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2匹の猫と私と  作者: リリひり


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私と姉

姉を亡くした妹の、その後のお話。

妹視点

 姉が19歳の誕生日に亡くなった。


 幼い頃から体が弱く、もともといつまで生きれるのか分からないような状態だった。

 姉は物静かな人だった、表情がとぼしいとも言う。姉が笑うことなど滅多になく、笑った顔を見たのは数回だけだった。


 両親はそんな姉を気味悪がって、お見舞いに来ることはなかった。


 姉はいつも同じ本を読んでいた。本の内容は知らないけれど、姉が珍しく笑っていたから面白い本なのだろう。


 姉の18歳の誕生日を過ぎた頃だろうか、姉は少しだけ笑うことが多くなった。私は不思議でたまらなかったけど、姉が元気そうだから気にしないことにした。数ヶ月して、その理由が分かった。


 その日はいつもよりも少しだけ早く病院に着いた。私は姉を驚かせようと思って、気付かれないようにそーっと病室のドアを開けた。息を殺して中を覗くと、姉のそばに真っ黒な猫がいた。そして、姉は猫の隣で笑っていた。


 ここは病院だから看護師さんに言って追い出してもらうのが正しいのだろう。だけど私は言う気にはならなかった。


 いや、姉の笑顔を奪う気にはなれなかった、と言う方が正しいだろう。


 私はあんな楽しそうな姉の顔を見たことが無かった。これが、私が見た最初で最後の姉の心からの笑顔だった。


 しばらくして、姉は亡くなった。そこに猫はいなかった。


 姉がいない新しい生活が始まった。私が病院に行くことはなくなったし、猫を見ることも無くなった。けれど、姉が亡くなった翌日に1度だけ猫を見た。


 私が病室に姉の荷物を取りに行った時のことだ。猫は姉の病室にいた。空いていた窓から入って来たのだろうか、椅子の上で日向ぼっこをしながら姉のいなくなったベットを見つめていた。


 私は猫がなにを思っているのか分からないけど、寂しそうに見えた。私はもう2度と会えない気がして、猫に話しかけた。


「ねえ、お姉ちゃんを笑顔にしてくれてありがとう。元気でね」

 

 猫にこんな事を言うのは変かもしれないが、これだけは言っておかないといけない気がした。猫は「にゃあん」と鳴いて窓から去って行った。私はこの猫のことをこれからの人生で絶対に忘れないだろう。


 姉が亡くなって数年がたった。


 私は姉と同い年になった、19歳だ。1浪してしまったが春から大学生になる。大学への入学を機に、一人暮らしをすることにした。

 毎年春になると姉と猫を思い出す。結局、あれからあの真っ黒な猫は見かけなかった。


 窓を開けて下を見ると満開の桜が見えた。強い風が吹いて桜の花が舞う、桜吹雪みたいで綺麗だ。

ふと、桜の向こう側に笑う姉と猫を見たような気がした。だから私はこう言う


「お姉ちゃんをよろしくね、真っ黒な猫さん」


 猫が鳴いたような気がした。

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