもそもダブルデートなど柄ではないし、そんな心境でも状況でもない。家で英単語の一つでも覚えていた方がまだマシだ。

はぁと我知らず溜息が落ちる。

白い粒子が吐き出され、ふわりと空中で霧散した。

冬の自然現象であるそれを見ると、さらに寒さが募る。俺はダウンジャケットのポケットに手を突っ込んだ。

(この寒空に動物園って選択肢もどーかと思うぜ?)

誰にともなくごちるが、どうせ決めたのは中條だ。

昔から、あいつは強引だった。

なんでもかんでも勝手に決めてしまう。

……素直に友達と呼ぶには、関係がどこか一方的で、俺にとって中條は対処が難しい相手だった。拒絶しても憎まれ口を叩いても何食わぬ顔でするりと懐に入ってくる。

一緒に居て心休まる相手では決してないのに、……一緒に居て肩肘を張らずに一番自然体でいられるのもヤツだった。

強引だけど、だからといって強制的なわけではない。

今回の件だってそうだ。

……断る事だって、自分にはできたのだ。

(どこまでわかってやってるもんだか…)

食えないヤツだ。


らしくもなく優柔不断にぐずぐずと迷って。

迷って迷って迷った末に。

ここまで来てしまったのは、――どうしてなのか。


その答をださせるために、中條がこんな馬鹿げたダブルデートなるものを仕組んだのだとしたら、とんだ食わせ者だ。


――ここまで足を運んでしまった自分は、自覚しないわけにはいかない。


好きかどうかなんかわからない。


だが――。


「あ、お、大原…くん、おはよう!」


ちょっと離れた道の先、上ずった声で挨拶をしてくるクラスメイトが、俺にとって無視できない存在であるのだということをここにきて自覚しないわけにはいかなかった。


したくもなかった自覚をさせられて、俺は忌々しい気持ちを嚥下して「…はよ」と小川に挨拶を返しながら心に決意する。


(やっぱ、中條、シメル)


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