天使と付き合うことになったのだが、それは俺の求める方向ではないのだ、恥を知れ
「や、や、やめ、やめ」
やばいってば、俺、声震えてるし、こんな恐怖を感じたのは生まれて初めてだ。
このままじゃ、ヤられる!
いや、もしこの話を聞いてる奴がいたら「ちょっwww」とかって言うかも知れないけど、冗談じゃねぇぞ。
よし、こいつのドキャンタマに一発お見舞いして帰ってくれるわ。
いち、にぃ、の・・
「ごめん。
なんか強引な感じになっちゃったね・・・。
本当にゴメン。
俺はただ君の事知りたかっただけで・・・。
てか、俺と友達になってくれない?」
この兄やん、完全に口調が違ってやがるよ。
あぁそうか、パルコの『僕』はフェイクだったのか。
てか、いきなり下手に出られてもなぁ・・・。
「本当に、もう変なことしないから・・・。
何か俺、お前に惚れたっぽいし・・・。
俺、ナンパしてても色恋使わない奴だから、これはマジで惚れたんだってば。
本当にゴメン!」
今度は向こうが謝ってくる。
しかも椅子の上でご丁寧に土下座という趣ですよ。
何があったのか分からんが、俺を解放してくれる事に疑いはない。
まぁ、俺も無理矢理変なことされるのでなければ、そういった友達がいることにやぶさかではない。
・・・てか、ナンパしてて色恋って何?
意味不明だけど、今度聞けばいいや。
「友達だったらいいけど・・・」
しかし、俺の心はまだまだ動揺しているようで言葉は多く出ない。
「まじで?
ありがとう!
俺、今、すげぇ嬉しい。
やったぞ、俺!」
そいつはそう言って、宙に拳を突き上げる。
本当にコイツ大丈夫なのかな?
何か悪いもんでも食べたのではなかろうか?
最近は色んな悪いものが海外から輸入されているって言うし。
多少、心配になってしまう。
「んじゃ、行こうか?れおなちゃん。
今から、とりあえずミッドウエストでビッケンバーグの靴を見て、それからカフェでお茶して・・・」
さっきの一人称が「僕」だった頃とは大違いの展開で、俺は何が起きているのか分からない。
ミッドウェストってTシャツ一万円の世界の店だよな?
俺とは趣味が違いすぎるぞ。
でも、まぁ、とりあえず、・・・今からデートみたいだな・・・。
デート?
う~ん、どうなんだろ?
コイツとなら歩いててもいいけど・・・。
俺はこれからどうなることやら想像がつかない。
って言うか、俺がやっぱり・・・その、あっちの方なのか?
まじで?
いや、ゆうき君の顔とか好きだけど、正直、自分がソレって言うのは・・・。
「ん?返事は」
奴は俺の首筋に息を吹きかける。
『天下の往来でこんなことをしてたら変に思われるだろうが!
このトンチキ野郎!』
と、怒ってやりたくとも、俺は「ひゃぁ」だの情けない声を上げるしか出来ない。
まずいぞ、このままじゃ俺の役割が決まっちまうぞ。
「まだ返事無いけど?」
今度は奴の長い手が俺の腰に絡まる。
って、止めれ。
女子どもが見てるじゃねぇか。
慌ててその腕を振りほどくと俺は数メートル距離を置く。
「てか、俺って、全然可愛いとかそういう部類の人間じゃないんで。
普段はもっとガサツだし、普通の男なんだが。
女も好きだし」
彼に気に入ってもらえたのは嬉しいのかもしれないが、そこらへんははっきりしとかなきゃいけない。
少々惜しいが、これで終わりだって全然いい。
むしろ幻滅して帰れ、このセクハラど変態は。
「知ってる。
・・・だが、それがいい。
敵は強いほうがオトし甲斐があるって言うか」
・・・こいつは相当にヤバイ。
俺の尊敬する真の漢、前田慶二の真似事してやがる・・・。
奴のきらきら輝く大きな瞳は生粋のいくさ人の目だ。
てか、一体何者なんだ?
なんで男っぽい俺の性格がいいっていうんだ?
理解不能すぎるぜ、俺の好みはPsalmに出てくる佐藤初とかなんですけど・・・。
俺の受難はたった一回の人生の過ちから始まった。
あの時、こいつにメールしたのが本当に悔やまれるが、今では後の祭り。
携帯番号どころか家の電話番号まで教えちまった・・。
何で教えてんだよ、俺の馬鹿!
「ねぇ、聞いてんの?」
今度は俺の耳に息をふぅーっと吹きかける。
あまりの気持ちの悪さに「やっ」などと再び情けない声を出す俺。
背筋がぞくっとしちまったわけで、俺の体も、もっとしっかりしろよ。
堪忍袋の緒が切れそうな俺は
「どこで覚えたんだ、そんなテクを。」
などとぶっきらぼうに聞くが、
「俺はお前より一年長く生きてるからな。
ま、もっと楽しい事もできるけど?」
との大人の返事。
完全にはぐらかしてやがる。
って、渋谷なんかで男の腰に手を回すのは止めろ。
人口密度が日本有数なんだぞ、ここは。
ひょっとしたらテレビに映ってるかもしれないじゃねぇか
こいつ外見は天使みたいなのに、性格は悪魔で・・・。
それでも俺が上なら許せるけど、俺はなぜか下に役割分担が行きそうな悪寒・・・。
「れおなって髪の毛、サラサラなんだな?」
道すがら、奴が俺の髪の毛を撫でる。
何かいかにも恋人同士って感じだな。
・・・くそ、不覚にも男相手にドキッとしたじゃねぇか、この野郎。
どうしてくれるんだ。
このままじゃ、変な気分になりそうで、やっぱりこいつといるのはヤバいんじゃないか・・・。
あぁ、畜生。
出会い系なんてクソ食らえだ。
地道に出会いを探したほうが良かったな、こんな目に会うぐらいなら。
俺の受難はまだまだ続きそうな悪寒。
楽しくやれるのかわからないけど、退屈はしなさそうだが、コイツのセクハラをまずは全力を持って阻止せねば。
って、今、人の尻触っただろ、コイツ・・・。
こちらで玲於奈の視点は終了となります。
つづいて祐希の視点となります!




