第20話 外伝3 変態メイドと被改善(前)
【過去作・他連載のお知らせ】
▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)
『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』
https://ncode.syosetu.com/n9512ma/
▼和風ダークファンタジー(不定期連載中)
『六装の守護者 ―不銹不折―破邪の鋼刃――』
https://ncode.syosetu.com/n3023me/
明日からライルお坊ちゃまの生活について、
このイリスが快適にお過ごしいただけますよう
尽力させていただきます。
ですが、万事を改善とできない
この無力なメイドをお許しくださいませ。
イリスから「観察が終わりました」との報告と同時に、
そう告げられた。
僕は、その言葉に並々ならぬ決意を感じ取り、
「う、うん……よろしくお願いするよ。
イリス、ありがとう」
と返すのが精一杯だった。
明日から……一体どうなるのだろう……
【06:00】起床・身支度
……気がついたら起きていた。
起こされたという感覚がまったくなかった。
いつもの部屋なのに、
寝苦しさや不快感を感じることがなかった。
そして言われるがままに、
イリスに着付けを手伝ってもらうことになった。
イリスの整った顔が近い……。
とても嬉しそうに、優しく僕の手を包み込みながら
ネクタイを結び、ボタンをしめていく。
恥ずかしいけど、くすぐったい……
【07:00】礼拝
いつもは少し肌寒かったり、蒸し暑かったりする
石造りの礼拝堂が、とても快適な空気に変わっている。
これもイリスのおかげなんだろうな……。
快適すぎて、眠気が押し寄せてくるのを我慢した。
母上は気にせず欠伸をしていた……。
何故か、イリスが僕の方を向いて
指を組んで拝んでいる。
「イリス、拝むのは僕じゃないよ……」
「……失礼いたしました。」
【07:30】朝食
僕は朝食が苦手だった。
こんなこと言うと贅沢なんだろうけど……
毎日同じメニューで飽きているし、
白パンは少しパサパサするから、
飲み込もうと思ったら水分がいるんだ。
でも、体に良いからと出される牛乳は、
朝採れでも何だか少し臭みがあって。
でも今日の食事は……
イリスが用意してくれた朝食は、
残っていた眠気が一気に吹き飛ぶくらい驚きだった。
いつもの丸い形じゃない、四角くて厚みのあるパンは
とてもふわふわしていて、齧ると蜂蜜の甘みが口いっぱいに広がり、
もちもちした食感の奥から、噛めば噛むほど甘みが湧いてくる。
パンだけでも驚きなのに、
牛乳は臭みがまったくなくて、味もちゃんとあって飲みやすかった。
蜂蜜で甘くなった口の中を、
酸っぱいベリーがすっと洗い流してくれた。
気づけば美味しさのあまり、父上と母上の前ということを忘れて、
大きな声でイリスに向かってお礼を言っていた。
「イリス、すごいよ!
とっても美味しい!」
「お誉めにあずかり、光栄に存じます」
はっと気づいたら、父上と母上が僕とイリスの方を見ていた。
父上が、少し遠慮がちに口を開く。
「イリス、私たちの分は……ないのかい?」
結局、明日から母上だけが僕と同じ食事を
イリスに用意してもらうことになった。
でも僕は知っている。
あれが母上の我儘じゃないってことを。
僕がもっと小さいころ、爺に
「どうして母上は父上にいじわる言うの?」
と聞いたことがあった。
その時、爺はこう言った。
「そうですね……お坊ちゃまにはまだ難しいかもしれませんが、
あれはケイン様──父上が“言ってしまった”という時に、
母上が自分の我儘でそうなったように皆が思うよう、
父上のためにあえて泥をかぶっておられるのです」
(……全てがそうというわけでもありませんが)
今回はダンの面目を潰さないために、
母上が押し通したって感じに見えているのかな……。
でもダンなら「余計な気を遣いやがって」と
逆に怒りそうだけど。
【08:30】歯磨き
イリスに膝枕するように言われた。
膝枕を最後にしてもらったのって、
母上や乳母に小さいころにしてもらったくらいで、
まるで自分が赤ちゃんになったみたいで恥ずかしい。
でも、僕を見るイリスの顔から
とても幸せそうな気持ちが伝わってきて、
胸が熱くなった。
それに、太ももから伝わる感触が
寝る時に使っている枕より心地よくて、
いつまでもこうしていたいなんて……思ってしまった。
そんなことを考えていたら、
イリスから歯磨きが終わったことを告げられる。
「はい、ライルお坊ちゃま。終わりましたよ」
「あ、うん……ありがとう」
「よろしければ、お休みになる時も致しますが?」
「い、いいよ! 歯磨きありがとう!」
僕は見透かされたことが恥ずかしくて、
勢いよく飛び起きた。
イリスは僕の生活をどんな風に変えていくつもりなんだろう……。
まだお昼にもなっていないのに、
すでに僕は驚いて戸惑ってばかり。
午後の予定も、期待と不安で胸がいっぱいだよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。
もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、
応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】、感想など
足跡を残していっていただけると励みになります。
次の話への大きな原動力になります。




