「私」と鎧の攻防
公園の中心に現れた子供用のジャングルジム、少年がよたよたと登り夕焼け空を見上げる。
「キレイダネ」
「はぁ?綺麗ですか…」
「チヘイセンニ、キエテイク、カガヤキハ、スバラシイネ」
イヤイヤ待って、綺麗とか素晴らしいって言われてもその夕焼けは私の命の灯だからね!消えかけてるんだからね!
しかし気になるのはこの少年が神器を渡してまで私とカノジョが戦う事を願うのか。
同郷の私に「同じ地球人なんだから何とかしろよ」という事かな?
「チガウヨ、オモシロソウ、ダカラダヨ」
少年はジャングルジムの頂上から悪戯っ子の笑顔で見下ろしていた。
少年の夕日を背にしている姿は神々しくも在り、輝きの中に何かを隠しているようにも見えた。
…間違いなく隠してる、うん。
「面白い…ですか?」
少年は満面の笑みで何度も頷く。
「ソノタメニ、キミニハ、ジンギヲ、アタエタンダカラネ」
「テンセイシャ、ガホシガルノウリョクダヨ」
「・・・なんだろ?」
思わずこんな状態なのに気分が高揚する、お決まりの転生者が欲しがる能力と言えば無限に近い魔力とか?トンデモナイ生命力とか?一目見たら相手のステータスが覗けるとか?色々有るけど…後は…まさか定番の…
「アイテムボックスですか?!」
「セイカイダヨ!」
私は思わずガッツポーズ、少年もビシッとポーズを決めるがバランスを崩し転落しそうになりながら凄く嬉しそうだ。
私も嬉しい、アイテムボックス、異空間倉庫、名前は色々だけど便利過ぎる能力、異世界転生したって実感する。
こうなって来るともう一つの神器にも期待してしまう。
「もう一つの神器はどんな能力が?」
「モドッタラ、オシエテアゲルヨ、ソロソロカエラナイト」
「シンジャウヨ?」
帰るの何も自分じゃ戻れないし、あの攻撃を避けられないし一体どうすれば。
「ボクハコウハナシタヨ、トッカガタ、ダッテ」
項垂れる私はその言葉で自分がどうすれば助かるか理解できた、治療に強固な魔法障壁の"特化型"そうか、そうだ!
「はい、戻りましょう」
「ゲンキガアッテイイネ」
そういって笑うと腕を伸ばし小さく指を弾く。
『パチン』
◇◇◇◇◇◇
『パチン』
「ファナちゃん!!」「ファナァア!」
ぶれる視界に迫り来る剣先が私の首に……って斬られてたまるか!
瞬時に髪が輝き周囲を朱色に染める、剣戟を防げ!
ギャイン!
攻撃を止められた白銀の鎧はそれでも更に力を込めて剣先を押し込んでくる。
少し顎を上げ白銀の鎧を見下げる様に睨み付ける、鎧は一瞬動きを止めたがすぐに幻想的な光のラインを描きながら私を叩き潰そうと連撃を繰り出してきた。
眼で追う事は当然出来ないが、張り巡らした障壁が轟音を立てすべての攻撃を受け止める。
ガインギィン (ヒィィ・・・)
悲鳴をあげそうなのを必死でこらえ白銀の鎧を睨む…そろそろ攻撃を止めてくださいよー。
あの少年の姿は見えない、この鎧何処かに飛ばしてくれるって言ったのにぃぃ。
しかし、少し時間が経つと余裕が出来た、今張り巡らせている障壁はさっきまでの障壁とは性能が段違いだった、これなら勝てる?守りから攻勢に転じる?
爆ぜろ燃えろ四散しろ燃え尽きろ!爆発をイメージし目の前の鎧に向け放つ、
パン!
兜の前で小さな破裂音と火花を発した…目が点になった…何この威力?あー「ツカエルテイドニ・・・」ってこういう事なんだ!
一気に勝てる気がしなくなった、このままだと魔力量の勝負になる、元女神と魔力量勝負とか勝てるかー!
だが鎧は後ろに飛ぶと私との距離を取り何かを探すように首を振る。
「ファナちゃん大丈夫?怪我してない?」
「ファナ!」
二人が驚きの表情で駆け寄って来る、ダメだと思ったらその攻撃を受け止めたのだから驚きもするだろう。
「はい、何とか大丈夫です」
「そか、私が時間稼ぐから、ファナちゃんとエルゼルは脱出しなさい」
「師匠一人じゃ無理です…3人がかりでも…」
フィリ姉さんが微笑みながら私の頭を撫でた、攻撃手段が無い以上足止めもままならず、逃げる事は出来ないだろうし。
私の魔法障壁なら足止め位は出来るがフィル姉さんがそれをさせてはくれないだろう、強化された事を今、説明している暇は無いまだ白銀の鎧は眼前に居るのだから、だがこれ以外の対抗手段が思いつかない。
白銀の鎧は罅の入った剣を投げ捨て足元に転がる剣を拾い上げ構えた。
だが纏う雰囲気が変わった、圧倒的な力の差は先の攻撃で分かってる筈なのに警戒している様だ。
ゆっくりと白銀の鎧は山積みになった武器に近づき蹴り上げる、まさかと思う間もなく…宙を舞う多数の剣が瞬時にその姿を消す、白銀の鎧が武器を打ち飛ばしている。
私は正面に障壁を張ると煌めきと同時に障壁に剣が突き刺さる、砕ける事は無いようだ流石特化型!
フィル姉さん達も武器を飛ばし軌道を逸らしてくれているが動けなくなった。
「簡単には逃がしてはくれないわね…でもあなた達だけでも…」
(何か…方法は…)
周囲を見回すとそれが目に入った、まだ煙を上げている漆黒の鎧が。
剣を操る要領で操れないか?いきなりでは細かな操作は出来ないだろうがやるしか無い。
更に髪が輝かせ弾丸の様に飛んで来る武器に砕かれない様に強固な障壁を張り意識を漆黒の鎧に向ける。
「フィル姉さん、エル兄さんあの鎧に攻撃してこっちに向けてください」
「…分かった」
「ごめんね、期待してるわファナちゃん」
二人の剣戟が白銀の鎧に襲い掛かる、が鎧は羽虫でも叩き落すように剣が地面に転がす、だがこの一瞬の隙を突いて。
私は漆黒の鎧を操り白銀の鎧に向けて駆け出させた。
操作している気分は格闘ゲームのそれだった、駆けて来る漆黒の鎧に白銀の鎧が盾を構える。
この状態で戸惑う事も無く対処するとか、私なら間違いなく固まるのに!
「いけぇぇぇ!」
思いっきり振りかぶらせ右ストレートを振り抜けさせると白銀の鎧が盾で受け止めた。
『ゴォォオンン・・・』
白銀の鎧はカイトシールドにしっかりと拳の痕を付け吹き飛んだ。
その時、私も右腕を振り抜けるようなポーズをしていた。
「…ちょっと気持ちイイ」




