1478 *ゴルス* 鹿 上
「よし。拠点を築くぞ」
ビシャがゴブリンども引きつけてくれたから周辺にゴブリンの熱源はなくなっている。動くなら今のうちだろう。
燃やしたことで視界はよくなっている。今のうちに単管パイプを買って拠点を築くとする。
全員戦闘強化服を着ているので進みは早い。簡易な拠点ができれば土嚢積みをする。
ここに閉じ籠る気はないが、だからと言って無闇に動く気もない。動かなくともエサを撒けばあちらからやってきてくれるんだからな。
交代で動いたことで、ゴブリンが大量に攻めてきても乗り越えるだけの拠点は完成できた。あとは少しずつ快適に過ごせるようにしていけばいいだろう。
「次は発信器を打つとしよう」
十器は降ろしたので、通信が届く距離を探して打ち込むとするか。
「まずは三人一組で通信が届く距離を探すとしよう。その場合、ゴブリンは駆除していいが、根絶やしにはするなよ。狂乱化されても困るからな」
あいつらは死んでも変な臭いを出しやがる。ほんと、迷惑でしかない。
距離を守るためにおれは残ることにし、コンクリートを捏ねて地面に塗った。ちょっと地面が湿っていて気分が悪いからだ。
ヒートソードは全員が支給されているのでコンクリートが乾くように照らした。
「ん? 銃声か?」
微かに銃声らしきものが聞こえた気がした。
「バズの隊が鹿の群れと遭遇したようだ」
櫓の上にいたバズが教えてくれた。
「鹿か。ゴブリン以外にもいたんだな」
「かなりデカい鹿らしい。若いのがびっくりして撃ったようだ」
「まあ、実戦が足りてないしな。仕方がないだろう。ここで一人前にせんと、カインゼル様に叱られるぞ」
五十過ぎとは思えないくらい若々しく、海で鍛えたおれらですら歯が立たなかった。ほんと、歴戦の兵士はとんでもないぜ。
なんの問題もなく十日が過ぎ、拠点も住みやすくなってきた。なんか、ここに住み出してもよくなってきたな。
やることもなく周辺の草を刈ったりしていると、バズたちが見た鹿が現れた。
しばらくこちらを警戒していたが、こちらは敵対する気はない。放っておいたらなんか住みついてしまった。
「あいつら豆とか食うかな?」
マイガイがそんなことを言い出し、酔狂にも豆を買ってバラ撒いた。
こちらに敵意がないことを悟ったのか、一匹がこちらにやってきてバラ撒いた豆を食べ始めた。
「こうしてみると、なんか可愛いものだな」
他のヤツらも興味を持ち出し、鹿が食いそうなものを探し出し、エサ箱まで作り出した。
まあ、やることもないので好きなようにさせておいた。




