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5.転生したら魔王だった件 ~魔族の国の歩き方~

 というわけで、私が転生した世界のことを一通り確認しておくわよ。

 これはこの世界での常識なんだから、知らずに先に進むのはよくないわ。

 大学でも一般教養を修めてから専門科目に進むでしょ? それと同じよ。


 世界の名はヴェダーシャッド。

 Kを含めた三柱の神様が創造したファンタジーな世界よ。

 マナという素粒子をMPにして、魔法が使えるの。魔法については、後で改めて確認するわ。


 ヴェダーシャッドは天上界・地上界・魔界に分かれてる。

 天上界には神々と天使たちが住んでるわ。その他は不明よ。

 地上界と魔界は地球と同じような環境ね。常識も大半が通用するわ。

 空気があり、水があり、空と海と大地がある。昼夜があり、季節がある。

 太陽は一つで、一年は三六五日。一日の長さが地球と同じかどうかは不明ね。

 月は大小二つあって、月周はそれぞれ違うわ。

 ここまでは、地上界も魔界も同じよ。


 地上界は人族のための世界ね。

 大半が人間だけど、エルフ・ドワーフ・獣人・魚人もいるわ。

 かつては単一種族の国もあったけど、今はない。互いは他の人種って考え方で、混血や移民が進んでるの。

 魔界との交流はないわ。

 地上に極々少数いる魔族と竜族は、三千年ほど前に神によって移された者の末裔だそうよ。

 人族は三つの勢力に分かれて抗争中。

 永栄えいえい王国と朋連ほうれん宗国が二大勢力。もう一つは小国連合。

 これは十二年前の情報だから、地上に打って出る前に調査する必要があるわね。


 魔界は強い種族が住む世界ね。

 陸地は一つ。魔大陸ドワナゴン。周りの海は大洋サパランサよ。

 ドワナゴンは南極大陸を右に六十度回転させたような形ね。面積は二倍強よ。

 地上界と違って、夜空に星が無いわ。

 …少し本題から外れるんだけど、ちょっと聞いて欲しいの。

 私に言わせれば、魔界は謎空間なのよ。

 まず気候帯。北は寒くて南に行くほど暑い。

 そして地図。RPGのマップみたいに、北と南もつながってるの。

 ずーーーっと南下して「お、寒くなった」と思った時には最北端にいるのよ。

 さらにさらに、極点が無いの。

 魔界中どこにいても、どう移動しても、磁石は南北を指したままピクリともしないの。

 太陽との位置関係とか、地下の構造とか、一体どうなってるの?

 マーラくんは何の疑問も持たなかったんだけど、私は不思議で仕方ないのよ。

<真冬さん、そこは疑問を持っちゃダメなところだよ。マナと同じで、世界のことわりなんだから>

 …確かにそうね。なぜそうなるかを考えても、あまり意味がないわ。

 それにしてもマーラくん、いきなり難しい言葉を使ったわね?

《当然。彼に素質があり、私が教えたのだから。彼の知識レベルは既に私と同等よ》

 …この短時間でここまで。さすがね、教師な私。


 ドワナゴンに住んでいるのは魔族・竜族・堕天使、それと強力な魔物よ。

 魔物は全域に生息。陸海空の全てにいるわ。

 地上界と同じ魔物もいるけど、強さは別物よ。ポ○モンで例えると、個体値逆V努力値無振りと個体値V努力値252振りぐらい違うわ。

 魔族・竜族・堕天使は、それぞれが国を作り、そこで生活している。異種族間の交流は、今でもほとんどない。

 魔族の国は魔王国リーパ、竜族の国はジャーラ竜王国、堕天使の国はエリゴグリ帝国よ。国境が接している場所はないわ。


 魔王国リーパ。

 ドワナゴンの東部に位置し、大陸の約1/3を占める魔界最大の国よ。

 首都はカマラ。人口は十万人ぐらい。私はそこの王宮に住んでるわ。

 十万人都市は全部で四つ。四大魔王家の領都よ。

 後は爵位持ちの魔族が領主を務める土地が一〇八あるわ。人口は五千から八万人ってところね。

 総人口は推定で一二八万人。二〇一五年の岩手県の人口と同じぐらいね。


 文明のレベルは高いわ。機械も電化製品も無いけど、同じことを魔法や魔道具で実現してるの。

 魔道具っていうのは、マナで動く道具よ。マナの補給は自動。壊れるまで使えるわ。

 それで、例えば土建の場合だと、土魔法で大抵のことができるわ。整地・掘削・舗装・石材の切り出しや粉砕・コンクリートの打ち込み等ね。

 浮揚魔法をクレーン的に使うから、高層建築物だってあるわよ。

 さらに、建材も建物自体も魔法で強化できるから、地球じゃ絶対建てられないデザインの建物があちこちにあるの。

 移動や物流は転移魔法(どこで○ドアー)空間収納魔法(四次○ポケット)の組み合わせよ。

 カップ麺ができるまでに、国内ならどこへでも行けるわ。

 通信は専用魔法が三つある。子供っぽい魔法と、色を好む魔法と、犬がしゃべる魔法よ。

 これがなかなかの優れもの。会話だけじゃなく、ネットっぽい使い方もできるの。SNSもどきとか、掲示板もどきとか。

 照明は光魔法か生活魔法ね。光る魔道具もあるわ。ついでに言うと、テレビに相当する魔道具なんかもあるわよ。

 都市部は上下水道も完備。魔法で浄化や殺菌もしてるから、衛生面もOKよ。

 ただ、下水をコップで汲んで魔法できれいにした水を飲めるかといわれると…私は無理。

 ということで、実現の手段は違うけど、快適性や利便性は地球と同等以上だと思うわ。


 文化の方は、それなりのレベルよ。日本と比べると発展途上ね。

 芸術や娯楽は一通りあるけど、広くは浸透してない。

 イメージとしては'60~'70年代の日本かしら? 一次創作のヒットは結構あるけど、二次創作は広がってない的な。そんな感じね。


 リーパは完全な実力主義よ。

 実務に必要な能力があれば、年齢・性別・家柄等に関係なく役職に就けるわ。

 能力評価は年一回。役職者は全員、無役の人は希望者が受けるの。

 各役職には統率力・武力・知力・運気などの基準値が決められてる。すべてが基準値を超えてれば、その役職に就けるの。

 滅多にないんだけど、現職が基準値を下回ってたら、能力に見合ったところまで降格よ。

 各能力は魔道具で数値化され、公式な記録に残るの。誤魔化しや改竄は不可能。裏金で何とかってのも無理よ。

 チャンスの平等と審査の公平が保証されてるから、実力があれば誰でも上に行けるわけ。

 ただ、現実は非情よ。魔族の資質って、血統でほぼ決まってるの。魔王家は、代々魔王を輩出してるから魔王家なの。

 魔王以外も同じよ。三権の長や三軍の軍団長など、上級の役職は実質世襲といっていいわ。


 魔王は能力評価で就ける役職の頂点。枠は四つ。あらゆる能力が突き抜けてないとなれないわ。

 マーラくんは、史上最年少タイの十歳で魔王になった、超エリートなのよ。

 役職に必要な能力をレベルアップ時の能力増加が乱数なRPGで例えると、こんな感じよ。

  (参考)一般の魔族:序盤の町から遠出できないレベル。

  初級職:中ボスを倒せるレベル。

  中級職:ラスボスを倒せるレベル。

  上級職:裏ボスを倒せるレベルで、全能力がそのレベルでの平均値。

  魔王:レベルMAXで、全能力がレベルMAX時の平均値。(魔道具の測定上限)

 歴代の魔王は一人の例外もなく、魔道具の測定上限を振り切ってるわ。つまり、ギリギリで魔王になった人はいないの。

 今の魔王四人もそう。最低でも、レベルアップ時にリセマラを繰り返して全能力をレベルMAX時の最大値にしたような能力を持ってるわ。

 そうやってレベルを上げ切った後で、ドーピングアイテムを大量に使ったような能力の持ち主までいるわよ。


 リーパには、元首という役職がある。

 これは、魔王を超えた魔王、真の魔王だけが就ける役職なの。

 元首になると、名前の後に何世かが付く。私だとマーラ2世ってなるわけ。

 その元首は現在不在。正確に言うと、先代のマーラ1世が崩御してから五五二年の間、ずーっと不在。その間は、魔王が全員で代行してきたの。

 なぜ元首不在の状態が続いたのか? 理由は簡単で、誰も元首になれなかったから。というより、なろうとしなかったからよ。

 どうしたら元首になれるのか?

 答えは単純明快よ。真の魔王であることを示せばいいの。自分はそれだけの力があると、証明すればいいわけ。

 ただし、魔王の能力は、魔道具じゃ測れない。じゃあ、どうするか?

 答えは一対三のガチバトル。元首に就きたい魔王が残り三人の魔王と戦うの。

 特別な闘技場で戦うから死ぬことはないし、後遺症も残らない。ついでに、負けてもペナルティはない。

 でも、肝心の勝算はというと…、限りなくゼロに近いわ。

 単純に考えても、他の魔王の三倍強くて互角。確実に勝つには、当然それ以上が必要よね。

 しかも、魔王同士は、なんとなくだけど互いの実力がわかるの。能力ごとの優劣とか、総合力とか。

 当然、挑戦を受ける側は連携する。一対三で負けたら恥もいいとこだから、相手の苦手な戦い方を徹底してくる。

 そりゃ、誰も挑戦しませんって…。


 次は、魔族についてね。

 魔法に長けた長命種族。地上界に住むには強すぎるから、魔界に住んでる。

 これは、私のイメージ通り。

 でも、ヴェダーシャッドの魔族は「悪」じゃなかった。

 神に敵対するとか、世界に滅びをもたらすとか、そーゆー存在じゃないの。

 神に祈るし、破壊のための破壊はしないわ。


 魔族は超早熟。成長期は二歳ごろから始まって、早い人だと八歳、遅い人でも十一歳で終わるの。

 それで人によっては熟れごろ食べごろのお姉さんとか、高身長でマッチョなお兄さんの姿になってるのよ。

 成人年齢が十二歳なのも当然ね。

 で、私たち姉弟が年齢通りの見た目なのは、そーゆー家系だからよ。

 もう隠居しちゃったから当分出てこないけど、両親も見た目は十二歳なんだからね。


 見た目つながりで、外見と強さの関係もイメージと違ったわ。

 まず、下級と中級の魔族は、見るからに魔族な姿をしてるの。角とか翼とか尻尾とか肌の色とか体つきとかね。

 強さは見た目通りよ。デカくてゴツくて厳つい奴ほど強いわ。

 でも、上級以上は逆よ。人間に近い姿の者ほど強いの。

 上級は、ギリ人族に見えるレベル。「ちょっと毛深すぎだけど、あの人、熊の獣人よね」みたいな感じ。

 で、爵位持ちだと普通に人族で通るレベル。「髪を染めてるエルフ」みたいな感じよ。

 そして魔王級になると、人間と見分けがつかないわ。

 実際、私もカーマが大人の姿になるまでは、カラコン付けてるだけだって思ってたし。

 で、そのオッドアイが、創造神の巫女の証なの。


 私たちが姉弟で夫婦なのは、魔王家じゃそれが当然だからよ。

 前に言った通り、魔族の能力は血統でほぼ決まる。つまり、血が薄まる(イコール)能力が低下する、なの。

 だから、高位の魔族ほど近親婚が推奨されてるわ。これは仕方がないところね。

 ちょっと不謹慎なんだけど、他の魔王家の人との間にできた子供がどうなるのかは、すごく興味があるわ。

 リーパでは一夫多妻が認められてるから、機会があれば…。


 リーパの結婚って、超フリーダムよ。

 私がこそっと目指すかもしれない一夫多妻だけじゃなく、多夫一妻も一夫一妻も多夫多妻もOK。

 親子の近親婚も高位魔族ならアリ。

 どうも、子孫を残せればそれでいいらしいわ…。


 そして、異世界転生といえばこれ。魔法について。

 他で語られる異世界の多くと同じく、ヴェダーシャッドにも魔法がある。

 呪文を唱えるとMPを消費して、特定の現象を起こす。それが魔法よ。

 MPはマナという素粒子。地球にもあるかもしれないわね。

 ヴェダーシャッドの生き物は、体内にマナを蓄えることができる。それがMPよ。

 魔法の仕組みはこう。

 1.呪文を唱え、魔法名を声に出す

 2.呪文の効果を得るのに必要な思念が形成される

 3.MPが思念に反応し、効果を得るのに必要な現象を起こす

 4.呪文の効果が得られる

 MPが消費されるのは3.の段階よ。

 魔法を使い慣れるほど、最大MPは増えるわ。上限はあるけどね。

 魔法を応用した魔法剣、闘志にMPを反応させる闘気や闘技なんかもあるわよ。


 人族が魔法を使うには、呪文の詠唱と魔法名の発声が必須よ。熟練して覚醒すれば、魔法名の発声だけで使えるようになるわ。

 一方、魔族・天使と堕天使・竜族は、最初から魔法名を発声するだけで使えるの。

 すごい不公平だけど、そーゆーものだと割り切るしかないわ。

 これを聞いたときに思ったの。魔王を選んで正解だったって。人族の到達点が魔族の出発点なんだもの。全然勝負にならないわ。

 ちな、魔王級や竜王級になると、魔法名の発声も要らなくなる。大抵の魔法は身体を動かすのと同じ感覚で使えるの。

 ただ、バトルの時は魔王全員が思いっきり魔法名を叫ぶわ。思いを込めて声に出すと、それだけ威力が上がるからよ。


 あとは、竜族と堕天使ね。


 竜族は私のイメージ通り。

 竜と龍がいて、竜人もいて、海竜や飛竜ワイバーンもいる。

 体の色で能力が予想できる。火を吐くのは赤で、毒を吐くのは紫とか。


 ジャーラ竜王国があるのは西部の山岳地帯と周辺地域。広さは…わかりません!

 というのも、竜族にとって土地は領土じゃなく、「なわばり」なのよ。

 山岳地帯は絶対に譲らない。おそらく営巣地なんだと思う。

 でも、周辺地域には淡白よ。気が向けば強引に奪い、飽きれば簡単に去るの。

 そんな感じで境界線が常に変動してるから、面積の算出は意味がないのよ。

 元首は竜王シン。普段は人の姿をしてるそうよ。


 堕天使は、はっきり言って謎だらけよ。

 天上界を追われた天使というのは間違いない。

 でも、なぜ追放されたかがわからないの。

 聖典に記されてないし、伝説にも残ってないのよ。

 こんなことなら、神様に聞いておくんだったわ。


 エリゴグリ帝国があるのは北部。広さはリーパの半分ぐらいよ。

 元首はデスラゼル総統。領土は日々拡大中。

 秘密主義が徹底されてて、情報がほとんど出てこないの。怪しげな噂も絶えないわ。

 いわゆる北の帝国という表現がふさわしい国よ。



 大事なことを忘れてたわ。

 魔界から地上界へ行く方法よ。

 これは神様情報。マーラくんも知らなかった極秘ネタよ。

 魔界に住む三種族には、それぞれ元首の証があるの。

 それを三つ揃える。つまり、魔界を統一すれば、地上への道が開けるの。

 それがどこにあるかは教えてもらえなかったわ。

 「三つの証を揃えたとき、光がそなたを導くであろう」だって。



 うん、こんなところね。

 それじゃ、明日から行動開始よ。まずは戴冠式ね。

 本編五話目をお届けしました。

 主人公じゃないですけど、こーゆー設定を考えてる時が一番楽しいんですよね。

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