表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の罪 無辜の灰  作者: 神代きい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/31

Ⅲ・夢の罪8

※若干残酷な描写が含まれています。

     ◆ ◇ ◆


 長い長い治世を維持してきたあの男は、老いによる衰えと死を人知れず恐れていた。その最中に自分は産まれたらしい。――それも、計算された上で。

 衰えていく魔力と寿命の補填に、男は強いチカラを持つ魔族の血肉や霊力を喰らっていた。それは血族や自身の子も対象となった。その中で、男は気付いた。自身の中にも在る古の魔王の血が最高の糧となり得る、と。

 極上の糧を作り出すために――。男は魔王の血を濃く持つ者で交配を繰り返した。そうして作り出された最高傑作が、自分だった。

 だが…。途方もないチカラを持つ息子の生誕に男は、いずれこの息子が自分を弑するのでは、と恐怖を抱いたようだ。男は産まれて数刻もしないうちに、息子を城の地下深くにある暗闇の石室に封じた。

 何故殺さなかったのか、その答えは簡単だ。古の魔王と同じ容姿の自分を殺す事に躊躇したためと、この極上の獲物を無駄に捨てる事を躊躇ったため。そのために男は、自分を他者の介入も外部の刺激も皆無という、ただ存在するだけの状態にした。


 ――命としてではなく、餌として“飼って”いたのだ。


 自分があの暗闇に何年在たのか、それは未だにわからない。わかっているのは、あの頃の自分は自分という存在すら理解していない“モノ”だった、という事だけだ。

 そんな自分を、あの男の逆臣達が暗闇から引き出した。そして彼らは、空っぽの状態である自分に、知恵と知識と感情を与えた。全てが新鮮で、時に恐ろしく、時に嬉しく感じたものだ。

 清々しい風が好きだった。この風は何処から来て何処へ行くのか、そんな他愛のない空想がとても楽しかった。

 本を読む事が好きだった。陰謀を画策する取り巻き連中とは違い、書物は嘘偽りなく自分と向き合ってくれた。


 そして――。



 ――…瞼の向こうに、光を感じる…。


 幼い頃は光が苦手だった。当たり前のように闇に慣れた身心は光を拒み、頼りなく揺れる蝋燭の明かりにさえ怯えていたほどだ。自分には光の中に居場所などない、と思っていた。

 だが――、今は違う。

 森の中で見上げる木漏れ日が好きだ。雲の切れ目から射し込む陽光が好きだ。唯一無二の友が纏う白き光には安らぎさえ感じる。魔王と呼ばれた自分には滑稽な話だが…、そんな自分が不快ではない事も事実。

 瞼の向こうの光が温かい。まるで目覚めを促すかのよう…。



 タオはゆっくりと目を開けた――。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ