43.『感謝を伝える日』
お読みいただき、有難うございます。
ブクマ、評価、リアクション、感謝ですm(_ _)m
お久しぶりです……生きてます……
(今回は約四千五百字)
少しずつ雪が融けだした辺境伯領。暖かい日も増えてきたが、まだまだ雪が多い。
そんな辺境伯邸に、冬期休暇に入っていた使用人たちがお土産を持って、少しずつ戻ってきていた――まだお休み期間なんだけどね。
少しずつ賑わいを取り戻しつつある辺境伯邸の子供部屋で、私は『従魔』のサーベルタイガーの幼獣のお腹を揉みながら、頭を悩ませていた。
乳母への手紙――ではない。それはわりと、あっさり書けた。
シフォンケーキのお礼と、辺境伯領は雪がどっさり降ること、“かまくら”を作ったこと、夜更かしして花火を見たことなど、書くことがたくさんあったからだ。
『蒼焔の魔術師』さんにも、シフォンケーキを届けてくれたことのお礼の手紙も書いた。「次はサプライズでも、顔は見せてね!」という一言も添えて。
――じゃあ、何を悩んでいるかというと
『感謝と愛を伝える日』
家族・恋人・友人同士で『プレゼント』を渡し合い、感謝を伝える――前世で云うところの『バレンタインデー』みたいな日が近づいているからだ。
「う〜ん……なにが、いーかなぁ……」
バレンタインみたいな日があるとは知らなかった。
でも、辺境伯領に来てから色んな人にお世話になったから『ありがとう』を伝えたい……。
使用人さんたちは、お仕事だけどね。でも、お世話になってるから、感謝は伝えたい。
バスボムを大量生産するにも、手持ちの重曹だけじゃ足りない……気がする。
――頼んだら、中央まで連れてってくれるかな?
邸から街の中央までの道は、有志(ギルドの冒険者たち)による除雪のおかげで買い物に行ける。
う〜ん、量産できるとなると、あとはクッキーかなぁ……。
頼んでみよっと!
◆
重曹とクエン酸(もちろん、食用だ)、アロマオイルを数種類。
それからクッキー用の小麦粉に純ココア、粉糖と食紅もたくさん。【空間収納】に入れておけば、悪くならないからね! 時間経過しないって、便利だね〜♪
あとは……。
文房具屋さんでメッセージカードを吟味する。
時期が時期だからか、『感謝と愛を伝える日』用のメッセージカードが、特設コーナーを設けられていた。
ふむふむ。女性宛のはピンクとか黄色の淡い色に、花やハートがワンポイントで描かれている物がある。かわいい。
男性宛は……無地かな? シンプルすぎる。でもこれ、どちらにも使えるよなぁ……。
……ネコちゃんとか無いかなぁ……。
「決まったか?」
「う〜ん……シンプルすぎるんだよねぇ……」
「……なら、このスタンプ使えばいいんじゃねーか?」
「スタンプ! インクもたくさんある!」
辺境伯に言われ、カードの隣にスタンプがあることに気づいた。
お子様、視野が狭い! ぐふッ。
スタンプを吟味している間、辺境伯が私の頭をポンポンしていた。
――丁度良い高さです?
無地のシンプルなメッセージカードを数種類と、スタンプとインクを数種類選んだ。
これでお買い物、完了です!
ネコが数パターンのポージングで有ったことを、ここに記しておく。かわわ。
もちろん、全て買った! フンス、フンス。
◆
アヒルさん一家とアヒル隊長。それから三つ葉と四つ葉のクローバーのクッキーを作ろうと思います!
場所は調理場。監修は料理長、助手は料理人の皆さんです。『感謝の日』用のクッキー作りという、お忙しい中、有難うございます!
……ちょっと端っこ、お借りしますね〜。
プレーン生地で大中小のアヒルさん一家と、アヒル隊長を作って、アイシングで目や嘴、蝶ネクタイを描く予定だ。
アヒル型はあるけど、帽子付きのアヒル型はないから、アヒル隊長の帽子はココア生地で作った。ちょっと不格好になっちゃったけど。
お子様のお手々は、細かい作業が苦手なのだ。ガックシ。
クローバーも、アヒルさんたちと同じように作る。
でも四つ葉は、プレーンとココアの二色使いバージョンも作るのだ!
小さなハート型で型抜きをして、四つ葉を作っていく。軸(茎?)は、プレーン生地を細長くして、ちょん、と付ける。
余った生地で市松模様のアイスボックスクッキーを作る。これは私のおやつ!
あとは、焼き上がりを待つだけだ!
アイシングは赤とオレンジと緑。それから白と黒。粉糖と水、またはレモン汁と食紅を混ぜて作っとく。
赤は帽子と蝶ネクタイで、オレンジは嘴。緑と白はクローバーで、黒はアヒルさんたちの目に使う。
う〜ん、アヒルの本体(?)のために黄色も作るべきか……むむむ〜。悩む〜。
クッキーの焼き上がりを待つ間、場所を移し、前より少〜しキレイになった字で『いつもありがとう』とカードに書いて、ネコちゃんスタンプをポン! と押す。
私はカードにメッセージを書くマシーン……と、無心になってカリカリ書いていく――――えーっと……何枚書いたっけ?
◆
『感謝と愛を伝える日』当日。
ラッピングしたクローバーとアヒルさんのアイシングクッキーにバスボムとカードを添えて、使用人さんたちに渡して歩く。
数が数なので、クッキーとバスボムを車輪が付いた木箱に詰め、カラカラ音を鳴らしながら歩いていた。
もちろん、箱には匂い移りを阻止――できてるか分からないけど、仕切りがついている。
クッキーを渡すと、可愛いって褒めてもらえた。良い出来だったから嬉しい……! ぬふふ♪
意外だったのは男性の使用人だ。
年末休暇の時にバスボムを渡したんだけど、アレ、家族に奪われたらしく、「気になってたんですよね〜」と、喜んでもらえた。
今回作ったのは、淡い紫色の『ラベンダー』と、オレンジ色の『サンダルウッド』、淡い黄色と緑のしましまな『ベルガモット』の三種類。どれもリラックス効果のある匂いだ。
この三つのうちから一つ選んでもらうことにしたんだけど、男性陣の方がキャッキャしながら選んでたのが面白かった。
微笑ましいね~と生温かい目で見ちゃったのは内緒だ。
感想、お待ちしてまーす!
*
*
暖炉のある部屋にきた私は、自作クッキーや料理長のクッキーをサクサク食べながら休憩していた。
テーブルには戦利品――使用人さんから“お返し”でもらった物だ。
アメ、チョコ、クッキーなどの『お菓子』から、髪紐やヘアピンなどの日常使いの『髪飾り』、鉛筆や小さなスケッチブックなどの『文房具』まで様々。
髪飾りや文房具は、私のためにワザワザ買ってるよね……。いや、髪飾りはメイドさんたちからだから、自分のついでかな?
――さて。お菓子は【空間収納】に入れるとして……。文房具は子供部屋、髪飾りは寝室に持って行こう!
寝室に来た私は、クローゼットを開け、髪飾りがしまってある木箱を取り出す。
箱の中は、髪紐やヘアピンを色や長さ、形で分けられている。お着替え担当のメイドさんが毎回、綺麗に整頓してくれているのだ。
「キラキラだ……!」
知らぬ間に、見知らぬキラキラが増えてる……。いや、私が気にしなさすぎなだけ? ……ま、いっか。
ふんふんふ〜ん♪ と鼻歌交じりに、今日もらった物を箱の中にそっと入れていく。
キラキラは繊細だからねぇ……。
……女の子の装飾品箱は、もっとキラキラしてそうだなぁ……。扱いとかも大変そう。
……うん、まだマシ。
よいしょっと、木箱を元の場所へ戻していると、部屋の明かりから私を遮るように影が覆う。振り返ると、辺境伯がクローゼットの前にいた。
「パパ」と声をかけると、辺境伯がクローゼットから私を持ち上げて出す。
勢いよく持ち上げられ、思わずはしゃぐような「きゃ〜」という声が出た。
「パパ! いまの! いまの、もっかい!」
そのまま抱っこされた私は、興奮が抑えられず、足をバタバタしてしまう。
「今の?」
ぐんっと持ち上げられるのを、もう一回やってほしくて、身振りを混じえて説明した。
「ぐあー! って、もっかい!」
「もっかーい!」とバンザイする私を床に降ろした辺境伯は「何が面白いんだか……」と苦笑しながらクローゼットの戸を閉める。そして私の脇の下に手を入れ、ぐっと持ち上げた辺境伯が高い高いをしてくれた。
――途中、私のキャーキャーはしゃぐ声に護衛さんが、ドアの隙間から中の様子を伺っていたことは、言うまでもない。
気づかなかった……。
*
「クローゼットで何してたんだ? かくれんぼか?」
「ちがうよー。メイドさんにもらった“かみかざり”、しまってたー」
「髪飾り?」
「そー! クッキーのおかえしー!」
「あぁ……今日だったか、『感謝の日』」
高い高いを存分に堪能した私は、ベッドに座る辺境伯の膝の上にちょこんと座っている。
指を折りながら辺境伯にもらった物を教えていく。
「チョコとアメとクッキーに、エンピツと、ちーさいスケッチブック」
「それは子供部屋か」
「おかしは【くーかんしゅーのー】のなかで、エンピツとスケッチブックは、つくえのうえ! そのあと、しんしつに“かみ、むすぶやつ”と、ヘアピンしまいにきた」
「たくさん、もらったな」
「んふふ……ねー♪」
午後の部があるから、もうちょっと増えるのでは?
「あ! そーだ!」
ぴょんっと辺境伯の膝の上から下りて、クローゼット横にある車輪付き木箱へ向かう。
「パパのぶんも、あるよー」
お返しをしまう前に執務室に行くつもりだったんだけど、髪飾りと文房具が思いの外、多くなったから置きに子供部屋と寝室に行ったのだ。
辺境伯用のクッキーを手に、辺境伯の元へ戻る。
「はい! パパ、あまいのすきじゃないから、アイシングひかえめのクッキー!」
使用人さんたちに渡したクッキーは、表面がアイシングされたやつ。
辺境伯のはアヒル隊長の帽子と嘴、目と羽根。クローバーは縁取りのみ。そしてアヒルさん(大)には、目と嘴と蝶ネクタイの他に、『いつもありがとう』とへにょへにょな文字がアイシングで書かれている。
表面全体のに比べたら、ちょっとしたアクセント程度の“アイシング控えめクッキー”だ。
「アイシング?」
「この、ぼーしとか、まわりのやつ! “ふんとー”だから、あまいの」
「あぁ、なるほど……ありがとう」
「!」
クッキーを受け取った辺境伯が私の頭を撫でた。
……ちょっと嬉しい……。
「それから、これも」と【空間収納】から取り出した魔石のペンダントを渡す。
この魔石は、辺境伯が未確認大型魔獣討伐に行った時に渡したやつ。
四つ葉のクローバーを内包し、【状態異常無効】と【シールド】を付与した淡い緑色の人工魔石だ。
帰ってきてからしばらくして、やっと返してもらった。それを『蒼焔の魔術師』さんにペンダントトップに加工してもらったのだ。
……ホントは自分でやりたかったんだけど、辺境伯、私が『雷帝』になると、どこからともなく現れて作業できないんだよね……。
だから泣く泣く魔術師さんに依頼したのだ。
ペンダントトップになった魔石が魔術師さんから戻ってきてから、私の魔力を込めた。
「かこーはローゼにしてもらったけど、『いとしご』のまりょく、こめました!」
そう言って、にぱっと笑うと、辺境伯が何とも言えない複雑そ〜な顔をして受け取った。……解せぬ。
……なんだよ、要らないの?
◆
辺境伯から大きなアヒル隊長――『アヒル団長(仮)』を貰った。
お風呂、長風呂になっちゃいますが?? 遊んじゃうよ?
(土下座)
遅くなって申し訳ねぇ……m(_ _;)m
今話は難産でした。
ラストが中々決まらなくて……一ヶ月ぐらい放置してた←
アヒルさんは増殖中www




