第19話 暴欲と愚欲
おはようございます。
投稿です。
取敢えず白黒ネコは大きなアクビを一つ。
口を大きく開け、犬歯ならぬ猫歯を見せつける。
そして器用に後ろ足で耳後ろを、シャシャシャ!と軽快に掻く。
チラリとニャオ先生を見る白黒ネコ。
ニャオ先生は、ほっとしたような表情で見返す。
白黒ネコが、立ち去らなかったからだ。
白黒ネコは、もぞもぞと後ろ足を動かし、ポジション確保。
そして香箱座りをビシッ、と決める。
(オレさま、腹へってんの。お話しか?早くしてくれ。一応付き合ってやるからよ)
ニャオ先生は、眼を細めている白黒ネコを見てポツリと一言漏らす。
「あのですね……私、男の人が怖いんです……」
(……そうかぁ……すまんなぁ、オレが側にいながら間に合わなかった)
「なんであんな酷いことができるのでしょう……」
(酷いことするのが好きなのさ、自分のため、金のためさ。えっと、何だっけ?)
(欲ですかな?)
(そうそう、暴欲だっけ?)
(若、そんな言葉はありませんぞ?)
(そうか?でもぴったりと思わないか?)
(……そうですな)
(あとは愚欲か?愚かなことを求める欲望だ)
(若、何ですかそれは?)
(最近思ったことさ、なんでスノーホワイト国に侵略を企てる?問答無用の攻撃、話し合いとか選択はなかったのか?愚かしいと思わぬか?)
(話すよりも、自分の都合がいいように進めたいのでしょう)
若の考えに関心を示すゴンザ。
(ゴンザ、相手を殺してでもか?)
(相手はそういう連中です。全て自分の者にしたい、強欲ですな。話して分かる連中ではありません、被害は確実に広がっておりますぞ)
(ニャオ先生やチビども、わんわんも犠牲者か)
(……増えますぞ、若、首都ホワイトパレスに乗り込みますかな?大雷神との交渉ですぞ?)
(捨てられた身だ、表には出ないよ。あくまで無名戦士として振舞う)
(ほほっ、私もそのつもりでしたが、民が名付けましたな、雷帝と炎帝、時間が経てば気づかれますぞ)
(気づいても何で出来まい?無視だろう、それとも消しに来るか?)
部屋の中に眼を戻すと、ニャオ先生はそのまま寝ていた。
(おいおい、風邪引かないか?それに引止めておいて、寝るとはなんだよっ!)
「すぴー」
微かに見える寝顔に見とれる白黒ネコ。
(若、ご婦人の寝顔を覗き込むのはパーフェクトではありませんな!)
(……ふん」
(暴力はキライだそうですな)
(え?)
(は?え?わ、若?今までずっと若に話し掛けて、おられましたぞ!?)
(え?)
(まさかニャオ先生のお話、き、聞いておられなかったのですか!?)
(い、いや、ゴンザとの話しに夢中で……は?なんでお前はオレとニャオ先生、両方の話し、聞いているんだよ!?)
(複数の者の話しを同時に聞く、戦士の嗜嗜みですぞ!若、パーフェクトではありませんなぁ!)
(出来るかっ!んなことっ!……で、ニャオ先生、な、なんて言っていたんだよ!?)
(……希少種エルフの先生は、暴力が嫌いだそうです)
(ふーん、それは聞いた)
(暴力を振るうのも、振るわれるのも嫌いだと言われておりましたぞ)
(でもゴンザ……この世界、そんなことじゃ生き残れないぜ?
(そのための我々です)
(ニャオ先生の代わりにガンバレと?)
(そうですな、暴力を振るう者に、そのままその力をお返しする。まぁ相手が我々より強ければ、負けるのはこっちですがな、ははっ)
笑ってみせるゴンザ。
だが、その双眼は決して笑っていなかった。
負けるわけにはいかないのだ、自分達が負けたら、残った者に待つのは絶望と破滅だ。
幾多の戦場を駆け巡った雷帝と炎帝は、敗者の無残さを知っているのだ。
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