表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

王女様、近くないですか!?


 ──勇者パーティの美少女たちが、なぜか俺を見ている。

 勇者じゃなくて、インキュバスの俺を。


「……素敵」

 金髪の王女が頬を赤らめ、すっと歩み寄ってきた。


 あれ? 勇者の隣にいるはずのお姫様だよな? 普通ならヒーローに恋するポジションじゃないの?


「えっと……王女様? 視線、間違ってません?」

 俺が慌てて後ずさると、王女は小さく首を振った。


「いいえ。あなたの瞳……吸い込まれそうで……」


そう言って、俺の袖を掴んで離さない。白く細い指が熱を帯びていて、布越しに伝わる体温が妙に生々しい。


焦った俺は、思わずその手を振りほどこうとした──のだが。

結果、王女の指先をそっと包み込むような形になってしまった。


「ぁ……っ♡」


 王女の肩が小さく震え、潤んだ瞳がさらに熱を帯びる。


(ちがう! 握るつもりなんてなかった! 俺はただ外そうとしただけだ!!)



「俺の方がカッコいい! 姫、こっちを見ろ!」


勇者が必死に剣を掲げ、光を放つ。

まさに“勇者”って感じのキメ顔なのに、王女は全く振り返らなかった。


「勇者様、ごめんなさい……今は、あの方から目を逸らせませんの」


さらに俺の袖をぎゅっと引き寄せ、上目遣いで覗き込んでくる。

その潤んだ瞳に、俺の胸の鼓動は勝手に早まった。


(落ち着け俺! いやこれはインキュバス補正だろ!?)


 知らないうちに、俺の体から甘ったるい香りのような“何か”が漂っていた。


どうやらインキュバスの特有のフェロモンが出ているらしい。俺自身は必死に否定してるのに、その効果で王女はますます頬を赤くしている。


「あなたの声……耳の奥まで響いて、熱くなる……」


至近距離で囁かれ、俺の首筋に吐息がかかる。


「ちょ、近い近い近い! ゼロ距離すぎるって!」


「悪役風情が……! 姫を惑わせるな!」


嫉妬と羨望が混じった表情の勇者が歯ぎしりして剣を振り上げる。


「いやいや! 俺が惑わせてるんじゃなくて! 勝手に惚れられてるだけだから!!」


俺の必死のツッコミも虚しく、王女は袖を掴んだまま離さない。

勇者がどんなに必死にアピールしても、彼女の瞳は俺だけを映していた。


(おい、どうしてこうなった……!? 俺は悪役、モテないポジションのはずだろ!!)


額を押さえて天を仰ぐ俺の周りで、勇者の空回りする姿と王女の甘い吐息だけが、やけに熱を帯びて渦巻いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ