そんな乙女ゲームで大丈夫か?
この乙女ゲームはイベントが起こる期間が設定されていて、それ以降に接触してもイベントが起きない。まあ、これは現実世界なのでもっとランダムに出来ているのかも知れないが、自分の知る経路としては4月にイベントを起こした攻略対象は「フラグが立った」状態であり、以降の5月、6月と月に一度発生するイベントを全てこなしていき、2月のバレンタインでの告白でEDを迎えるという、非常にオーソドックスな形式のゲームだ。
複数キャラを並行して攻略することも出来たが、夏休みイベントなるものの発生と共に固定ルートへ振り分けられる。
そして生徒会長とのイベントは、お勉強デートだ。
猛勉強の末に主人公は生徒会長と同じ大学に合格する。
恋人と学歴の二つがセットになったお得なコースといえるかも知れない。
「恋人は別れるかもだけど、学歴は一生消えないもんね」
それはいい、だがしかし。自慢じゃ無いが勉強は大の嫌いである。
二度目の生を受けてなお成績は中の下。
これでも一応は二度目の受験勉強なのである。頭の良い人は一度目の受験勉強でポンと良い成績を叩き出すものだが、自分は2度目の受験という、他の人に比べて遙かに優位な立場に居るはずだというのに、全くそんな事が感じられない成績なのだ。
そして、猛勉強の中でラブラブイベントは月に一度のペースでしか起きない。
繰り返そう、一ヶ月猛勉強した中でラブラブなシーンは一度しか起こらないのだ。
そして、生徒会長ルートだと校舎の屋上から飛び降りなければならない。
飛び降り自殺をしようとしている生徒を助けようとして代わりに落ちるという展開で、地面に人型のクレーターが出来るが本人は膝のかすり傷のみ、というギャグ展開なのだが…………
「私、どこまで出来るんだろう……」
ゲームや漫画の世界ならギャグの一環として成り立つ展開かも知れない。
しかし現実ではあり得ない。この世界がゲームの世界ならひょっとしたら無事で生還する事も出来るかも知れないが、そんな事を試してみる為だけに飛び降りとかあり得ない
そんなことしたら一息にゴートゥーヘヴンである。
出来るかどうか試してみるのも危険な所業をクリアーしなければ付き合えない男性とか、ハードル高すぎである。
正直一つイベントをこなしただけでヘロヘロだ。主に精神がヤバイ。
でも生徒会長格好良かったよなあ。
勿論恥ずかしいのもしんどいのも猛勉強も嫌なんだけどね、でも生徒会長格好良かったなあ。人一人乗った台車をあんなに軽々と押していっちゃう台車捌きとか、流れる汗とか、目的地めがけて走る真剣な表情とかドキドキしちゃうよね。さすが乙女ゲーのキャラだけあって声も涼やかで、ホントに格好良かったなあ。
「遊園地でも行って、バンジーの練習しようかな」
うん、ほら、乙女ゲーの世界だしさ、何とかなるんじゃない?
ヒロインが死んじゃう乙女ゲームとか無いよね。
大丈夫、きっと。
…………多分。