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赤い目の少年冒険譚  作者: MAYAKO
第一章 四月世界

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第19話 暴欲と愚欲    

おはようございます。

投稿です。


 取敢えず白黒ネコは大きなアクビを一つ。

 口を大きく開け、犬歯(けんし)ならぬ猫歯(ねこば)を見せつける。

 そして器用に後ろ足で耳後ろを、シャシャシャ!と軽快に掻く。


 チラリとニャオ先生を見る白黒ネコ。


 ニャオ先生は、ほっとしたような表情で見返す。

 白黒ネコが、立ち去らなかったからだ。


 白黒ネコは、もぞもぞと後ろ足を動かし、ポジション確保。

 そして香箱座りをビシッ、と決める。


(オレさま、腹へってんの。お話しか?早くしてくれ。一応付き合ってやるからよ)


 ニャオ先生は、眼を細めている白黒ネコを見てポツリと一言漏らす。


「あのですね……私、男の人が怖いんです……」


(……そうかぁ……すまんなぁ、オレが側にいながら間に合わなかった)


「なんであんな酷いことができるのでしょう……」


(酷いことするのが好きなのさ、自分のため、金のためさ。えっと、何だっけ?)


(欲ですかな?)


(そうそう、暴欲(ぼうよく)だっけ?)


(若、そんな言葉はありませんぞ?)


(そうか?でもぴったりと思わないか?)


(……そうですな)


(あとは愚欲(ぐよく)か?愚かなことを求める欲望だ)


(若、何ですかそれは?)


(最近思ったことさ、なんでスノーホワイト国に侵略を企てる?問答無用の攻撃、話し合いとか選択はなかったのか?愚かしいと思わぬか?)


(話すよりも、自分の都合がいいように進めたいのでしょう)


 若の考えに関心を示すゴンザ。


(ゴンザ、相手を殺してでもか?)


(相手はそういう連中です。全て自分の者にしたい、強欲ですな。話して分かる連中ではありません、被害は確実に広がっておりますぞ)


(ニャオ先生やチビども、わんわんも犠牲者か)


(……増えますぞ、若、首都ホワイトパレスに乗り込みますかな?大雷神との交渉ですぞ?)


(捨てられた身だ、表には出ないよ。あくまで無名戦士として振舞う)


(ほほっ、私もそのつもりでしたが、民が名付けましたな、雷帝と炎帝、時間が経てば気づかれますぞ)


(気づいても何で出来まい?無視だろう、それとも消しに来るか?)


 部屋の中に眼を戻すと、ニャオ先生はそのまま寝ていた。


(おいおい、風邪引かないか?それに引止めておいて、寝るとはなんだよっ!)


「すぴー」


 微かに見える寝顔に見とれる白黒ネコ。


(若、ご婦人の寝顔を覗き込むのはパーフェクトではありませんな!)


(……ふん」


(暴力はキライだそうですな)


(え?)


(は?え?わ、若?今までずっと若に話し掛けて、おられましたぞ!?)


(え?)


(まさかニャオ先生のお話、き、聞いておられなかったのですか!?)


(い、いや、ゴンザとの話しに夢中で……は?なんでお前はオレとニャオ先生、両方の話し、聞いているんだよ!?)


(複数の者の話しを同時に聞く、戦士の嗜(たしな)みですぞ!若、パーフェクトではありませんなぁ!)


(出来るかっ!んなことっ!……で、ニャオ先生、な、なんて言っていたんだよ!?)


(……希少種エルフの先生は、暴力が嫌いだそうです)


(ふーん、それは聞いた)


(暴力を振るうのも、振るわれるのも嫌いだと言われておりましたぞ)


(でもゴンザ……この世界、そんなことじゃ生き残れないぜ?


(そのための我々です)


(ニャオ先生の代わりにガンバレと?)


(そうですな、暴力を振るう者に、そのままその力をお返しする。まぁ相手が我々より強ければ、負けるのはこっちですがな、ははっ)


 笑ってみせるゴンザ。


 だが、その双眼は決して笑っていなかった。

 負けるわけにはいかないのだ、自分達が負けたら、残った者に待つのは絶望と破滅だ。

 幾多の戦場を駆け巡った雷帝と炎帝は、敗者の無残さを知っているのだ。

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