そして第2大陸へ
最終日に風邪をひくという置き土産をくらいつつも帰国しました!
風邪をひいた以外は無事です!(?)
飛行機に乗って寝るようにと言われたが、私は全く眠れなかった。
まず、食べ過ぎによる体調不良。らーめんとミニチャーシュー丼じゃなく、我慢してミニチャーシュー丼だけにしておけばよかった……。
そこに家で食べきれなかった冷蔵品デザートのおまけさえなければ……。
というか、眠れない。私はジェットコースターが嫌いだ。あの浮遊感。足が浮いている感覚。飛び立つ時と降りるときはあれがいやでも襲いかかってくるわけだろう。そして周囲には人だらけ。落ち着けるわけがない。
幸か不幸か、目の前の座席に埋め込まれた画面は真っ暗なので目に刺さるような光はない。が、やはり眠れない。
なお目の前の画面が真っ暗なのは、画面の明かりを消せるのではなくて故障中であるかららしい。ボタンを押してもうんともすんとも言わない。頭上のライトに対応するボタンも内蔵されているらしいが、そっちもやはり光らない。
本当は映画が見られたりするらしいのだが、まともに光る画面でも他の表示がされることはない。
……どうやらかつては映画が見られたのかもしれないが、今はそんなサービスは提供していないらしい。格安だからなのだろうか? わからないが、我が同行者はつまらなそうだった。
仕方ない。寝るのを諦めて、私はとっておきを取り出した。
紙の本! 今回は三冊も持ってきた! 荷物が重くなる代わりにデータ通信に優しい究極のアイテムだ!
それからは有意義な時間だった。暇を持て余した我が同行者(苦手科目:国語)がこちらをのぞき込んできたが、そのまま穏やかな表情でまぶたを閉じていった。彼の手元には映画を楽しむためのヘッドホンが丸まっていた。ふふふ。
そんな機内で出された食事は、見たことのないスナック菓子らしき袋が一つ、コップ一杯のジュースだった。真夜中のフライトだから、夜食程度のものしか出ないぞ――とは言われていたので、こんなものなのだろう。
しかし、その程度の量ですら、飲み物一杯を飲み干すのが限界な私には多かった……。
こっそり隣の我が同行者に押し付け、一口も食べられないままに終わった。
そうして無事に着陸する飛行機。……その前から勝手に席を立って、席の真上にある置き場から荷物を取り出している我が同行者。本当にやめてほしい。人には犯罪に気を付けろと散々言うのに、自分は事故に無頓着である。
そしてキャリーケースが盗まれる前にと、荷物受け取り場所へ一人、消えていった。
キャリーケースの受け取り場所の光景は、私もテレビで見たことがあって知っている。真ん中から荷物がベルトコンベアによって湧いてきて、その場所をぐるりと囲む輪のベルトコンベアの上を漂うのだ。持ち主が回収するまで永遠にぐるぐると……。
……荷物、出てこない。なんと荷物受け取り場所は、もう一か所あったのだという。
幸い、誰かに盗られるなんてことはなく無事にキャリーケースを回収できたので、ついに空港から街へと繰り出すこととなった。出口へと向かう我々をなぜかひょうたん型ジュエリーの広告が見送ってくれる。
……なぜ、ひょうたん? ひょうたんって縁起物なのだろうか? 私は知らない。そして答えてくれる者もいないまま、空港の外へ!
吹き出す汗! 私を取り囲む湿気のせいだ!
この時、現地時間で午前2時を過ぎていたと思う。気温は高くないが、少し雨が降っているらしい。
おそらく、この時間では電車も動いていなかったのだろう。空港から出たみんなが列を成しているのは――タクシー乗り場だった!
タクシーにどんどん乗り込んでいくので、待ち時間はそれほどではなかった。……トランクをぱっかんぱっかんと言わせながら発車したところを目撃したのだが、あれは大丈夫だったのだろうか。
「日本と違ってここのタクシーは安いぞ」
タクシーに乗り込んだ私に、我が同行者が教えてくれる。それなら、目的地はどこだか全く知らないが、お金は大丈夫だろう。出発!
これが、私がこの海外で乗ったタクシー、三回分のうちの一つの経験である。
時間が時間だからか、他に走る車はほとんどいない。
タクシーは走る。ハイスピードで走る。何キロの速さか、正確にはわからないけど、窓の外には「80」と書かれた標識が見える。……もしかして高速道路を走っているのか!?
道は広い。灯りが等間隔で並んでどこまでも照らしている。作りかけのような道路が上空に見える。もしかしてこの道路は発展の途中なのだろうか。
走り心地は日本の高速道路とそんなに変わらない快適さのように思える。少なくとも、まだ気持ち悪さでぐったりしている私でも大丈夫だ。
運転手は隣に座った父同行者と喋りながらタクシーを走らせる。たまにある分岐以外ではほとんどスピードを落とさず、たまに父同行者の方に顔を向けたりしながら、「100」と書かれた標識を追い越していく。
……私はそっとシートベルトを締めた。
多分、運転のうまい運転手さんだったのだろうと思う。
我が同行者「スピードの測定機がありそうなところでは、ちゃんとスピードを落としていたぞ」