プロローグ これは夢よね? 夢って言いなさいよ!!
「さみしい」
さびれたぼろ屋の片隅で、膝を抱えて座り込む女性の姿があった。彼女の名前はドーラ、つい先日まで公爵令嬢だったが、今や路銀なしへそくりなしの一文無しである。
「どうやっていきていけばいいの、おとうさま。おかあさま」
ドーラの象徴ともいえる垂れたオレンジ色の髪が心なしかくすんで見える。表情もくもり空のように沈んでいた。
残念なことに、彼女は今日をもって両親から勘当を言いつけられ、実家を追い出されてしまった。
そして、このぼろ屋は両親がせめてもの情けに、と用意したものである。
「ミオリー……」
夜食を用意なさい。そう言おうとして、この部屋には自分だけしか居ないことを思い出した。すべては自業自得であり、ドーラが積み重ねた悪さゆえのもの。
「ミオリーは辛いの苦手なのに、ハーブティーにトウガラシ仕込んで飲ませたから?」
ジョロキアもびっくりの辛さを誇る自家製トウガラシをハーブティーに混ぜて、辛いのが世界一嫌いなメイドのミオリーに飲ませたから。
それはある。
「行商人の態度がむかついて追い出したから?」
ドーラの父であり、公爵家当主が懇意にする旅商人に、えっちな目で自分を見ていると被害妄想して、強引に家を追い出して商人をめちゃくちゃ怒らせたから。
それもある。
「カイルをパーティで振ったから?」
王室主催のパーティで多くの貴族が集まる中、王の近衛騎士であり、ハイネス王国第一王子であるアレキサンダー王子の護衛、兼幼馴染のカイルをこっぴどく振って泣かせたから。
役満である。
「アレクのカバンに雑草たくさん詰めたのバレたから?」
幼少の頃、イチョウみたく鼻がひん曲がりそうな匂いのする雑草を、アレキサンダー、他称アレクのカバンがぎゅうぎゅうになるまで詰め込んで、匂いが取れなくてアレクを泣かしたから。
あまりに不敬、生きているのが奇跡である。
「うう、さむい……」
ドーラは傷んだフローリングに寝転がって、明日まで寒さをやり過ごそうとした。しかし、硬すぎて眠れない。
仕方がないので気晴らしに天井のシミを数えた。毎日外を走り回るお転婆なドーラには、あまりにつまらなさ過ぎた。
「もうおわりよ、わたしのじんせい」
諦めも早かった。暖炉はあるのだから薪でもくべれば暖かさは手に入る。しかし、ドーラは散々甘やかされた元公爵令嬢。サバイバルスキルは三歳児とどっこいレベル。
「……やりすぎちゃったかな」
当たり前である。しかし、散々甘やかされて、周りが皆いい奴ばかりだったドーラは知らなかった。
もう少し人に優しくあれたなら、もう少し人を労わることができたなら、ひとり寂しく余生を生きることもなかったかもしれない。机の上にぽつんと置かれた非常食で飢えをしのぐこともなかったかもしれない。
ドーラ・フォン・ブリュンヒルデ。
ハイネス王国の由緒正しきブリュンヒルデ公爵家の次女。
しかし、彼女は日頃のやらかしと性格の悪さですべてを失ってしまった。
そんな彼女を、ゲームクリアしたプレイヤーはこう称する。
悪役令嬢と。
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