白杖
「いでぇな! 刺してくるんじゃねぇよ、クソジジイ」
人が行ったり来たりする地下鉄の通路で、20代後半くらいの痛い兄さんが怒鳴り散らした声にビックリする。2重になっているアクセサリーが何度かぶつかり合いキーンと甲高い金属音が耳その白杖が兄さんの足に運悪く刺さってしまったのだろう。
「ふざけんなよ、クソが」
というと、おじいさんの白杖を思いっきり蹴っ飛ばして何処かへ行ってしまった。カランカランと白杖は転がっていく。おじいさんは恐る恐るしゃがみ地面をペタペタと少しづつ手をずらしながら杖を探しているようだった。さっきの兄さん腹立つとふつふつ沸く怒りを抑えるように深呼吸して、白杖を拾い上げる。
「おじいさん、白杖どうぞ」
おじいさんの前にしゃがみ、すぐ届くところにわざと音を出して置く。その方が分かり易いのではと思ったからだ。
おそらくおじいさんは、目が見えない人なのだろう。さっきまでのやりとりを見ていて何となくそう思った。
「お嬢ちゃん、ありがとう」
優しく微笑みお礼を言うおじいさんを見て、さっきのイライラなんか忘れ私も微笑んだ。
「どういたしまして」
それから、乗る電車が一緒だったのでおじいさんが私の肩をつかみ誘導する形でホームへと歩いていくのだった。
初後書きです(笑)
「白杖」楽しんでいただけましたか?
......正直後半は投げやりになってますが。
これからも良かったら宜しくお願いします!




