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20/21

第20話 外伝3 変態メイドと被改善(前)

【過去作・他連載のお知らせ】


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 明日からライルお坊ちゃまの生活について、

 このイリスが快適にお過ごしいただけますよう

 尽力させていただきます。

 ですが、万事を改善とできない

 この無力なメイドをお許しくださいませ。


 イリスから「観察が終わりました」との報告と同時に、

 そう告げられた。


 僕は、その言葉に並々ならぬ決意を感じ取り、

「う、うん……よろしくお願いするよ。

 イリス、ありがとう」

 と返すのが精一杯だった。


 明日から……一体どうなるのだろう……


【06:00】起床・身支度


 ……気がついたら起きていた。

 起こされたという感覚がまったくなかった。

 いつもの部屋なのに、

 寝苦しさや不快感を感じることがなかった。


 そして言われるがままに、

 イリスに着付けを手伝ってもらうことになった。


 イリスの整った顔が近い……。

 とても嬉しそうに、優しく僕の手を包み込みながら

 ネクタイを結び、ボタンをしめていく。


 恥ずかしいけど、くすぐったい……

 

【07:00】礼拝


 いつもは少し肌寒かったり、蒸し暑かったりする

 石造りの礼拝堂が、とても快適な空気に変わっている。

 これもイリスのおかげなんだろうな……。


 快適すぎて、眠気が押し寄せてくるのを我慢した。

 母上は気にせず欠伸をしていた……。


 何故か、イリスが僕の方を向いて

 指を組んで拝んでいる。


「イリス、拝むのは僕じゃないよ……」


 「……失礼いたしました。」

 

【07:30】朝食


 僕は朝食が苦手だった。

 こんなこと言うと贅沢なんだろうけど……

 毎日同じメニューで飽きているし、

 白パンは少しパサパサするから、

 飲み込もうと思ったら水分がいるんだ。


 でも、体に良いからと出される牛乳は、

 朝採れでも何だか少し臭みがあって。


 でも今日の食事は……

 イリスが用意してくれた朝食は、

 残っていた眠気が一気に吹き飛ぶくらい驚きだった。


 いつもの丸い形じゃない、四角くて厚みのあるパンは

 とてもふわふわしていて、齧ると蜂蜜の甘みが口いっぱいに広がり、

 もちもちした食感の奥から、噛めば噛むほど甘みが湧いてくる。


 パンだけでも驚きなのに、

 牛乳は臭みがまったくなくて、味もちゃんとあって飲みやすかった。

 蜂蜜で甘くなった口の中を、

 酸っぱいベリーがすっと洗い流してくれた。


 気づけば美味しさのあまり、父上と母上の前ということを忘れて、

 大きな声でイリスに向かってお礼を言っていた。


「イリス、すごいよ!

 とっても美味しい!」


「お誉めにあずかり、光栄に存じます」


 はっと気づいたら、父上と母上が僕とイリスの方を見ていた。

 父上が、少し遠慮がちに口を開く。


「イリス、私たちの分は……ないのかい?」


 結局、明日から母上だけが僕と同じ食事を

 イリスに用意してもらうことになった。


 でも僕は知っている。

 あれが母上の我儘じゃないってことを。


 僕がもっと小さいころ、爺に

「どうして母上は父上にいじわる言うの?」

 と聞いたことがあった。


 その時、爺はこう言った。


「そうですね……お坊ちゃまにはまだ難しいかもしれませんが、

 あれはケイン様──父上が“言ってしまった”という時に、

 母上が自分の我儘でそうなったように皆が思うよう、

 父上のためにあえて泥をかぶっておられるのです」


(……全てがそうというわけでもありませんが)


 今回はダンの面目を潰さないために、

 母上が押し通したって感じに見えているのかな……。

 でもダンなら「余計な気を遣いやがって」と

 逆に怒りそうだけど。


【08:30】歯磨き


 イリスに膝枕するように言われた。

 膝枕を最後にしてもらったのって、

 母上や乳母に小さいころにしてもらったくらいで、

 まるで自分が赤ちゃんになったみたいで恥ずかしい。


 でも、僕を見るイリスの顔から

 とても幸せそうな気持ちが伝わってきて、

 胸が熱くなった。


 それに、太ももから伝わる感触が

 寝る時に使っている枕より心地よくて、

 いつまでもこうしていたいなんて……思ってしまった。


 そんなことを考えていたら、

 イリスから歯磨きが終わったことを告げられる。


「はい、ライルお坊ちゃま。終わりましたよ」


「あ、うん……ありがとう」


「よろしければ、お休みになる時も致しますが?」


「い、いいよ! 歯磨きありがとう!」


 僕は見透かされたことが恥ずかしくて、

 勢いよく飛び起きた。


 イリスは僕の生活をどんな風に変えていくつもりなんだろう……。

 まだお昼にもなっていないのに、

 すでに僕は驚いて戸惑ってばかり。

 午後の予定も、期待と不安で胸がいっぱいだよ。

最後までお読みいただきありがとうございました。


本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。

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