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The episode of Lancelot

兄より優れた弟など存在しない。


最初にそういったのは誰であっただろうかはわからないが、少なくとも彼の兄たちは

そう思っていた。――訂正しよう。そう思いたいようだった。

彼は幼少時より何をやっても人並み以上に出来た。勉強も、魔法も、剣術も、そして恋愛も。

6歳になったころ、初めて社交パーティーにでた。妾の子で3男ということと兄たちのやっかみにより、

中々出してはもらえなかったが、6歳とは思えないその明晰さに遂に父親は許可を出した。

その時の兄の悔しがりようを思い出すことは彼の数少ない楽しみだ。


彼はそこで、信じられないものをみた。連合国の1国でありながらヒト族至上主義のこの王国で、控えめに見ても未開の地の蛮族、

正直に言うと白い毛の熊の親子が浴びるように酒を呑んで笑っているのだ。兄たちは軽蔑した目つきで「平民が」「獣人が」

そういっていたが、なぜだか彼はその小熊に強く惹かれた。



「…というか未成年がそんなに酒呑んでいいの?」

思わず口に出た。彼らの最初の会話は果てしなくどうしようもないものであった。

彼らは社交界のたびに多少話しかけることが増えた。『美男と野獣』後にそう呼ばれるコンビの幕開けだった。

ある日、些細なことで彼らは喧嘩になった。お互いに理由は覚えてもいない。

初めてだった。初めて同年代に、引き分け…いやギリギリ負けかけたのは。


それからは、貴族主義の家の制止を無視しても、よく絡むようになった。小熊の父親が死んだ後も。


彼は兄たちは嫌いだったが父親と母親は好きであった。母も父もヒトなのにどうして自分は鳥人なの?と疑問に思ったこともあったが、

両親と血がつながっていないことが怖くて言い出せなかった。


1年が過ぎたとき遂に彼に弟か妹ができることになった。彼はずっと、母親エレインの近くにいるようになった。

弟の時と妹の時で一生懸命母親と名前を考えた。たぶん、弟だ。だからアーサーにしよう。彼はそういっていた。

彼は夜遅く目が覚めたとき、たびたび母親を父親がどこかに連れ出すのが見えた。ませた彼は両親がデートしているんだと思った。

あるときから彼は母親に逢えなくなってしまった。彼は母親を探し始めた。相談に乗った小熊も手伝ってくれることになった。

彼が屋敷を探していると秘密の抜け穴があった。興味本位もあり、彼はその抜け穴を通っていくことにした。小熊には入口の見張りをしてもらった。

彼は通路の先に遂に母親を発見した。身の毛もよだつような悲鳴を上げる母親を。体が動かない。声も出ない。しかし、視線も逸らせない。

苦しみ続ける母親の姿をただ、見続けた。だんだん母親のお腹が異常に膨れ上がる。驚くほどに膨れ上がったお腹を、異様に細長く鋭い

まるで『蜂』のような腕が内側から切り裂くと、赤子の体に、虫の手足をもつ奇怪な『弟』が産声をあげ、まるで水の中で溺れるように喘ぎ死んでいった。

「あははははっはは。あ~いいところまでいったんだけどなぁ。残念だよ。愛しのエレイン。」

母親の横で耳障りに、しかし彼に似た澄んだ声で笑うその男は、彼の 『父』 だった。


彼の想像するこの世の悪の具現がそこにあった。その血が自身の半分を流れているということが彼の自傷癖を生む原因になる。

朦朧とした意識の中ようやく秘密の抜け穴からでた彼の焦燥しきった普段の美しさも無くした表情に幼馴染が、名を呼び続ける中、

彼は意識を手放した。消える意識の中、長年疑問であった、彼がなぜヒト族の両親から鳥人の『ような』子として生まれたかわかった気がした。


それから彼は、より、魅力的な少年になった。少なくとも表面上は。笑顔の仮面で憤怒の表情を隠し、いつだって優雅に貴族らしく振る舞った。

彼は実績を示し続けた。絵画、歌謡、馬術、魔術、 そして『科学』。その結果が身を結び、9歳の誕生日、彼は遂に父親から呼び出される。

私の研究の後継となれ。

彼は内心嘔吐しそうになった、目の前の悪鬼を刻み殺してやりたくなった。しかし長年身に着けた笑顔の仮面で

「はい。ありがとうございますお父様。」


そう、答えた。ここで父親を殺しても悪夢は終わらない。彼はこの国の最暗部まで潜り、全てを壊す決意をした。

彼の最初の仕事は母親を殺した実験と同じであった。『ヒト』の中に『ヒト』以外の因子を入れる実験だ。彼が参加した頃には研究が完成する目前の段階であった。

父親に命じられ、何かの未来を信じた目をしている妊婦の両手に顔を隠して手錠をかけ、実験室へと連行した。


妊婦はただ一言、

「あなたみたいな子供が」

そうつぶやいた。


ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ

ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ

ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ


そう、何度となえたことだろう。しかし手錠をかけたのは彼自身だそんな言い訳が通用するはずもないことは彼が一番理解していた。

呆然としながらも彼の耳には大人たちの悪意が聞こえてくる。

曰く、子の父親は王らしい。

曰く、たとえこのような形でも、王に愛されたいらしい。

曰く、子の未来の為に死ぬ覚悟はできているといった。らしい。

曰く、子が無事生まれた時に女が死んでいたら『アーサー』と名付けてほしいらしい。


その姿が、その姿がどうしようもなく自身の母親と重なった。


結論から言うと母子ともに生存して出産という名の人体実験は終わった。子は無事に王子として認められた。

その日から、産まれた王子は彼の罪の象徴となった。


それから何年もの時がたち、王子が公の場に現れるようになったとき、彼に知られぬよう懸命にサポートを続けた。

社交界の華と呼ばれ、女性たちに笑顔を振りまくことに懸命な自分が、まさかそのようなことをしていると、王子は思わないだろう。

王子が人魚姫と恋に落ちた時だって懸命にそれを隠ぺいした。



この国の暗部を潰すための証拠が、力が、賛同者が集まった時、彼の腹心に証拠と後の行動を示した置手紙を残し、

彼は残された唯一の宝物、護りきれなかった王子と幼馴染を護るために、

彼を葬りたい兄達さえをも利用して魔王討伐の旅に出ることにした。





背景親愛なるレジスタンス同士諸君へ

関係ないことだが、私を追い出して兄たちは喜んでいるだろうね。いや、諸君らには全く関係の無いことだがどうしても皮肉っておきたくてね。


本題に入ろう。この国はもう腐りきっている。腐った膿は出さなければならない。本来ならこの国ごと葬り去りたいのだが、ここはアーサー王子の国だからね。

私はアーサー王子に反旗を翻したくはないんだ。実に不敬だろうが、きっと『弟』が生まれていたら彼のようだったかもしれないとずっと思ってきた。

だが、万が一、いや億が一の話だが、仮に、仮にアーサーが還ってこれなかったときは諸君らでこの国ごと潰してもらいたい。

できれば、なるべく血は流してほしくない。この国は既に血を流し過ぎているし、きっと優しいアーサーは悲しむと思う。

あぁ、そうでした。それとくれぐれもレディを傷つけるようなことはしない下さいよ?      皆のアイドル ランスロットより

仮面を外した彼の心には何もない。

故に、白の騎士

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