東都 中央地区α+ 一月三十一日 午後十一時四十七分
春の長雨。
旧国時代よりも雨量が減ったと言われているが、毎日続けば流石に気が滅入ってくる。
飛雅組組頭の逮捕の詳報が各都に流されたらしく、世間は数日前までの変死体事件から飛伽組解体へと興味を移し始めてはいるが、東都では自分たちが予想していたほどメディアに取上げられてはいない。
おそらくは監視機関による改竄も入っているのだろうが、所詮は他人事ということだろう。実際に関わった者で無い限り、あっと言う間に忘れさられてしまうのが一般的な日常だ。
報告書と依頼書を交互に目を通しつつ、疾風は耳だけテレビに向ける。
『次のニュースです。東地区自動車道・下り線で三十代の男性が運転するトラックが横転する事故が発生しました。怪我人は居ませんでした』
「あの辺、最近地盤が下がってっからなぁ…」
ふと目を上げてみれば、自分達も運転中によく通る道路が映る。リポーターは詳細を説明するために身振りを交えて神妙な口ぶりで言葉を重ねている。
死傷が無かったのはいいが、道路くらい整備して欲しいものだと思いつつ画面を見ると、ワイプで抜かれた小さな画面には事故を起こした本人の姿が写っている。
『歩行者の話によると、水流が目前まで来たトラックを道路脇まで押しやった為に助かったと言う事で─』
「……水流がトラックを押しやった?」
リポーターの言葉を辿ったと同時、ぞわりと背筋に悪寒が奔り、異様な胸騒ぎが起きる。
ピリリリリリッ ピリリリリリッ
鳴り響いた携帯の着信音に、疾風は自身の予感が現実となったことに奥歯を噛んだ。




