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東方逆接触  作者: サンア
29/66

ダンジョン話その四

萃香「あきらめた」


天子「ごめんな」




 スライム。ファンタジー系のRPGなら大半の作品に登場する雑魚敵の代表。


 可愛らしくデフォルメされたデザインもあれば、おぞましい表情で睨み付けてくるデザインもある。


 この遊び――以後Dゲームと呼ぶが――においてのスライムは、スッキリとした球体で、行動の度に形状を変えるというありきたりな雑魚敵だ。もちろん弱い。


 ただ、このスライムが落とす“スライムの核”という“食材”は非常に重要なアイテムだ。


「さっきの敵は良かったね」


 焚き火の前にあぐらをかいた萃香の言葉に天子が顔を歪めた。


「冗談! あんな気持ち悪いのもうごめんよ!」


 魔理沙も天子の同意といった表情で頷いている。天子の言ってるあんな気持ち悪いのとは、先程倒したアンデットモンスターの事だろう。確かに生理的に嫌悪感のある見た目をしていた。


「そうかい? 愉しかったけどなあ……」


 萃香にはそういう嫌悪感はなかったらしい。人と鬼の感性の違い……いや単純に戦闘狂なだけか。


 焚き火には鍋が置かれており、中には煮えた褐色のスープに根野菜や葉野菜が浮かんでいる。


 傍らには高さが膝ほどの小さな木の机があり、そこにまな板とナイフ……そして半透明の歪な球体が乗っていた。手のひらほどの大きさだ。


 机の前に座った彼がナイフでそれを一口サイズに切り分けていく。弾力のあるゼリーのような感触だ。


 霊夢がそれを指でつまんで顔に近付けた。


「匂いとかはないわね……若干湿ってるけど、肉汁? とかも出てないし」


 本当に食べられるの? 霊夢の質問に天子は笑顔で大きく頷いた。


「私は酒場で食べたんだけど、美味しかったわよ」


 美味しかったからレシピを買って、材料が揃っていたから彼に作るよう頼んだのだ。なんでも、食事というものがシステム上非常に重要らしく、その為か入手アイテムは食材が多い。


「だったら酒場で食べればいいんじゃないの?」


 どうせ戦利品の整理――売却――をしなければならないのだから、城下町に戻らなければならない。城下町に酒場があるのだからそこで食べればよい、と霊夢はいう。


「外で食べるのってなんだか楽しいじゃない?」


 天子が即答すると魔理沙が吹き出した。


「え……おかしい?」


 きょとんとした顔で魔理沙を見る天子。魔理沙は首を振って否定した。やや可愛らしい返答につい吹き出してしまったらしい。


「出来たよ」


 彼は白い皿に盛り付けられた“スライムと野菜のスープ”を天子に手渡した。スープを吸ったのかスライムが心なしか大きくなっている。


「これよこれ! 酒場で見たのと変わらない……いえこっちの方が美味しそう!」


 無邪気な笑顔でスプーンを受け取ると、他を待たずに食べ始めた。魔理沙はそんな天子を素直で可愛いなと思った。


「あら……本当、美味しいわね、スライム」


「でしょ!」


 スライムを口にし、感想を述べた霊夢に即座に反応する天子。共感されたのが嬉しかったらしい。


「ええ、火を通すと弾力が強くなるのね。噛みきる感触が気持ちいいわ。豆腐に物凄く弾力があったらこんな風になりそう」


 どうやら気に入ったらしく、嬉々として感想を話し出した。それを聞いて食べるのをためらっていた魔理沙が、疑いの眼差しでゆっくりとスライムを口へ運んだ。


「……美味しい」


 意外だったのか驚いている。霊夢が疑われた事に怒ってか少し睨んでいたが、気付かない程度にはスライムの味を堪能していた。


「美味しいのはよくわかったけどさ、どういう効果があるんだい?」


 食事の後、萃香が天子にもっともな質問をした。天子は指を顎に当て考える素振りを見せた。説明が難しいのかしばらくすると唸りだした。


 萃香は溜め息を吐いて、洗い物を済ませた彼へ視線を向けた。洗い終わった食器をタオルで拭いて水気をとると、食器が忽然と消える。食器というアイテムが“持ち物”に戻されたのだ。


 冒険者カードの画面から“持ち物”を選択するとアイテムが手元に召還され、敵を倒したり宝箱を開けたりして入手したアイテムは自動的に“持ち物”へと収まるようになっている。


 特定の行動をしないと戻せないアイテムもあり、例えば食器は使い終わった後に洗う事で“持ち物”に戻る。洗わずに放置するのも可能だがメリットはないし、洗わないというのも何だか気分が悪い。


 自分が洗う訳でもないのに、と萃香は苦笑いをこぼした。


「さあ行きましょ」


 彼が後片付けを終えたのを確認して霊夢が立ち上がる。はじまりの平原に入ってからもう数時間は経ったろうか、十数の戦いをこなし、数個の宝箱を見つけた。“持ち物”の容量は無限に等しいが、一々使わないものまで保管しておく必要はないので売り払おう、と霊夢。


 蒐集癖のある魔理沙が少し渋ったが、Dゲームにおいては霊夢の判断が正しい。資金を集め、装備とアイテムを充実させるのが攻略の近道となるからだ。


 日も落ちてきている。夜になれば出現する敵が変わったりするようだが、先程のアンデット――泥ゾンビという見た目のままの名前だそうだが――より強い敵はいないらしい。酒場で得た情報だから間違いないと天子。


 その天子が立ち上がった。唸りは止み、表情も明るい。質問の答えが見つかったようだ。


「戦えばわかるわ!」


 と言うや否や歩き出した。現在地は野営場であり、敵が出現しないポイントだ。戦うのであれば野営場を出なければならない。


 一応帰り道の方向へと歩んでいるが、これから帰ろうとしていた事などもう忘れているだろう。


 彼と萃香がそれについて歩き始めると、霊夢は大きく溜め息を吐いた。


「戦ったらすぐ帰るように言うから、な?」


 魔理沙がフォローしながら霊夢の背中を押すと、渋々霊夢が歩き出した。


 野営場を出て数歩もすると敵が出現した。初めての戦闘で出現した獣――影ウルフである。体表が黒く狼のような見た目からそう呼ばれているが、実際は狼とは全く異なる種族。という戦いには参考にならない情報を冒険者カードで閲覧したのを思い出しながら、天子は腰の剣を引き抜いた。


 各々既に武器を構えている。忽然と現れるモンスターにはもう慣れたらしい。天子など盾を背中につけたままだ。軽くあしらえる程度には実力を身に付けたか。


 二体の影ウルフが左右から天子に飛び掛かる。天子は正面にステップを踏んでかわす。


 影ウルフはお互いぶつかって地に落ちた。それをすかさず萃香がサッカーボールのように蹴っ飛ばす。


 それはまさにサッカーボールのように……ごうごうと風に悲鳴を上げさせながら、“数十メートル”ほど影ウルフをぶっ飛ばした。


 思わぬ出来事に萃香の目が点になった。現実なら出来ない事ではないが、この世界ではある程度力が制限されているはずだ。影ウルフは血反吐を充分に撒き散らし、吹っ飛ばされた方向へ血の道を描きながら消えていった。


「これが食事の効果よ!」


 なるほど、わからん。


 影ウルフは同胞の死に様に驚いたのか、目の前にいる萃香を危険と認識したか、萃香の後方へ走り出した。萃香はある種の放心状態でそれを見逃し、天子は「必要なかったわね」と剣を収めている。


 狙いは魔理沙だ。そのまま逃げようとしてたのかもしれないが、進路上に魔理沙が立っていた。


 霊夢が彼を庇ように前に出た。仮にこの影ウルフが彼を狙っていたとしても、初戦のように“取り乱したり”はしないだろう。


 霊夢は拳銃ではなく、自身の腕の長さほどの長銃を携えていた。初期装備として入手した物だが、こちらの方が性に合うとのこと。


 ただ構え方は銃のそれではない。銃身を両手で握り、後方に大きく振りかぶり、飛び掛かった影ウルフの顔面目掛けて野球の打者の如く振り抜いた。


 大きく鈍い音が響いた後に、枯れ木の束を踏み締めたような音がした。銃底が影ウルフの鼻骨と牙を砕いたらしい。萃香のように大袈裟にはぶっ飛んでいない。せいぜい一メートルほど飛んだというより落ちたといった感じだ。


 影ウルフは口と鼻から血を流してピクピクと痙攣を繰り返し、悲痛な鳴き声を上げると消えていった。


「ま、また何も出来なかったなあ……」


 少し寂しそうに魔理沙が呟いた。



「あれが食事の効果ねぇ」


 城下町の雑貨屋の前で天子と萃香が話していた。雑貨屋には他の三人が入ってアイテムや装備の売買をしている。


「私も最初は驚いたわ。苦戦してた敵が簡単に倒せちゃったし……でもあんなにぶっ飛ぶとは思わなかったわ」


 天子は自分が食事の効果を実感した時を語った。盾による攻撃で、食事前は効果的な攻撃を与えられなかった敵を壁に叩き付けたとか何とか。先程の萃香に比べたら地味だ。


「店のと手作りとで違うのかしら? それともレベル? 職業かな……場所も違うしなあ」


 天子がぶつぶつと悩みだした。会話が中断したのは残念だが、邪魔してやるほど無粋でもない。


 十分ほどすると霊夢達が出てきた。表情から察するに、中々の収益となったようだ。装備の新調やアイテムの補充を済ませてこの表情なのだから。


「装備が高く売れたわ」


「なんかもったいない気分だぜ」


 霊夢とは対照的に魔理沙の顔は浮かない。


「いいじゃない新しい装備買えたんだから」


「それは……そうだけど」


 よく見ると、魔理沙の靴と本の色が変わっている。細部の細かな所にも変化がありそうだ。


 霊夢の装備も大きく変化はないが、靴の形であったり帽子の色合いに変化が見られる。


「もっと大胆な変化はないのかね?」


 彼はそのままだ。というのも、彼の装備品は使えば使うほど強化されるものらしい。そういう装備は通常では入手難度が相当に高い“レアアイテム”という位置付けになるのだが、彼は“巫女さん”の初期装備としてノーリスクで入手していた。


「萃香のは結構変化あると思うわよ」


 と霊夢がいうので萃香は冒険者カードから装備の変更を選んだ。一瞬の発光の後に萃香の服装が変化した。といっても胴着は帯と肌着の色が変わった程度で、大きな変化があったのは頭。


 銀狼の顔の形をそのまま残した毛皮のフードだ。微かに血の香りが漂う気のする……中々に生々しい装備である。


「気に入ったよ」


 萃香はニコっと笑った。


「じゃ次は宿屋ね」


 ぶつぶつと呟いている天子をみんなが見る。相当集中してるようでこちらに対する反応がない。呼び掛けても無意味だ。


「街の南西よ」


 背後からの声に振り返る。そこにはきらびやかな鎧に身を包んだ少女が立っていた。その少女を中心に、他に三人立っている。


 一人は少女と同じ背丈、足には金属製のブーツ、しかし上半身は白いマントと赤い服、腕には金属製の籠手、背中にはミディアムソードを携えている。


「おにいさーんっ!」


 少女は瞳を爛々と輝かせて彼に飛び付いた。鎧を着た少女が小さく笑う。


 もちろん彼は飛び付いた少女を拒まない。胸に飛び込んだ少女を優しく抱きしめる。籠手がぶつかって痛いだろうに。


「随分、豪華な装備ねレミリア」


 カツアゲしようかしら。霊夢の呟きにビクッと身体が反応した少女――レミリアは冷や汗を流して隣のメイド服の女へ目線を移す。


「勘弁なさって下さいな」


 女はニコニコと笑顔を崩さない。普段の服装と同じように見えるが、靴の先と踵には鋭利な金具が装着されており、太もものホルダーにはナイフが数本収まっている。後ろ腰にはリボンの変わりに二本のショートソード、首に巻いたチョーカーでさえ武器のように見える。


「あんたは見た目以上に重装備ね……」


 メイド服の女――咲夜はスカートを両手でつまみ上げ、お辞儀をした。


「へぇ、色々職業があるんだなあ」


 霊夢の後ろでは彼に飛び付いた少女――フランと、それの御守り役の美鈴が魔理沙や萃香達とフレンド登録をしていた。美鈴の服装は萃香と大きく変わらない。違いといえば籠手の有無、美鈴は武士を思わせる和鎧の籠手を身に付けていた。


「このお姉さんどうしたの?」


 フランが天子を指差していう。


「考え事かなあ」


 彼が答える。


「考え事かあ」


 フランは同調して天子の顔を下から覗き込んだ。


「あ!」


「きゃっ!?」


 すると天子が突然顔を上げた。フランは驚いて彼に飛び付く。


「私の装備!」


 どうも考え事は吹き飛んでしまったらしい。冒険者カードを弄って新しい盾を手にした天子は無邪気な笑顔ではしゃぎ回った。


「あら? あんたら吸血鬼じゃない。吸血鬼もやってたのね」


 しばらくしてレミリア達の存在に気付いた天子が盾を背に戻し、呆れた顔のレミリアへ口を開いた。


「暇してた所に紫がやって来てな。テストプレイ、とやらを頼まれた」


 妖怪らしく力を振るえて楽しんでいるとのこと。


「人里でも普及してるのをご存じで?」


「……あれか」


 咲夜の言葉に魔理沙が人里に見慣れぬ建物があったのを思い出した。好奇心がわいたが、約束があったので諦めたのだ。


「見慣れた顔がいるわけね」


「店員は別よ」


「でしょうね」


 霊夢が買い物をしていた雑貨屋には、どこかのネズミとトラがいたし、城の警備をしてる者には九本の尻尾があった。本人とは違うと確信したのは、彼を見た時の反応だ。本物ならフランのように抱き付いたりするだろうに。


 彼女達に特別な反応はなかった……と思う。若干目付きが違ったような気がしないでもないが、いずれにせよ本人の反応とは違うものだった。


 が、街中を歩く人々の中にも知った顔はあった。妖怪であったり神様であったり幽霊であったりと様々だが、霊夢やレミリア達以外にも参加者がいるのは間違いなかった。


「宿屋に行くのだろう? このレミリア・スカーレットが案内してやる。光栄に想え」


 尊大な口調で胸を張ったのは、一種のお茶目だった。目の前の者達――特に霊夢――に対して偉そうにするつもりなど毛頭ない。


 それどころか、そんな冗談を使える程度には彼らに気を許していた。


「レミリア、その背中の槍も高そうね」


「すいません調子乗りました霊夢様」


 こんなやり取りをする程度には霊夢もレミリアにある種の信頼をおいていた。ただしレミリアの震えは本物である。


 レミリアらに案内された宿屋は軽食のとれる喫茶店と併設にされた木造建築の建物だ。宿屋側と喫茶店側で入口が二つあり、喫茶店のテラスにある白いテーブル席には冒険者や町人などのNPCが食事をしていたり、お茶を片手におしゃべりしていたりと中々に繁盛していた。


 宿屋の入口には小さな看板が吊られており、“かすみ”という細い字が花や小鳥の絵で飾られている。


 宿屋に入るとこれまた見慣れた顔が笑顔で出迎えた。頭に二つのわっかをつけたような特徴的な髪型と肉感的な体型は、なぜだか人妻や未亡人という言葉を連想させた。


 実際設定上未亡人なのだ。モデルにされた本人も含めて。


「フラン、お兄さんと一緒に寝る!」


「ん、いいよ」


 彼は快諾した。実はレミリア達は宿屋をとる予定はなく、夜間にしか現れないモンスターを退治する予定だったのだが……紅魔館に属するものは――とりわけレミリアはフランに非常に甘かった。


「霊夢、構わないかしら?」


「それは彼に聞くことで、彼はもう了承しているわ」


 若干目付きを鋭くした霊夢が淡々と告げた。宿代をレミリアらが負担することでその目付きを幾分か和らいだ。


 案内された部屋は窓際に見るからにふかふかな膨らみをしたベッドが四つあり、中心には花瓶の乗った丸いテーブル、部屋の端にはクローゼットがあった。これといって特筆すべきことのない、清潔感のある普通の部屋である。


「明日どうする?」


 部屋に集まって次の計画を立てようと魔理沙。


「そりゃダンジョンに挑戦よ」


 冒険者カードを弄って複数を重厚な鎧から、パジャマだろうか丈の短いローブのような服に着替えた天子が意気揚々と答える。


 Dゲームには“フィールド”と“ダンジョン”があり、“フィールド”ははじまりの平原に代表される“外”のイメージが強いマップだ。


 “ダンジョン”は対照的に“内”のイメージで、主に地下迷宮や遺跡などのマップとなっている。


 また目的も違う。フィールドでは冒険者の修行や素材集めの意味合いが強く、ダンジョンでは財宝やレアアイテムを求めたり、ゲーム的には古代技術の確保というストーリーもある。


 ちなみにギルドにある機械や冒険者カードは古代技術の賜物だとか。


「フランねっ! お城のダンジョンで四十階まで降りたの!」


 フランの言葉を聞いて天子がギョッとした。天子は同じダンジョンで地下二階に進んだ所で挫折している。


 始めた時期もパーティの人数も違ったのだから仕方ないが、どことなく悔しい思いをした天子はますますダンジョンへの意欲を沸き立たせた。


「すごいねぇ」


「えへへへ……」


 彼がフランを撫でてるのを見ながら、霊夢が口を開いた。


「別にダンジョンは構わないんだけど、ちょっと街を見て回りたいわ」


「あ、私も」


 霊夢の言葉に魔理沙が賛同した。思えばはじまりの平原への最短ルートしか通っていない。


 せっかくの異国情緒だ。旅行気分で味わいたくもなる。


「私はそうさなあ、ダンジョンも楽しみだけど、どんな酒があるのかも気になるね」


 鬼と酒は切っても決して切り離せない関係というか、切ろうとした刃物が粉砕されるほど強固な関係というか……。


 天子は最後の望みと彼を見た。


「じゃあ明日一緒にお出かけしてくれる?」


「いいよ」


 望みが断たれた。


 天子はガックリと肩を落としベッドへ腰掛けた。霊夢や魔理沙はどこで入手したのかガイドブックをテーブルに広げて明日の計画を立てているし、萃香は早々にいびきを立て始めた。


 そんな天子を見兼ねたか、彼が何かをフランに耳打ちした。するとフランは大きく頷き、ベッドから飛び降りると天子のもとへトタトタ駆け寄った。


「ねえねえお姉さん」


「……なによ」


 ゆっくりと顔を上げる天子。やや不機嫌な表情はフランを睨み付けてるようにも見える。


「明日お姉さんも一緒にお出かけしましょ?」


「えっ?」


 思いもよらない提案に呆けた顔になる。しかし流石天子といったところか、頭の中ではあるイメージが浮かんでいた。


 それは、フランを挟んで横並びに手を繋いでいる、何とも子連れの夫婦らしいイメージ。


「ししょ、しょうがないわねぇ~、一緒に行ってあげるわよぉ~」


 天子はデレデレっとした笑顔を浮かべて了承した。


「……」


「どうした霊夢?」


 天子とその前で無邪気に跳ねるフランの方を霊夢はジッと見ていた。魔理沙の声に向き直り口を開く。


「あれが並んで歩いても、兄弟……姉妹にしか見えないでしょうね」


「そ、うだな」


 魔理沙は首をかしげ頭にクエスチョンマークを浮かべた。天子の喜びの原因に気付いてないのだ。これに関しては霊夢の勘が鋭過ぎるのだが。


「言わぬが華ね」


 霊夢は呟いて彼を一瞥した。小さく微笑んでいるのを見て幸せな気持ちになった。


「なあ霊夢……霊夢?」


 自分の言葉に反応しないかと思えば、霊夢は突然立ち上がり、彼に近付いて彼の頬を両手で包み優しく顔を持ち上げると自身の顔を近付け口づけをここで魔理沙の意識は途切れた。



私「最近更新頑張ってるからほめてほめて」


咲夜「よしよし」


私「あれ? フランちゃんは?」


咲夜「幸せな気分をあなたでリセットしたくないから今回はお願い、とのことです」


私「辛辣だなあ」


咲夜「まあまあ私でよければほめて差し上げますから」


私「ちゃうねん、調子乗んなカスとか罵倒されたかってん」


咲夜「またまたぁ、フラン様がそんなことおっしゃるはずがありません」


私「え?」


咲夜「なんだかんだで毎回この時間を楽しみにしていますよ。昨日なんかあなたの話で一時間ほど――」


フラン「やめて!」



私「って感じのデレ期到来お願いします!」


咲夜「素敵ですわ」


フラン「咲夜、そういう時は頭を踏んづけて死ねって言うのよ」


待て次回!



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