「私」と世界の敵
次の日
ロントと共に街の南側に走って向かった、なるべく人混みを避け目立たないように。
「ちょっと…まて…お前足速すぎ…」
「これでもゆっくり走ってるよ?ロントが遅いんだよ」
これで息切れるとか体力無さ過ぎだろ。
今日はロントに秘密の通路を教えて貰う為に街の南端を目指してる。
そこに子供しか知らない通路が在るのだとか、そうしてると、防壁が見えて来た。
久しぶりに見たなぁで、どこだろ通路
「そろそろだろ?どこにあるんだ?」
「大きな声でダメだろ、こっちだ」
向かう先に在る空き家は防壁際であまり人通りも無いし少し薄暗くて怖いよ。
そしてロントは周りに注意しながら空き家の裏側に周って行った、これ不法侵入じゃ…まぁいいか
そこは樽やら木箱土嚢等が乱雑に置かれたゴミ捨て場みたいな所だった、その内の一つの木箱を動かすと防壁に空いた小さな穴が在った、確かに子供が四つん這いで何とか潜れる大きさだった。
ロントはさっさと潜り抜けて行く、俺も後を追う様に潜ると防壁の外側は茂みに隠れてた。
初めての防壁の外、そこは森というより林かな?低木も多く結構奥まで見えた。
そういえば林や森とかも初めて見るような気がする、防壁の中だけが俺の住む世界だったと再確認させられた。
木漏れ日が揺れるように光輝きとても綺麗だ。
緑の香りも色彩も深く濃い。
「ロント、ありがとな、とっても綺麗だ」
満面の笑みだろう、俺ちょっと感動してる。
「お、おう、いいって・・・」
少しの間その風景を見てたがロントが
「あんまり外に居られないからベリー採りに行こうぜ」
「なんで?」
「日が高くなる頃見回りとかあるんだって言ってた」
そりゃそうか害獣や魔物が居る世界だ、衛士の見回りもあるよな。
ロントについて行くと沢山のベリーが実っていた、取り放題だ!
と思ったがあんまり採るなよと釘刺された、他の子も来るかららしい、この前貰った分くらいを布に包んで帰る事にした。
少しの間だったけどスゲー冒険をした気分だった、また来よう。
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リガールから少し西を次の街に進む商隊があった、護衛の冒険者が荷馬車を囲う様に4騎ゆっくりと進んでいた。
「夕方には街に着きますねぇ」
「そうだが気を抜くなよ」
「こんなに見晴らしが良いのに奇襲なんてありませんぜ」
少し南に離れたところに林が在るが、辺りは草原で見晴らしが良かった、ここで奇襲は難しいと思える。
護衛の冒険者たちは少し気を許し過ぎな感はあったが辺りの監視を行っていた、すると、
「隊長、南の林に人影があります、どうしますか?」
隊長の男は馬を南側に寄せ林を見渡す、確かに人影が在った、だが少しおかしい。
ゆらゆらと足取りが覚束無い、怪我でもしているのかとも思えたが、盗賊の罠の可能性もありこちらに向かって来ないのであればそのまま通り過ぎることにした、あくまで商隊の護衛が仕事であるのだから
「ふむ、このまま進むぞ、周囲に警戒しろ!」
この時冒険者たちは気づかなかったそれが人で無い事に。
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あれから何回かベリーを採りに行った、街の外に出るという行為の罪悪感が薄れ散歩にでも行くような気分になってたんだ。
遊びに行くようにロントと秘密の通路に向かう約束をしている。
朝食を取り、出かけると伝えるとお父さんに少し抱き着いてから家を出る。
「行ってきまーす」
「はい、いってらっしゃい、日が暮れるまでには帰ってね」
何時もと同じ朝、ロントと待ち合わせをして走って向かう。
秘密の通路を潜り、辺りを確認する、よし人影無し!
偶に他の子とも会うが顔を隠すように皆ササッと帰って行く、悪い事してるっていうのが解ってるんだと思う。
いつもの様にベリーの群生地に向かい布に集めていく、
・・・ガサ!
林の奥で葉が擦れ合う音がした、思わずビクッと身が縮む、あれロントが居ない?
「おい、ロント脅かしっこ無しだろ」っと小声で音のした方に声を掛けたが返ってこなかった。
・・・ガサガサ!
低木の茂みから人影が出て来た、いや、人らしいモノが出て来た。
黒い外観にボロボロの皮鎧を被るように纏う、”魔物”がそこに居た。
俺はそれがナニか最初解らなかった、第一印象が”二本足の大きな蟻”だったからだ。
黒い殻に2メートル近い高さ、頭部には大きな複眼、巨大な顎に何か咀嚼しているように動く口内、6本の細長い手足でその2本の腕に棍棒と、折れ短くなった剣を持っていた。
え・・・何これ・・・俺は完全にパニックになってた、目の前の魔物を理解できない。
魔物は辺りをうかがう様に頭部を振り、顎を鳴らしてゆっくりとこっちに向かってくる。
やばい逃げなきゃ逃げなきゃ・・・頭では理解しているが足が体が動かない、震えが止まらない。
「ファナ!逃げろ早く!」
ロントの叫び声が聞こえた、ハッと振り返るとロントが木の棒を構えて魔物を睨んでた。
その声を聴いて少し動けるようになった体で少しずつ少しずつ、魔物から離れるように後ずさる、ロントの側まで来ると
「ロント逃げよう、走って衛兵の居るとこまで逃げよう」
「アルドーさんが魔物は足が遅いって言ってたし・・・隙を見て逃げよう・・・」
そうだ、魔物は足が遅いって言ってた、だが体が言う事を聞かない足は震え息苦しい。
ロントも同じように苦しそうな呼吸をしていた、どうすればいいんだよ。
魔物は首を傾け俺達を見てる、何か思案しているのかピクリとも動かない、その時ロントが持っていた木の棒を魔物の頭部めがけて投げた、が少し外れた方向に飛んでいく。
魔物は驚きもせず飛んでゆく木の棒を顔で追っていく、
「今だ!」
俺達は走り出した・・・・つもりだった。
全然前に進まない、足取りはとても走っている状態では無かった。
空を切るように腕を動かす、走れよ、走ってくれ。
振り返ると魔物は逃げる俺達をジッと見ているようだった、逃げ切れる?そう思った時、魔物は武器を持たない腕を地面につけ四つん這いで追いかけて来た。
「き・きた・・・う・・うわぁぁあぁ」
悲鳴を上げる。
このままじゃ逃げ切れない、ロントも悲鳴こそ上げないが顔は蒼白になり涙が流れてる、このままじゃだめだ・・・
別に英雄願望とか・・・・思ってた訳じゃないんだけどなぁ・・・
俺は走るのを止め魔物に振り替える
「ロント走れ衛兵呼んできてくれ、頼んだぞ!」
ロントも立ち止まり叫ぶ
「ダメだ、走れファナ死んじゃう、殺されちゃうよ!」
「ばーか、俺のが足速いし!ちょっとアイツの気を引いたら全力で逃げるから!」
俺は笑顔を向けたが、たぶん引き攣ってる。
ロントは泣きそうな顔で動かない、仕方ないごめんな後で謝るから、
「お前足遅いんだから!先に行かなきゃ、俺も助からなくなるんだよ!」
ロント拳を握りしめ悔しそうな表情に歪む。
魔物が近づいてきた、足元に有った枝を拾い叫びながら無茶苦茶に振り回すと魔物の動きが止まった。
「いけ!ロント走れ!」
ロントがやっと走り出したのを見たらスッと落ち着いて来た、ハァ…
魔物は立ち上がり俺を見てるようだ、ロントを気にしてる様子は無いか。
俺が動くと追う様に魔物の体が動く、自分の鼓動が耳に鳴り響く、魔物が頭を少し下げ構えたような姿になった、あ・・・・
とっさに頭を下げるとそこに空を切る音と共に折れた剣が振り抜かれてた。
「ひぃ・・」
(無理無理こんなの無理だ!)
尻餅をつきそうになりながら後ずさり、慌てて林の中に駆け込み木の間を縫う様に走り抜けて行く。
足は動く、魔物から少しでも遠ざかりたい一心で振り向きもせず走った。
だが、後ろから魔物の木にぶつかる音と共にガチガチと顎を鳴らす音が耳に響いてくる。
(何で引き離せないんだよ!魔物は足遅いって…アルドーさん!)
少し開けたところに出た瞬間、背中に衝撃と激痛が走り地面を転がるように転倒する。
魔物の投げた棍棒が俺の背中に衝突したのだ、背を逸らすような姿勢で動けなくなり余りの痛みに息が止まりそうになる。
「ぐぁ…いだぃ…あがぁ……」
逃げなきゃ…痛みに耐え体を起すと目の前に魔物が居た、
「あ…なんで…俺……」自然に涙か流れ落ちる。
魔物が嬉しそうに顎を鳴らし折れた剣を振り上げた。
(あ、これだめだ、ごめんなさいお父さん、お母さん…)
左肩から右脇腹に振り抜かれた剣は俺の体を引き裂き目の前を赤い雫が舞う。
「あああぁぁあぁぁぁああ」
血の臭いしかしない、何かが体を這う様に流れてゆく。
剣が折れていて浅かったのか致命傷にはならなかったが、今まで経験したことの無い痛みに”死”が思考を染め上げる。
仰向けに倒れると青い空が見えたが、それを隠すように魔物が覗き込んできた。
(嫌だ死にたくない!、死にたくない!、死んでたまるか、お前なんかに殺されてたまるか!!)
ジタバタともがく俺に止めを刺す為に片足で俺を踏み抑え、両手で折れた剣を振り上げた、その時、俺の目の前が真っ白に染まる。
気が付くとロントと衛兵が居た、何か言っている様だけど聞こえない。
霞む視線の先に焼け焦げた魔物が横たわってた。
ロントが涙と鼻水でクシャクシャな顔になってる
(何泣いてんだよ…ロン…ト…魔物……衛兵さんが倒した…?助かった?ロントありがと...な...)
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天界
『今日のお仕事も終了です、さてファナさんは…ブフォ…エ…何でここに居るんですか?』




