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第6章:収集者の審美眼
渋谷セルリアンタワーの最上階。そこはもはや、ホテルのスイートルームではなかった。
零の「渇望」によって剥ぎ取られた無数のスキル、概念、そしてデータの残滓が、万華鏡のように壁や天井を埋め尽くしている。
「……零、下の広場に人が集まってきているわ」
凪が窓の外を指さす。
アップデートから数日。行き場を失った人々、あるいは強力なスキルを手に入れて増長した者たちが、この「システムの手が届かない空白地帯」に引き寄せられていた。
「ただの避難所だと思われたら心外だな。あそこは俺の『倉庫』だ」
零は椅子から立ち上がることなく、指先で空中に浮かぶ「リスト」を操作する。
そこには、彼が渋谷全域から無意識に吸い上げ、分類した「人間たちのスペック」が並んでいた。
「凪、あの群衆の中に一人、面白いのがいる。……『自己犠牲』なんていう、最高に反吐が出る、でも希少なスキルを持った男がな」
零の瞳に、獲物を見つけた猛獣のような光が宿る。
彼は助けたいのではない。その「美しい自己犠牲」というリソースを、自分のコレクションに加えたいだけなのだ。




