586 メー&ルー
二人の名前はメーとルーだそうだ。
孤児だからってもうちょっと名前を考えてあげようよ。あだ名じゃないんだからさ~。
「この体だからね、孤児としてお恵みをもらうしかできないのよ」
「たまに大金くれる奇特なヤツがいるから止められないよ」
なるほど。十五歳でなければここまで悪辣になれないな。
「……タカトさんをバカにするなら許さないわよ……」
ミリエルから凄まじいまでの小宇宙的な殺気が放たれた。
二人に向けられているのにオレまで股間がキュッとする。ミ、ミリエルさん、落ち着いて……。
「バ、バカにはしてないよ。奇特な人がいるからあたしらは生きていられるんだからね。感謝はしているさ」
「そうだよ。気を悪くさせたら謝るよ」
ミリエルの殺気で謝ったとかではなく、元々そんなに悪い性格じゃないみたいだな。
「次はないわよ」
ここで落ち着けと言えないオレ。チキンである。
「話を戻すわ。あなたたち、ゴブリン駆除ギルド、セフティーブレットのことは耳にしているかしら?」
「あ、ああ。ウワサだけなら」
「タカトさんはセフティーブレットのギルドマスターよ。わたしは補佐のミリエルよ」
オレ的にはサブマスターと思っているがな。
「先ほども言ったけど、あなたたち、セフティーブレットに入らない? 入るなら衣食住はこちらで用意するし、仕事も与える。もちろん、報酬は払うわ」
「こんなあたしらをかい?」
「見た目は関係ないわ。セフティーブレットは能力を大事にするギルドだからね。わたしもタカトさんに誘われたとき、両脚はなかった。回復魔法を買われて仲間にしてもらったわ」
「両脚がないって、どういうことさ?」
「文字通り、両脚がなかったのよ。戦争で両脚を奪われ、石を投げられ、泥水を啜りながら生きてきたわ。そんなとき、タカトさんがわたしの前に現れてくれ、温かい家を与えてくれたばかりか両脚を回復してくれ、居場所を与えてくれたわ。返し切れない恩がある。けど、タカトさんはなにも受け取ってくれない。毎日与えてくれるばかりだわ」
オレとしてはたくさん受け取っているんだけどな~。
「わたしは、タカトさんを支える。些細な問題はわたしが受け持つ。セフティーブレットの人材不足を解消するために動くわ。あなたたちにやる気があるならセフティーブレットで受け入れるわ。どう? セフティーブレットにこない?」
ミリエルに圧倒されて口を挟むことができない。
「いくらくれるの?」
「一日大銅貨一枚。だけど、セフティーブレットの一員になれば別の報酬を得られるわ。わたしたちの格好を見ればわかるでしょう? 金貨を何枚出してもわたしたちが着ているものは買えないわ」
二人が目で語り合い、うんと頷いた。
「「入るよ」」
「では、メーとルー。今からあなたたちはセフティーブレットの一員よ。これに名前を告げて」
ミリエルが請負員カードを発行して二人に渡した。
そういや、駆除員なら請負員カードが発行できるんだったな。これって、シエイラもできるのかな? あとで確かめてみよう。
二人が名前を告げて請負員となった。
「タカトさん。二人を身受けしてきます。今日はリハルの町でゆっくりしててください。外に出るときは必ずイチゴを連れてってくださいね」
子供じゃないんだから、と言えないオレ。何度も生死に関わるトラブルに遭遇してますもんね。ハイと素直に返事しておきました。
三人が去っていき、オレだけが残されました。
「……ホームに入るか……」
ミリエルの言葉に従いイチゴを出そうとしたらイチゴがホームにいなかった。ミサロかラダリオンが出したのか?
「──あ、タカト。ちょうどよかった。巨人になれる指輪を貸して。街の巨人がきたのよ」
ガレージで考えていたらミサロが入ってきてそんなことを言った。
「オレもいこうか?」
「大丈夫よ。ラダリオンもいるしね。ほとんどが女性だからわたしたちでやるわ」
ハイと巨人になれる指輪を渡した。確かにオレじゃどうしようもないんでね。
「そっちは大丈夫なの?」
「ああ。新たに請負員を引き入れてミリエルに任せた。オレはリハルの町で待機しているよ」
「そう。また変なことに巻き込まれないでね」
「……それは約束できないな。もう、変なことに巻き込まれたもんだしな……」
八歳の姿をした十五歳の双子を請負員にするとか、変なことに巻き込まれたようなもんだろう。これが日常ならオレの人生、波乱万丈すぎるわ。いや、波乱万丈な人生でしたよ!
「そ、そう。まあ、命に関わるようなことじゃなければ大丈夫でしょう」
なに一つ大丈夫じゃなかったけどな。回復薬でストレスは解消されないんだよ。
「……今日は酒でも飲んでいるよ……」
酒だけがストレスを緩和してくれる。今日は久しぶりに麦焼酎でも飲もおうっと。
「飲みすぎないでよ」
「誠意努力します」
いつか飲もうと買っていた吉四六を持って外に出た。
「さて。どこで飲むかな?」
まだ午前中だから酒場もやってないだろうし、宿でも借りようかな?
なんて考えていたら周辺が騒がしくなった。
なんだ? と通りに出てみると、昨日の狩人の巨人がいた。
「……また変なことに巻き込まれるのかな……?」
そうじゃないことを願うばかりである。




