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6.魔王の魔力は万能です

「マーラよ、ちゃんと手加減するのじゃぞ」

「うん、わかってるって。じゃあ、行ってくるねー」

 豪華絢爛な司教っぽい姿のカーマに言い残し、私はボックス席から飛行魔法で飛んだ。

 ちな、今日の衣装はファンタジー物で少年期の王子様が着てるようなアレよ。

 ボックス席には彼女の他、三つの魔王家の代表・三権の長・陸海空の各軍団長など、リーパの重鎮が揃ってる。

 そんなボックス席に、透明な対物理防壁や対魔法障壁が幾重にも張られた。

 私は立った姿勢のままで、無人の観客席を超えながらゆっくりと降下。バトルフィールドに降り立った。

 はい。私たちは、闘技場に来ています。

 えっ? 何のためにって…、戦うために決まってるじゃない。

 というわけで、今から一対三で戦います。相手? 他の三人の魔王に決まってるでしょ。

 今日は私の戴冠式。リーパで戴冠式と言ったら、真の魔王を自負する者が、元首になる儀式なのよ。どこも間違ってないでしょ?

 …あ、昨日はバトルもあることは言ってなかったかも…。

 まあ、それはさておき、魔界統一の第一歩は、リーパの元首になることよ。

 これは、去年の誕生日に宣言してたの。成人したら、元首になりますってね。

 ま、実際に宣言したのはカーマで、事情を知らないマーラくんは「カ、カーマ、いきなり何を!?」って固まりかけてたけどね。


 対戦相手は返り討ちにする気満々で待ってた。

「あらあら、マーラくんったら、随分と強気なのね。大人になっただけで、そんなに強くなるなんて、お姉さん、思えないんだけど?」

 茶目っ気たっぷりな発言は、めちゃエロお姉さんなシュリー。全ての能力がマーラくんより上な、最強の魔王よ。

 髪はピンクで軽くウェーブしたセミロング。瞳は薄い青紫。前世の私が敗北を認めるぐらいメリハリがある身体をしてるわ。

 衣装は三角帽子なミニスカ魔女。エロエロな身体を誇示するように、露出過多。心身ともに健康な成人男性なら、前かがみ必至よ。私? 今は大丈夫よ。四人がかりでマーラくんを目隠ししてるから。

 全てが高レベルな彼女は、相手が得意なことで上をいく戦い方を好むわ。ほんと、いい性格してるわね。

「マーラよ、確かにお前は私より強い。だが、三人がかりで負けるわけにはいかない。全力で行くから、そのつもりでいろよっ!」

 これは体育会系JKなサティーの言葉。本人は謙遜してるけど、スピードはシュリーと同レベル。パワーは上よ。

 髪は赤に近いピンクでスポーティなショート。頭頂のアホ毛が特徴ね。瞳は薄い紫。適度に締まった体形は、見た目年齢相応よ。胸は少し大きいかしら?

 衣装は一見だと競泳用水着なバトル用スーツ。シュリーとは別ベクトルな見せたがりね。

 彼女の戦い方はパワー重視の近接戦。魔法も技巧より威力重視で使ってくる。こーゆー相手って、実力が近いと戦いにくいのよ。

「マーラ様、わたくし、この日が来るのを楽しみに待っていました。さあ、存分に戦いましょう」

 お嬢様系JDなヴァーチが優雅に告げた。彼女はマーラくんとほぼ互角ね。

 髪は漆黒でサラサラなロング。瞳は澄んだ黒。彼女の身体は凄い。顔も含めてほぼ完璧に左右対称なの。文句のつけようがない美人よ。

 衣装はタイト目でロングなワンピースに丈の短いベスト。均整がとれたボディラインを引き立ててるわ。

 彼女は技巧重視派ね。でも、パワーが無いわけじゃない。サティーとは逆の意味で戦いにくい相手よ。

「うん。よろしくね、お姉さんたち」

 ごく普通に言葉を交わした私たち。

 でも、闘技場の上空には雷雲。周りには暴風が吹き荒れてる。そんな中で、バトルフィールドだけは穏やかな状態なの。

 これは四人の魔王覇気がせめぎ合ってるから。全員穏やかな顔してるけど、やる気は相当な物ってことよ。

「それでは、これより戴冠の儀を行うのじゃ。挑むはマーラ。試すのはシュリー、サティー、ヴァーチ。双方とも、準備はよいかの?」

 進行はカーマ。これも創造神の巫女の仕事の一つよ。

「いいよ」

「いいわよ」

「いいよ」

「よろしいですわ」

「それでは、始めっ!」


 合図と同時に、三人は私の視界から消えた。元より強靭な身体を魔法で強化し、稲妻を超える速さで動いたの。

「六連魔導砲!」

「極超魔導砲!」

「拡散魔導砲!」

 頭上からシュリー、後ろからサティー、両サイドからヴァーチの攻撃。

 魔導砲は、グリーンランドぐらいの島を軽く消し去る破壊魔法。魔王ならできて当然。でも、公爵級だと難しい。そんな魔法よ。

 見た目も名前も波○砲っぽい破壊の魔法が私を襲う。直撃すれば、流石に無傷じゃすまないわ。

 でも、私は普通に立ってるだけよ。

 次のモノローグは美食アカデミーの主宰になりきって…。

 さあ、驚くがいい!

「うそ…でしょ!?」

「な、何だ、それは!?」

「これは、いったい…」

 ふっふっふ。三人とも呆気に取られてる。

 ま、無理もないわね。私に当たったはずの攻撃が、命中寸前で全部消えちゃったんだから。

 私は後ろに向き直り、ニッコリしながら告げる。

「どう、お姉さんたち。驚いた?」

「そうね。マーラくんにこんな力があったなんて、お姉さん、びっくりしちゃった」

「でも、一度見たから二度目は通じないぞ。必ず破る!」

「どんな手段で無効化したのかはわかりません。ですが、一度に処理できるエネルギー量には限界があるはずですわ」

「それなら、プランBよ」

「OK」

「了解しました」


 三人は再び姿を消した。今度は空間魔法で隠れたわ。

 こちらからは手が出せないけど、向こうからも何もできない。今はそんな状況よ。

 定番だと、次の展開は死角からの一撃ね。ま、どこから何をしてきても、私には関係ないんだけどね…。

「「「ヘビィマテリアルバースト!」」」

 余裕こいてたら、至近距離で魔法を撃たれました。

 しかも、重くて貫通力が高い謎素材製の超高速飛行自動追尾型砲弾を対象内部で全てエネルギーに変換して大爆発させるという、お前絶対に殺す魔法。

 これ、本来は空からくる災厄とかに使う魔法なのよね。

 一般兵が三人一組で唱えて、小惑星や遊星爆弾や宇宙怪獣の類を確実に破壊する的な、そーゆーやつ。

 魔王でも呪文を詠唱しなきゃ使えないから、発動まで時間がかかる。

 その代わり、必中で威力も極大。そりゃ、空間魔法で隠れてでも使うわな。

 基本は質量攻撃なので、対魔法用の防御障壁は効果なし。

 半端な防壁は運動エネルギーで突き破る。超強力な防壁で止めても、爆発は避けられないとかもうね…。

 魔王がこんなの使ったら、星なんて軽く吹っ飛びますぜ。

 逃げようのない砲弾の雨が私に迫る。

 昨日までのマーラくんなら、ここで試合終了よ。

 だがしかーし、今の私には通じない。なぜかって? 転生特典(チートな能力)よ。

「「「!!?」」」

 謎素材製の砲弾は、命中寸前ですべて消えた。

「そんな…、質量攻撃も消しちゃうなんて、そんなのお姉さん聞いてないわよっ!」

「バカな…、これでもダメなのか…」

「ああ…。さすがです、マーラ様」

 シュリー、逆切れ気味でちょっとおこ。サティー、唖然。ヴァーチ…なぜにさすマラ?

 ともかく、三人の戦意は少し乱れた。この状態で攻撃しても、倒された方は納得しないわよね?

「残念だったね。今度は僕の番だから、頑張って避けてね」

「マーラくん、その言い方、流石に私も怒るわよ」

「面白い。マーラよ、当てられるものなら当ててみろっ!」

「マーラ様。いくら貴方でも、その言い方は感心できませんよ」

 三人とも挑発に乗ってくれた。魔法で体を強化し、各種防御障壁を目いっぱい展開してるわ。

 それじゃ、まずはヴァーチから。

 右手を指鉄砲にし、彼女に向けた。

「バーン(棒)」

 魔法の弾丸は防御障壁を貫通。強化魔法を無視してダメージを与えた。

「そ、そんな…。さすがです、マーラ様」

 それだけ言うと、彼女は倒れた。

「ヴァーチ、リタイアなのじゃ」

 カーマの宣言とともにヴァーチは退場。光に包まれて強制転移。行先はボックス席よ。

「バカな!? ただの魔法弾でヴァーチが倒されるなんて」

「驚いてる場合じゃないよ、サティーお姉さん。次は、お姉さんの番だからね」

「いいだろう。やれるものならやってみろ」

 身構えるサティー。私は正面から近付き、鳩尾にかるくパンチ。

「そんな…、全然見えなかった…」

 崩れ落ちるサティー。カーマの声が響く

「サティー、リタイアなのじゃ」

 サティーも退場。残るはシュリーただ一人。

 私は彼女の方に向き直った。

「シュリーお姉さん、覚悟はいいかな?」

「あまり大人を怒らせないほうがいいわよ」

 シュリー、激おこ。

「いくわよっ!」

 シュリーは全身を魔力で強化し、両手両足に雷をまとった。

「雷鳥乱舞」

 シュリーは左右の手刀で超高速の連撃。時折、蹴りも繰り出す。

 リーチを雷で自在に変え、残像を使ったフェイントを混ぜる。

 飛行魔法も使って、立体的に攻めてくる。

 さすがは最強魔王。ヴァーチやサティーじゃ、おそらく対応できないわね…。

 でも、私には当たらない。瞬発力もトップスピードも、私のほうが数段上。それに、元々体が小さいし。

 ほとんど動かずに彼女の攻撃をかわす私。見切り、予測し、無駄なく動く。回避に専念すれば、ざっとこんなものよ。

 自分が不利と認めたのか、シュリーは上昇。上空から無数の雷を降らせた。

 この程度じゃ、足止めにも目眩ましにもならない。でも、当たると鬱陶しいわね。

 私は勝負を決めることにした。

 彼女に向けて右手を突き出し、そして握る。

「グラトニグラ」

 全ての雷が消滅。彼女にかかっている魔法も全て消滅。

「なっ!?」

 シュリーが一瞬固まった。そしてそのまま落下開始。

 飛行魔法を使おうとしてるけど…。残念ね、今は使えないのよ。

 だが、流石は魔王。

 すぐに魔法をあきらめ、身体能力だけで着地した。

「はい、これでおしまいだね」

 私は彼女の正面に立ち、指鉄砲を突き付けた。

「ええ、悔しいけどそのようね。降参よ、負けを認めるわ」

「シュリー、降参。よって、マーラの勝利なのじゃ」

 カーマの声が、戦いの終わりを告げた。


 こうして、戴冠式の前半は終了。

 私たちは控室で反省会という名のプチ女子会を開いてるところよ。

 …女子会って言っちゃったけど、いいわよね。私、身体はともかくメンタルは女子だし。

 まあ、その件はどこかからクレームが入ったら考えましょう。

(二十代半ばで女子って、ちょっと図々しいんじゃないかしら?)

 …まさかのセルフクレーム。

 しかも、そっちなの…。

 さすがプライベート(本音全開)な私、自分に対しても容赦ないわね。

 まあいわ。ということで、今は私を褒め称える流れよ。

「流石マーラ様。素晴らしいお力でした」

「本当ね。昨日一日で何があったのか知らないけど、ここまで差がついてたなんて」

「カーマが言ってたこと、本当だったんだな」

「当然じゃ。妾は嘘は言わん」

「実を言うと、僕自身も驚いてるんだ」

 これは本当。私もマーラくんも、まさかここまで自分が強くなるとは思ってませんでした。


 ここだけの話、開封の儀がプランBになった時点で、プランAより断然強くなるのは確定してたの。

 ポイントは真冬の分身、すなわち意志の数よ。

 今のマーラ2世は、真冬の分身が四人いる最強の状態。

 こうなったのは、プランBだったから。

 小難しい話は省くけど、プランAだと、期待値は二人。最悪ゼロもありえたの。

 で、真冬一人分の強さはというと、私も聞いて驚いたわ。なんと、シュリーより上なんだって。

 しかも、その差は彼女とマーラくんの差と同じぐらい。

 つまり、私は元最強魔王の六倍以上強いわけ。

 今更だけど、神様が私に目をつけてたのも納得だわ。

 本編六話目をお届けしました。

 唐突ですが、次回が最終話になります。


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