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地方生まれの聖女様  作者: タタラ
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「私」とハジマリ

「「貴様は当代勇者か?」」


私に問い続ける白銀の鎧の姿をぼんやりと見ていた。


私は何も出来ず瞼が閉じてゆく、眠る様に意識を失いかけていた。

そんな様子を見て白銀の鎧が腕を伸ばし私の体を鷲掴みにし持ち上げられた。


「「…言葉が通じていないのか」」


兜を耳元に近づけ小さな声で呟いた。

失いそうになっていた意識が引き戻される、聞き逃せば命を失う、答えなければ死ぬ、体は震え奥歯が意志に反しカチカチと鳴る。


「わた…しは…ちが……う…」

そう答えるのが精一杯だったが白銀の鎧は


「「違う?そうすると何故お前は勇者の鎧を纏う事が出来るのだ?」」

勇者の鎧?あの漆黒の鎧が勇者の…?ジェフ爺さんに見せて貰った本に書いてあった内容を思い出した。


白銀の勇者と漆黒の勇者…まさか…400年も前の…私が纏った鎧が漆黒の勇者の鎧で、目の前の魔物の女王の纏っているのが白銀の勇者の鎧なの?


「「この二つの鎧は私が創ったのだ間違うはずは無かろう、ではお前は?」」


次の瞬間私の体は糸の切れた人形のように宙を舞っていた、白銀の鎧が小さく見える程に高く。

一瞬、空で停止する、落下を食い止めようと魔法障壁を張ろうとするが障壁は現れなかった。


(お、落ちる…)


地面が近付いて来た時、二人が私に向け手を伸ばししている姿が見えた、私の周囲で障壁が砕けている、多分二人が張ってくれているのだろうが形になる前に砕けてしまっている様だ、白銀の鎧の仕業だろう。


もう地面まで数メートル、私は衝撃に耐える為に歯を食いしばった。

(衝撃程度ではすまない筈だけど。)


ブゥン、目の前が光輝き額から魔法陣が浮かび上がる、私は地面すれすれで宙に(とど)まると静かに地面に降ろされた。


「「やはり女神の加護を受けているようだな、しかし」」


「「傷を治したのはどういう仕組みだ?魔法では無いな?」」


剣を握り直し、ゆっくりと白銀の鎧が近づいて来る。

女神の加護が働いているならアリアが私を見て居る筈、


(アリア、皆をここから逃がしてお願いします)

しかし、何も起こらなかった。

(駄女神め、こういう時の為の奇跡でしょ!あの少年もだんまりだし…)


「「やはりお前は危険だな、ここで始末しておこう」」

心と体を切裂く様な殺気に思考が硬直する

額の魔法陣が光を増すと閃光を発し振り下ろされる剣は、私に触れる事無く止まった。


女神の加護が働いているのならと、再度、女神アリアに願ってみたが返答は無かった。大体、対価も払っていないのに発動している事も分からない。


パチン


『ヤアヤア、ヒサシブリダネ、モトメガミ』


指を鳴らす音と共に少年が白銀の鎧の側に現れた、まさにその瞬間、目にも止まらぬ速さで白銀の鎧が少年に剣を振り抜いた。


『アイサツモ、シテクレナイノカイ』


少年は剣を指でつまむようにして止めるとにこやかに白銀の鎧を見ている。


「「まさかお前が…もう気が付くとは…邪魔をする気か?」」

『チョクセツハ、ナニモシナイヨ、コノセカイノコトハ、ココノ、メガミニマカセテアルシネ』


「「何を…そうか、あの鎧は…お前の仕業か」」

『ソウダヨ、イソイデ、チョウセイシタカラ、キミノシカケタ、"ノロイ"ニキガツカナカッタヨ』


白銀の巨体に対峙し新しいおもちゃを手にした少年のような笑顔に急に不安を覚えた。



魔力が回復し始め少し体が動かせるようになってくると、這いずる様に二人の元に近付いて行った。

この魔法陣のおかげかな、女神アリアの加護なのは分るんだけど、なんで何も言わないのかが分からない。


「「女神が邪魔をして来るかと思えば…お前とは…」」

『オマエ、トハヒドイナァ、ショウネン、デイイヨ?』


「「私を始末しに来たのか?」」

『マサカ、コノセカイノ、ジュウニンニハ、テガダセナイヨ、ソレニ、ボクハ、ソンナ、ヒドイコトハシナイヨ』


バァンンン!破裂音が鳴り響き硬直する、振り返ると白銀の鎧の左拳が少年の小さな手で受け止められていた。

『アイカワラズ、オコリッポイネ、ダメダヨ?』


「「手が出せないと言うのならここで斬り刻んでやりたいが…」」

『ソレモムリダネ、ソレニ、キミ、ヒンシダヨネ?』


白銀の鎧が腕を引くと少年は周囲威を見渡す。

少年が現れた事で完全に私への興味が無くなったようだ。


『テイアンガアル、ココハヒイテクレナイカ?』

「「・・・・・」」


『カノジョタチニ、テヲダサナイノナラ、ボクモ、テヲダサナイ』

「「どういう事だ?」」


『キミモ、ホンチョウシジャナイダロ?ソコデダ、シキリナオサナイカ?』

「「何を企んでいる…」」


『ボクハコンゴイツサイ、テヲダサナイ、アトハ、コノホシノ、メガミニ、マカセル』


『キミハ、キズヲイヤシ、スキナヨウニスル、チキュニモドルナリ、スキニスルガイイサ』


「「その言葉を信じろと?」」


『セカイノカンリシャ、ガイウンダ、シンジテホシイナ』

「「……久しぶりの命溢れる世界だ、楽しませてもらうとする」」


『コウショウ、セイリツダネ、イヤイヤ、タノシクナッテキタヨ』


「「後悔するがいい…この世界喰らい尽くしてやる」」

白銀の鎧の足元に魔方陣が浮かび上がるとその巨体が光輝き消えた。


少年が僅かに口元を尖らせる。

『セッカチダナ、モウチョット、ハナシアイテニナッテ、クレテモイイノニサ』




二人の元にたどり着く前に、フィル姉さんとエル兄さんが自由を取り戻し私に駆け寄って来た。

「大丈夫ファナちゃん!」「…ファナ」


フィル姉さんい抱き抱えられると少年が


『サァ、セカイヲ、スクッテクレルカイ?』


満面の笑みで訳の解らない事を言う少年に私達は


「「「 はぁ? 」」」


こう答えるしかなかった。



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