第十一話 或いは一つの始まり
そして彼女は一匹になる
巣の崩壊を見せつけられ、恐怖と、無力と罪悪感に押しつぶされたデュカリスには
家族の最期を見なかっただけでも救いはあったのだろう。
しかし幸か不幸か、もちろん不幸なのだがデュカリスには悔やむ時間はあまりなかった。
横のメリッサと比べると明らかに自分の高度が落ちてきている。おい、オスだったら気合入れて。何やってんの。
そう言おうとして振り向くと、翅が若干変な向きに曲がっている。恐らくプースリーをかわしながら離脱したときであろう。
私たちの異変に気付いたのかさっきからメリッサかわたわたとこちらを覗いており、そのせいで速度を落としてきている。
それにしてもメリッサの慌てっぷりは異常だ。まぁ先程家族を喪った―――最期をみとったわけではないが絶望的であろう。
その状況の後ならわからなくもないがそれにしても異常すぎる。やがて速度を落としたメリッサとの距離が近づくと何かを言っているようだった。
「――ろ う―――――りが」
よく見ると目線も私から若干ずれている気がする。そう思って振り向くと、
やられた。恐らくあれは鳥系モンスターだ。どういう理屈かわからないが鳥系モンスターには昆虫系に対して有利なものが多い。
それに加え今の私たちは幼虫とそれを運ぶ文字通り手も足も出ない成虫の2対だけだ。このままでは1匹の鳥如きに全滅させられてしまう。
―――私も姉らしいことやろうかな。
「いそいで ありすねえたまを しなせるつもり?」
「落ち着きなさいメリッサ。ここは二手に分かれましょう。そこのオス、―――くれぐれも妹を宜しくね。」
「御意」
「かってに―――そんな」
妹を抱えたオス蜂は今まだの遅れを取り戻すが如く遠くへと羽ばたいていった。
さて、精一杯時間を稼ぎますか。
時間としてあっという間であった。妹の姿が見えなくなる程度には引き離せたが既に敵は目の前まで来ていた。
「謝るつもりは無い。一緒に死んで」
もとよりそのつもりとでもいうのか、遠足の時から無口だったオス蜂は今回も特に反応を示さず主の敵を見据えた。
嘴を広げ襲いかかってくる敵に対し己の死を意識した。そうすると不思議と姉たちとの楽しい日々が浮かんできた。
これが走馬灯かと納得していると、急に鳥が暴れだした。薄れる意識の中で目をぼんやりあけると、
脇腹をざっくり抉られたオス蜂が、『一刺』報いたのだ。
やるじゃん。前世がオスだったせいで自分がオスの卵を産むのは絶対に嫌だったが、不覚にも少しはかっこいいと思ってしまった。
そのまま、デュカリスの意識は途切れた。
melissa
あのときのありすねえさまのめはふぉみねさんのとおなじだった…。
あははけっきょくいちばんよわいわたしだけがいきのこっちゃった。
ははのあねのうまれるはずだったいもうとたちのいしをつぎわたしがていこくをさいせいする。
そ~してやつらをころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしてころしつくしてやる。
そのためには、たくさんたべてせいちゅうになってすをつくってたまごをうんで―――うん、さいしょのひめのなまえはねえさんのをもらおう。
ふふふやることがいっぱいね。
「あなた、もちろんきょうりょくしてね」




