「私」と守護者2
白銀の鎧が武器の小山から飛び降りる、しかも着地の際に羽が舞い降りて来たかの様に全く音を立てない、その姿はあまりにも優雅でまるで英雄の登場シーンのようだった。
白銀の鎧はゆっくりと面甲に剣を立てた。
うわー何これカッコイイ…絵になるなぁ…って違う!
左腕にカイトシールド、右手にはロングソード?が握られていた鎧がデカくて良く解らないもしかすると両手剣かも・・・嫌すぎる。
剣の調子を確かめる様に空を切ると重心を下げ盾を前面に構えた。
漆黒の鎧の側に佇む私達との距離をじりじりと詰め始める。
「退却と言いたいけど逃がしてくれそうにも無いねぇ」
フィル姉さんに顔に焦りの表情が見える、構えからも漆黒の鎧以上に戦い難い漆黒の鎧が"猪突猛進"なら白銀の鎧は"泰然自若"なのかもしれない。
「何とかしないとってエル兄さん戦えそう?」
エル兄さんを見るとまだ少し辛そうだが「なんとかな…」と苦笑いを浮かべた。
漆黒の鎧を倒したと思ったらコレだ、私だって「マジかぁ~」と叫びたい所だし、こいつはさっきの戦いを見てただろう同じ手は使えないかもしれない。
盾を持っている以上前面に居ても仕方がない、私達は白銀の鎧を囲むように広がり剣を飛ばすが白銀の鎧は体を回転させるようにして十数の剣戟を回避し、盾で弾き、剣でいなす。
「すごい…」
思わず感嘆の声が漏れる。
「ファナちゃんさっきの使える?!」
フィル姉さんが次々に武器を増やし白銀の鎧に仕掛け叫ぶ、
「やって見ます、エル兄さん支援お願いします!」
「分かった!」
私の剣攻出来ない分を二人が補い身動き出来ない様にしてくれた、魔力を練りさっきのイメージを思い浮かべる、一度使えたのだ構築するまでの時間も少し短く出来る筈、爆ぜろ燃えろ四散しろ燃え尽きろ…
白銀の鎧を見据え魔法を発動させようとした時、白銀の鎧は剣先で宙を舞う剣を私に弾き飛ばしてきた。
「エルゼルその剣を押えて!」
「ファナ!」
「ヒィッ」
数本の剣が回転しながら飛んできた、直撃コースだこれ正確に飛ばし過ぎだろ!
思わず両手交差させ魔法障壁を張ると衝撃音と罅が入るような嫌な音が響き障壁が砕けた、衝撃で体勢を崩し爆発のイメージが途切れ魔力が四散してしまった。
「うっそぉ・・マンガみたいな事しやがってぇ・・」
「そんな事が・・出来るなんて・・」
流石にフィル姉さんも驚きが隠せないでいた、アレだけ高速で動かしていた剣がただ撃ち落とされる所か狙いを定めていとも容易く打ち飛ばされたのだから。
エル兄さんは荒い息を吐き膝をついている、恐るべき技術いや神業を見せつけられ一瞬の虚を突かれた。
《ドンッ!》
私に狙いを定めた白銀の鎧が盾をかざし飛ぶように迫って来た。
僅かに見える兜以外全く見えない何処から斬撃が襲い来るのか…どう避ければいい?魔法障壁で防げる?
炎か?
壁を?
魔法で?
困惑し体の動きが止まる、襲い来る鎧を前に棒立ちになってしまった。
盾の縁が一瞬輝いて見えたと同時に私の首めがけて伸びてくる剣先が見えた……。
そう…見えたのだゆっくりと、とてもゆっくりと迫って来る剣先が…一瞬が永く恐怖だけが続き、頭の先から凍るような悪寒が全身を支配していた。
白銀の鎧の足元から岩で出来た槍が突き出して来るが鎧に阻まれ砕かれる、あ…フィル姉さんの魔法かな…
「ファナちゃん!!」「ファナァア!」
スローモーションの世界の中、醜く恐怖した顔なんて見せたくない・・・私は二人に微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうしてこんな事に…」
何処までも広がる草原に椅子に腰掛けテーブルに置かれたモニターを食い入るように見ている一人の赤いローブの女性が居た、女神アリアだ。
「あんな魔物が居るなんて…それにあの鎧は勇者様の…何故…」
女神アリアは今、窮地に立たされているファナ達の姿を天界から見ていた、当初は魔物の女王の討伐されるのを確認するつもりだっのだが予想だにしない魔物が現れたのだ。
魔物の巣で"魔物の女王"の姿を見た時ファナさんの呼び声が聞こえない程驚いた、女神と言えど世界の全てが視える訳では無いのだ。
それが探していた魔物・・・数百年ぶりに復活した"魔物の女王"がファナさんの目の前に居たのだから。
まさに僥倖、完全復活する前の幼体、倒すだけならファナさん達で何の問題も無いのだから。
魔物は一体一体はそれ程強くは無い、冒険者でも3,4人で囲めば勝てるだろう。
魔物の恐ろしいのは女王の繁殖力からの数の暴力、圧倒的な大群で襲い掛かってくる事だ。
その為、慌ててファナさんの魔法に介入して魔力を注ぎ"女王の兵隊"を焼き払ったし"魔物の女王"にも瀕死の重傷を負わせた、倒しきれなかったが後は傷が癒える前にファナさん達に討伐して貰うだけだった…はずだ。
このせいでファナさんが死に掛けたが十分な補強もとい治療をしておいた、これで間違いなく勝利する。
魔物の巣にもう一度出向いて貰う為に役に立つ物が有ると啓示じみた言葉を伝えた。
これで、魔物の女王を倒してくれれば、今後数百年は復活出来ないはずだった。
ファナさん達には苦労に見合うだけの宝も巣に在るはずだ。
だがそれを"勇者の鎧"を着た何かが邪魔をしてきた、アレは何?何者?
『パチン』
「ヤアヤア、オヒサシブリダネ」
突如天界に現れたのは白髪の少年、いや主様。
「あ・・主様、御久し振りで御座います」
立ち上がり跪こうとするアリアを少年は手をかざし制した。
「イイヨイイヨ、ソノママデ、ソレドコロジャナインダロ?」
少年は全てを分かっていると言った顔で頷いた。
「主様はアレが何かご存じなのですか?」
「ウン、シッテルヨ、キミモシッテル、コダヨ」
私も知っている?誰?
困惑の表情が浮かぶ、女神となり400年以上経つこの世界にファナさん以外に顔馴染みなど居ない。
「ゼンニンノ、メガミダッタ、コサ」
「あの女神ですか?」
確かにそれなら納得だ、だが知っているというより殺されかけた相手だが…だが何故今ここに?
「イヤイヤ、バツニ、イセカイニ、トジコメタラ、ホシノ、マリョクヲクラッテサ」
ニコニコしながら白髪の少年は信じられない話をした。
「コノセカイニ、タマシイダケデ、カエッテキテタヨ、オドロイタネ」
「イヤイヤ、チキュウサンノ、ユウシャハ、スルコトガ、スゴイネ」
「あの女神は元勇者なのですか?」
「ソウダヨ?イッテナカッタカナ?」
元女神が任されていた星は輝きを失い真っ暗な死の星と化し、その世界の天界には干乾びた女神の骸が横たわり醜い笑みを刻んでいた。
「ハチョウ、ノ、アウカラダニ、トビコンダラ、マモノ、ダッタ、ミタイダネ」
そう言うと腹を抱えて転げまわる主様をジッと見ていた。
元勇者、元女神、それが今ファナさん達に立ちはだかって居るなんて…モニターに眼を向け女神アリアは意を決するが。
「ワカッテイルト、オモウケド、メガミハ、チョクセツ、セカイニカイニュウ、シチャダメダヨ?」
この世界のありとあらゆる生命を女神の力で奪う事は出来ない、誰かを介してでなければ。
「ですが、このままではファナさんが!」
「ファナサン?ダレダイ?」
「…地球から招いた転生者です」
「ホウ、チキュウカラノ、テンセイシャ、カ、オモシロソウダネ!」
白髪の少年は嬉しそうに笑うのだった。




