「私」とダンジョン2
魔法の明かりで照らしながら進んで行くと小さな部屋が通路の左右に在るので確認しながら一つの部屋に飛び込んだ、高さは3メートル直径6メートル程の円柱のような部屋だった。
周囲の気配や音を探る、どうやらこの辺りには魔物は居ないようだ。
息を整え魔法の明かり小さくし俺はエル兄さんに触れるぐらい近づき小声で話し始めた。
「エル兄さんこの森に魔物の巣が在るってって初めて聞いたんだけど!」
まだ体の震えが止まらない、こんな危険なモノが在るのにその話を聞いていなかった事に驚きより先に怒りが込みあがってきた。
「北の山の麓に小さな巣が在るのは師匠から聞いていたがここまで大きくなっているなんて思わなかった」
エル兄さんも硬い表情で現状が信じられないようだった。
北の山まで何キロあると思ってるんだ?広がったとすれば魔物の数は…
「俺達が落ちたのはちょっとした空洞だったが落ちてきた瓦礫で埋まってしまった、掘り返そうにもここの深さも良く解らないし地盤が柔らかそうで下手をすると崩れる恐れがある」
「じゃぁ別の出口を探すの?」
「天井に穴を開ける訳にもな…」
エル兄さんが壁面に触れて確かめている、俺も触れてみるが固められているようには思えない感触だった。
結構な距離を走って来た、落ちてきた場所に戻るのも難しいか。
巣である以上入り口が幾つかあるだろうからそ探すしかないな。
「ファナは武器を持っているか?俺はナイフが4本だ」
エル兄さんは訓練途中だったので武装しているが俺はちょっと散歩程度だったので最低限の武装しかしていなかった。
「護身用の投げナイフが2本だけ…」
「そうか・・出口を探す途中魔物との戦闘になる攻撃魔法は極力使うなよ、特にファナの炎系はダメだ」
洞窟内だから炎は分かるけど、戦闘に攻撃魔法は使うなって俺にどうしろと?
「え・・・?」
不安な表情でエル兄さんを見つめると俺を安心させる為かそっと抱きしめてきた、そして優しく頭を撫でられている。
「俺が守ってやる大丈夫だ、脱出までどれ程時間がかかるか分からないから魔力はなるべく使わない様に、ファナの魔法は威力がある分消費も多いからな」
エル兄さんが色々説明しているが右から左に流れている、抱きしめられ頭を撫でられている事が恥ずかしくてまた心臓がバクバクしている。
「分かったから離してエル兄さん…ハズカ…シイ…」
小声での会話だ俺の声は消えそうなほど小さくなった。
真っ赤になり顔を逸らす、魔物への恐怖は静まったが羞恥心が過去最高である。
(ぐおぉぉなんで俺がエルゼルにドキドキしたりしなきゃ…あ゛ぁ~~~~!)
エル兄さんはゆっくり俺を離すとナイフを抜き周囲に浮かせた、俺も投げナイフを浮かせ戦闘準備を整える。
「はぁ~~~ふぅ~~~」
大きく深呼吸して魔力を纏う身体強化は疲労を押える程度にして部屋の出口に向かおうとした時、魔物の顎を鳴らす音が聞こえて来た。
「ガガチガチガチ…ガチガチ…」
複数居る様だこちらに向かっているのか少しづつ足音が大きくなってくる、何かを探すように止まり進むを繰り返している部屋を確認している様だった、俺達は武器を構え待ち伏せする事にした。
すぐそこに魔物が居るわずかな明りが入口を照らしている、足音が入口のすぐそばで止まった。
入口に大きな鉤爪のような指が掛けられ、ゆっくりと魔物が部屋を覗く込んでくる。
ヒュッっと空を切る音と共に魔物の首が胴から離れゆっくりと落ちて逝く、エル兄さんのナイフが魔物の首を飛ばしたようだった、ってのは俺には全く見えなかったからだが…
(うぉぅ、エル兄さんこんな事出来たのか!怒らせるの止めとこう…)
外から先程とは違い激しく鳴らされる魔物の顎の音が響く、あれは警戒音?離れて行く?、まずい仲間を呼ぶつもりだ!
「エル兄さん!」
「逃がすな!」
叫ぶと同時に二人で部屋の外に飛び出す、魔法の明かりを通路にばら撒く様に点ける。
二本足で立ち上がった蟻のような生き物、忘れもしない奴らだ。
やはり魔物は後退していた頭の良い奴らだ勝てないと分かれば仲間を呼び数で押し切る、フィル姉さんから聞いてた魔物の戦い方だ。
先の大戦で魔物が見せた戦術、いや本能だ仲間が倒され形勢不利だ分かると仲間を呼びに退却し必ず戻って来る、それを繰り返し最後には大群になって襲いかかって来る、こうして幾つもの都市が魔物に滅ぼされたと言っていた。
ここで逃がせば倍以上の数を引き連れて戻って来る、逃がす訳には行かない。
ナイフをいつでも飛ばせる状態にし入口から通路に飛び出す、少し離れた場所に2体を確認した。
俺とエル兄さんで早く・・・はや・・足速!
魔物は物凄い速さで離れて暗闇の中に消えて行く、忘れてた魔物足速いんだったー!
「うわぁ待てコラー!」
「明りを点ける、足止めするんだファナ!」
エル兄さんが大量の明かりを前方に飛ばし通路が明るくなり逃げる魔物の姿が見えた。
「壁よ壁よ壁ぇーー壁!」
魔物の前方に俺の魔法障壁を通路に幾重にも創り出し塞ぐが体当たりで2枚壊され、そこでやっと止まった魔物が俺達の方に振り返る障壁を破れないようだ、俺は安心から座り込んでしまった。
「後は任せろ!」
エル兄さんが両腕を前方に振ると4本のナイフが魔物の腕、そして首を切り落とした。
血飛沫をあげながら倒れる魔物の骸、大きな複眼が俺を睨んでいるように見えた。
「ホントに魔物だ、こんな近くにいたなんて・・・」
まだ一回しか魔物と戦闘していないのにどっと疲れた。
「危なかった・・ホントにもぅ・・・」
「見つけたら先制する方が安全だなこれは」
脱出するまであと何回戦闘になるか、一度でも逃げられたりしたら・・助かる気がしない…
エル兄さんと顔を見合わせる同じことを考えていたのか苦笑いをしながら
「絶対に逃がさない様にしよう、ファナが足止めで僕が止めを刺す、でいいね?」
「うん、分かった」
魔物の巣、ダンジョン脱出が始まった。




