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辺境でのんびり契約親子ライフ  作者: ユキノリク


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41.『シフォンケーキ』

お読みいただき、有難うございます。

ブクマ、評価、リアクション、感謝ですm(_ _)m


今回は四千切ったよー(笑)




 身支度を終えた私は、辺境伯と手を繋いで寝室を後にし、暖炉のある部屋へと向かう。



 暖炉のある部屋に着くと『従魔』のサーベルタイガーの幼獣は、相も変わらず暖炉の前に寝そべっていた。

 そして、テーブルには食事の用意がされている。


 なるほど〜。寝室に居なかったのは、ご飯の準備! それで居なかったのかー……なっとく。


「あ! おにくいっぱいのサンドイッチだ〜!」


 料理が並べられたテーブルに駆け寄る。


「お前、それ、好きだよな」

「うん! おいしーから、すきー!」


 ニッコニコに話す私の側にきた辺境伯に、頭を優しくポンポンされた。


 ……頭、撫でたりするのも好きだよねぇ……。



 このお肉がたっぷり入ったサンドイッチは、遠乗りで食べてから好きになって、よくお昼に作ってもらっている――のだが、これは辺境伯が作った……? お料理マイスターか??


 ふんふ〜ん♪ と、好きな食べ物でテンションが上がり、思わず鼻歌が出る。


 ……ん?


 サンドイッチやオムレツ、サラダにオレンジジュースの他に、やたらと目立つ箱が置いてあった。


 ケーキが入っていそうな、高さのある箱で――目立つ……というか、場違い……な感じだから目立っている。


 ん〜……しかも薄〜く【結界】が張ってある、ような……?

 首を傾げる。


 辺境伯を見上げ「ねぇ、なぁに? この、はこ〜」と、【結界】に触れないよう箱を指差す。


「開けてみれば分かる」


 ニヤニヤしながら言う辺境伯が、指先に軽く魔力を集める。

 指先が“ちょん”と、箱に触れるか触れないかでスッ……と【結界】が()けた。

 すると、ふわっと甘い……優しいケーキの匂いが漂ってくる。


 ――――え……?


 慌てて箱についているリボンを解いて、そっと箱の(ふた)を持ち上げる。



「…………し、ふぉん……けーき?」


 箱の蓋を持って、あ然とケーキを見つめる。


 声と、箱を持つ手が震えた――気がする。



 シフォンケーキだ。

 デコレーションなんてない、ただのシフォンケーキ。


 だけど、これは――


 辺境伯を見上げる。


「蒼焔の魔術師が三日前に持ってきた。

『アレク様に食べさせてあげてください』って、お前の乳母に頼まれたってよ」


 「よかったな」と言った辺境伯に頭を撫でられた。


「……うば、の……けーき……」



 鼻の奥がツンとして、酸っぱいものを見た時みたいに喉がギュッとする。そして視界がぼやけてきて


「うっ……グズ……ぅぐ、うぅ……はん、なぁ……はんな゙ぁ゙ー」

「レック?!」


 涙が(あふ)れ――――カタンと、箱の蓋が落ちた。



 “はんな゙ぁ゙ー”とは乳母のことで、『ハンナ』という名前だ。

 母の世話係として王宮へ上がり、私が生まれてからは私の世話をしてくれていた、魔術の名門出身疑惑のある女性。


 私が辺境伯に遭遇するまで生きてこれたのは、異世界(この世界)の常識(隣国限定)と、生きる(すべ)――身の回りのことや『生活魔法』を乳母が教えてくれたからだ。



 命の恩人で、師匠的な存在――そんな人からケーキが届いた。

 もう食べられないかも、と思っていたシフォンケーキ。


 悲しいんじゃなくて嬉しくて。

 また食べれることが嬉しくて。

 私が、乳母が作ったケーキが好きなことを覚えていてくれたことが、嬉しくて……。



「あ゙ぁぁぁー! うぅ……っ、うわぁぁぁん……! はんな゙ぁ゙ぁ〜!」


 泣きじゃくる私を抱き上げた辺境伯が、私の顔をタオルで(ぬぐ)うと、背中をトントン叩く。


 止めどなく出てくる涙を、手で拭うと「(こす)るな、赤くなる……」と辺境伯にタオルを渡された。

 タオルで目を押さえながら、えぐえぐ泣く。


 泣きたくて泣いているわけじゃないのに……涙が止まらない。


「うっ、く……ゔぅ゙……ヒッ、ぐぅ……」


 「我慢するな。思いっきり泣け」と辺境伯に優しく背中を撫でられ、止まりそうだった涙がまた溢れた。



「ヒック、ヒック……」


 どのぐらい泣いただろうか……。やっと落ち着いてきた。


 濡れタオルで目元を被って、ぐずぐず、スンスンしていると、鼻に何か――布……?

 ……鼻をかめ(ちーん!しろ)って? ちーーん! っ、むは。


 ……ちり紙が無いのが不便だ……。スン。


 タオルを外すと「……ぶっさいく」って言うから「ひどい!」と言って辺境伯を叩く。(いった)ぁ〜。別の涙が滲む。


「お前がこんなに泣くの、はじめて見たわ……」

「……ボクも、はじめて……スン……だと、おもう……あだま、い゙だい……ズズッ」

「思いっきり泣いたからなぁ……。あー……すするな」


 「ほれ」と、また布を鼻に当てられる。ちーーん! むふぁ……。



 こんなに大泣きしたのは多分、産まれた時以来……では、なかろうか?


 多少、泣くことはあったとは思う……けど、ここまでじゃなかった、ような気がする。


 五年という短い間だけど……そんなに泣いていないと思う――――うん。記憶にないなー。……ヒック。



「……ごはん……ひえちゃったねぇ……」

「食えないことはないだろ――あれだったら温め直すか?」


 渡されたオレンジジュースで水分補給? をしながら「んー……」と考えていると、ククッと笑われた。


「肉だし……暖炉で炙るか? サンドイッチ」



くぅ〜……きゅるきゅる……



「あ」

「ケーキ食って待ってろ」


 お腹が鳴って思わず押さえると、ククッと辺境伯に笑われる。むむむ……。

 切り分けたシフォンケーキをサイドテーブルに置いた辺境伯は、私の頭を撫でてから部屋を出て行った。


 アミを取りに行ったのかな?



 コップをサイドテーブルに置き、ケーキが乗ったお皿とフォークを手にする。


「ニャウ?」

「ボクのすきなケーキだよ」


 幼獣がシフォンケーキに顔を寄せ、スンスンする。


 実は幼獣、私が泣き出した時から辺境伯の足元を「ニャーニャー」鳴きながらウロチョロして、こちらを気にしていたのだ。

 今はソファーに座る私の横に居る。

 お座りした幼獣は、ソファーに座った私と同じ高さになる――なんか私が縮んだ感じがするから不思議だ。



 シフォンケーキをフォークで食べやすい大きさに切って、パクり。

 数ヵ月ぶりの懐かしい味だ……。


「……おいじぃ゙……っ」


 涙腺が崩壊したからか、ちょっとのことでもすぐ泣きそうになる。やばい……。

 そんな私の肩に幼獣が頭を擦りつけ、スリスリしてくる。


「うにゃぁ……」

「ぅん……だいじょーぶ……」


 優しいねぇ……。


 こつんと軽く、幼獣と頭を合わせてからシフォンケーキをもう一口。うん、おいしい……。



「……なんだ、また泣いてたのか?」


 網タイプのホットサンドメーカー――っぽいやつを持って戻ってきた辺境伯に呆れたような、揶揄(からか)われるような声をかけられた。

 「ないてないもーん!」と言って、お皿に残ってたケーキをパクパクーっと口に運ぶ。モグモグ……もきゅもきゅ。



 私がシフォンケーキをもきゅもきゅしている間に辺境伯がサンドイッチを網で挟み、暖炉で炙る。


 肉汁が出るからか、パチパチと爆ぜる音がし、イイ匂いも漂ってきて……またお腹がくきゅぅ〜って鳴った。ぅんもぉ〜!


 耳に熱が集まってくる。

 耳とほっぺ、赤くなってない?!

 持っていたお皿とフォークを膝の上に置いて、手で被うように耳を触る。

 ……ぅん……熱い……。赤くなってるよ、これ!


 辺境伯がこちらを見て、ククッと笑う。ぐぅ……。


 ……ケーキとは“別腹”ってことですね。うーわ〜!



 パチっと目が覚める。どうやら寝室のベッドにいるようだ。

 もぞもぞと起き上がり、欠伸を一つ。


 泣いて、お腹が満たされ、うとうとしちゃって……寝ちゃったみたい。それで寝室に運ばれたようだ。

 もう一回欠伸をして、目を擦る。


 乳母への手紙を書きたかったんだけど、空が茜色に染まっている。

 こりゃあ、明日だな……うむ。


「……ん?」


 ふと、邸内が賑やかになっているような気がする。


 ……なんか魔力が――――人が増えてる?



 今は私と辺境伯と幼獣しか居ないから、こんなに賑やかな感じにはならないはず、なんだけど……。んん?


 茜色に染まる空を見ながら首を傾げる。


 すると、カチャっとドアノブを回す音がした。

 扉を見ると、老執事が入って来るところだった。


「セバス?!」

「坊ちゃま、お目覚めでしたか」

「……なんで? きょーは、まだ、おやすみでしょ?」

「坊ちゃんがちゃんと、坊ちゃまのお世話が出来ているか心配で」


 そう言ってベッドに近寄ってきた老執事に「水分補給をしてください」と、水の入ったコップを渡される。


「ダイジョブだったよ? んーとぉ……いっしょに“ゆきあそび”して、ごはんたべてー……あ! ゆーしょくは、いっしょにつくった!」

「何を作ったのでしょう?」

「パスタ! ミートスパゲティのうえに、ふわトロのオムレツがあってー……パパがつくったの! おいしかったよ〜」

「それは良かったですね〜」

「うん! そのあと、おふろ、いっしょにはいって……はなび、みた! きれーだった!」

「楽しかったようですね〜」

「うん!」


 身振り手振りで老執事に楽しかったことを説明したら頭を撫でられた。

 ふふふ〜と笑って、水をちびちび飲む。


「……もどってきたの、セバスだけ……じゃ、ないよね? けはいが、たくさんある」

「そうですね、街に住む者は皆……」

「えっ……きのーかえった、みんな?!」


 そりゃあ、ざわざわするわ! ――普段より少ないけど。


「え、でも……ぜんぜん、やすめてないよ!?」

「ふふ……皆、坊ちゃまのことが気になって、おちおち休んでいられなかったようですよ?」

「え〜〜」


 ……それは、なんだか申し訳ない……!



 ベッドから下ろされた私は、乱れた髪や服を軽く整えられ、老執事と寝室を――出たら、護衛さんが定位置に立っていた。


 護衛さん! 戻って早々にお仕事?! ご苦労様です!


 護衛さんも連れて寝室を後にする――夕食のお時間です……!




ぐだぐだ長く、ヤマとオチもなくてスマヌ……orz




『一方、その頃の隣国(実父)は――』とか、いります?

(リクエストとか、あったら……活動報告に……)

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読ませて頂いております! 隣国(実父)の話も是非読みたいです!
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