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魔獣災害――前世の記憶を持つ俺が日本を救うまで 双世界の守り手  作者: 玄呂 恭真
2章

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29話 法案作成

「ああ、忙しい……。なんでこんなことになっているんだ」


俺は今、総理官邸でパソコンとにらめっこしていた。

……なぜこんなことになったのか。

話は一日前にさかのぼる。

会見が終わってから一週間がたとうとしていた。普段の生活に戻り、大学へ行き、バイトをして、ごく普通の大学生としての日々を過ごしていた……少なくとも、そのつもりだった。

しかし土曜の昼、川村さんから渡されたスマホが鳴った。

電話に出ると天城総理の声がした。


「黒瀬です」

「天城だ。少し時間はあるかね?」

「はい、大丈夫ですよ」


今日と明日は予定が入っていない。


「すまないが、少し知恵を貸してもらえないか?」

「具体的にどのようなことをすればいいんですか?」


どうしたのだろう?魔獣災害が起きているならまだしも何かあったのだろうか?


「魔獣対策基本法を来週にも国会に提出予定なのは君も知っているだろう?」

「はい、ニュースで見ました」

「それで今急ピッチで法案をまとめているのだが、魔獣に関する知識がなくなかなか進んでいなくてな」

「それで力を貸してほしいと?」

「そうだ」

「わかりました。お受けします」

「ありがとう。一時間後に川村に迎えを出すから来てほしい」

「わかりました」


一時間後、川村さんが迎えに来てくれた。そのまま総理官邸の裏門まで送ってくれた。

案内された場所に通されるとそこには総理と知らない男が立っていた。

スーツ姿で、髪もワックスできっちり整えられている。見た目は三十代ほどで、実年齢より若く見えた。


「一週間ぶりですね、天城さん」

「急に呼び立ててすまない、紹介しよう、彼は木村大地 内閣官房の官僚だ。君の補佐をしてくれることになっている。彼は今回の法案作成に必要な範囲で、君の力について一部共有済みだ。もちろん守秘義務は課している。

何か困ったことがあれば彼を頼るといい」

「初めまして。木村です。気軽に頼ってください。」


官僚とは、国の政策や法律づくりを実務面で支える国家公務員のことだったはずだ。政治家が決めた方針を、実際の制度や文書に落とし込む役割だと、テレビで見た覚えがある。

俺は軽く頭を下げ、挨拶を済ませた。


「君にはこの部屋で仕事をしてもらう。もちろん働いた分の給料も発生する。どうかね?」


今いる場所は多目的室、小中学校の教室ほどの広さがあり、机が4つで一組にまとめられそこには資料やらパソコンが置いてあった。


「給料ももらえるのですか?」


俺はあっけにとられた。


「働いてもらうからな、さすがにボランティアとしてはいくまい。あと先日の魔獣を倒してくれた報奨金も出す。あとで口座を教えてくれ。」

「わかりました。具体的に、金額はどのように決めているのですか?」

「詳細は資料を見てくれ」


俺は机に置いてある資料を見る。報酬は魔獣をランク分けし、ランクごとに一体当たりの報酬額が決まっている仕組みだ。一体当たりすごい額だ。フォレストウルフでも約10万円だ。そんなに高くていいのだろうか。しかしあとがきにこれは正式制度ではなく、当面の協力者向けの暫定基準らしい。

政府としても無償で協力させるわけにはいかないという考えなのだろう。


「わかりました。喜んでお手伝いします。それと具体的に法案に関してどんな知識が必要なのですか?」

「調べてほしいことはすべてそこの資料に書いてある。それを見てくれ」


ページをめくると詳細が事細かに書いてある。これはとてもすぐには終わらなさそうだ。


「わかりました。頑張ります」


というわけで、俺は今、総理官邸でパソコンと格闘している。

昨夜いったん家には帰ったが、今日も朝から官邸に来て作業を続けている。それでも終わる気配はなかった。

今はそれぞれの魔獣の弱点と対策の報告書をまとめている。


「お疲れ様です。コーヒーでもいかがですか?」


木村さんが声をかけてくれた。手には二つのカップを持っている。


「ぜひ、ありがとうございます」

「少し休憩しませんか?」


時計を見ると4時だった。かれこれ昼休憩から、もう三時間以上が経っていた。昼休憩といってもご飯を食べながら仕事をしていたが。


「そうですね。休憩します」


湯気の立つコーヒーを受け取り、一口飲む。苦味が口の中に広がり、張り詰めていた頭が少しだけほぐれた。

机の上には、まだ目を通しきれていない資料が山のように積まれている。魔獣の分類、危険度、避難基準、自衛隊との連携方法。

それでも、今は目を背けるわけにはいかない。俺が知っていることを形にしなければ、次に魔獣が現れたとき、また誰かが犠牲になるかもしれない。

そう考えていると、向かいの席に木村さんが静かに腰を下ろした。彼も同じようにコーヒーを手にしていて、机の上の資料をちらりと見て苦笑する。


「黒瀬さん、少し根を詰めすぎです。休憩も仕事のうちですよ」


その言葉に、俺は思わず苦笑した。確かに、この一週間で普通の大学生だったはずの生活は大きく変わった。魔獣対策基本法。その一文字一文字が、これからの日本を変えていく。そんな重さを感じながらも、俺はカップを両手で包み、木村さんの方へ向き直った。


「木村さんは、今回の法律をどう見ているんですか?」


そう尋ねると、木村さんは少しだけ目を細めた。


いつもお読みいただきありがとうございます!

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