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赤い目の少年冒険譚 (2025.05)  作者: MAYAKO
第一章 四月世界

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第36話 賢者     

おはようございます。

投稿です。


 ゴンザと子供の周囲に人々が集まり始める。

 ここで副長は折れた足を魔力で強制固定した。

 そして何事も無かったかのようにスッ、と立ち上がる。


(副長!?無理するな!激痛のはずだ!)


(隊長、それはあなたもでしょう?)


 第六国境警備隊、街の皆の前では平然としていたいのだ。

 騎士団は皆の前で無様な姿を曝さない。

 ならば私達も!

 騎士団に劣るわけには、いかないのだ!


 そんな中、街の人々の心境は複雑である。

 第六国境警備隊が駐屯したから街が襲撃された、と思う者達が大半である。


 しかし、全力で街を守ってくれたのも見れば分かる。

 それから首都ホワイトパレスの対応だ。

 首都ホワイトパレスからの物資、最先端の医療ポット。

 支援が半端ない。

 これでもか、と言うほど物資が雪崩れ込む。


 当然だ、と思う住人はいない。

 戸惑いが多いのだ。


 スノーホワイト国にいながら、国の恩恵は魔法による気候変化だけである。

 重税ではないが、それなりの金額を納めている若葉街。

 税は街単位なのだ。

 街人は気候変化の使用料と思って納めている、という考えが主流だ。


 税金は納めているが、これはそれ以上の物資では?

 我らが若葉街はそんなに重要ポイントか??


「無事かね?副長さん?」


「これ!屋根から落ちるなど、情けない!それでも若葉街の若人か?ちゃんと見極めろ!」


「……うう……ごめんなさい」


 近所の大人だろうか?ちゃんと叱り、そしてなんと誉め始めた。


「でも、ネコを助けようとしたのは立派だ、そこは誉めてやる」


「……ふふっ」


「隊長さん、酷い怪我に見えるが無理はしなさんな」


「ワシらだって、見えるんだぜ?なんだい?その腕!早くポッドとやらにお入りよ!」


 そう言われながらも、視線は白黒ネコに向う隊長。

 白黒ネコも隊長をバッチリ見ている。


「……ナーオ」


(ネコ、やはり様子がおかしい、しかし……なんだこの街は?ネコ一匹にここまで人が集まるとは……)


 隊長はポン、と軽く大地を蹴り、屋根に降り立つ。


 見事な跳躍とバランスである。


「ネコ、お前一匹に周りは大騒動だ」


 そう言って、動く腕でそっと掴もうとする。


「ニャニャニャッ!ミギュア!」


(や、やさしくっ!優しく扱えっ!いて―んだよ!その……ナニが!それで動けねーんだよっ!)


「どこを痛めた?」


 優しく抱き上げるエリ・ナリ隊長。。


 そして、静かに大地に降り立つ。


(この隊長、体幹がスゲーな?全然振動しない……ん?)


 綺麗に整えられた爪、細い指。

 手のひらは武人らしく大きく分厚かったが、やはりそれは、女性の柔らかい手であった。


 頭を撫で、下顎、首、背中、次々に撫で回し始める。


「ニャーン……ゴロゴロゴロゴロ」


「あ、クロちゃん、ゴロゴロ言ってる!」


「ああ、一角と似ている、調子はいい?病気?怪我ではないのか?どこだ?」


 そっ、と後ろ足を触ると、ビクン!と白黒ネコが動いた。


「足か?」


 さわさわ。


「ブギャー!」


(て、てめー!ど、どこ触っているっ!)


「……副長、こいつ重傷だ」


「え?」

(え?)


「一角の塗り薬があったな?持参しているか?」


「……ここに」


 手渡されたのは陶器の薬瓶。


 大きさは10㎝くらいだろうか、サイコロ状の薬瓶だ。

 それがカチッ、という音と共に展開し、中から軟膏が出て来る。


「隊長?こいつどこを?怪我ですか?」


「睾丸だ、右の睾丸が腫れている。こんなに腫れて、命取りだぞ!病気ではないな、明らかに打ち身だ。それもかなり酷い」


 獣医のように冷静に判断する隊長。

 一角を駆る第六国境警備隊のメンバーはネコ科の生態に詳しい。

 隊長ともなれば、その知識は言わずもがな、である。


(え゛!?そうなの!?オレ、ヤベーの?)


 そう思うと、更に痛さが増してきた。


 ズキン、ズキン。


「ニギャーン!」


「そう鳴くな、どこでぶつけた?ああ、ブリザード・ワームの襲撃の時か?お前は本来機敏なのに……よほどのことがあったのだな」


(ううっ、余程のことがあったんだよっ!)


 ぬりぬり。


「!?…ウナアアアッ!?ニャ!ニャッ!」


(いっっってええええええよおおおおっ!をいっ!も、もっと、や、優しく塗ってくれっ!!)


 軟膏を塗り始めるエリ・ナリ隊長。


 ぬりぬり。


「ニギャーッ!」


「これ、じっとしていろ!」


(できるか!いてーよーっ!ゴンザッ!どうにかしてくれ!)


(油断大敵ですな、若、反省なされよ)


(反省!?今更したってどーなるんだよっ!わーん!)


「……ほう」


「ん?どうした副長?」


「爪を立てません、肉球で隊長の手を押さえようとしています」


 ぴと、と肉球で隊長の手を悲しげに押さえる白黒ネコ。


(うう、いてーよーっ……)


「ああ、そうだな。こいつは賢い、爪を立てれば相手が怪我をすることが分かっているんだ、優しいネコだな」


(ちーげーよっ!お前が、とんでもないところ握ってるからだい!)


「クロちゃん、大丈夫?」


「ああ、大丈夫だよ、野生の生き物はタフなんだ」


「クロちゃん、飼いネコだよ?」


「ははっ、それでもこいつはタフみたいだ、大丈夫だよ。ん?どうした?」


 チビちゃんは、クロちゃんよりもエリ・ナリ隊長を見ていた。

 ウルウルした目でボーッとしている。


「隊長さま、笑うと……きれい……あと、いい匂いがするっ!」


「!!……おい副長!今、吹き出そうとしたな?」


「い……いえっ……ぷぷっ」


「これ、大人をからかうでない!」

 

 一応、怖い顔をしてみせるエリ・ナリ隊長。


「隊長さん、大人なの?」


 熱い視線を送るチビちゃん。


「ん?まぁな」


 怖いお顔は長く続かない。


「私も大人になったら、大きくなるかなぁ?」


「身長か?まずは好き嫌い無く食べて、身体を動かせ、いいな?」


「うん!」


 ちょっと困ったお顔の副長さん。


(いや、隊長、身長ではナイと思いますが?気がついています?そのちびっ子の視線!ネコではなく、他の所を見ていますが?)


「そのような身体で何をうろついておる!さっさとポッドに入らぬかっ!」


「「!?」」


 突然の大声に、ビックリする隊長と副長。

 振り向くと、更に驚く。

 そこには身長2m程、体重は100㎏?ゴツい体格の老人が直立していた。

 手にはこれまた重そうな杖、足は裸足である。

 眼光鋭く、筋骨隆々でとても老人には見えない。

 白い顎髭がとても長く、その深く刻まれた顔の皺を見るまでは、年齢不詳、全盛期一流の戦士にしか見えない。


「い、一の君!?」


「一の賢者!?」


 そこにいたのは、スノーホワイト国の元国王、雷神王の祖父であった。


「な、なぜここに!?」


「重傷者は率先してポッドにぶち込めと言っておいたが?ワシが開発した医療ポット、信用ならぬか?あん?」


 副長を睨む雷神王の祖父。


「い、いえっ!そ、そのような!」


 今回はここまでです。

 次回をお楽しみに!

次回投稿は未定です。

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