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赤い目の少年冒険譚 (2025.05)  作者: MAYAKO
第一章 四月世界

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第18話 街の現状      

こんにちは。

今回はこの時間になりました。

ちょっと体調不良です。

本来は朝だったのですが、間に合いませんでした。


 本当は真っ直ぐに帰るはずだった。

 夜も更けたし、お腹も空いた。

 夜の街を駆ける白黒ネコ。


(ゴンザ、今日の晩メシなに?)


(メシですと?夕食、もしくは晩ご飯ですぞ)


(いいじゃん、同じじゃん!)


 走りながら若は思う。

 この街、大きくなったなぁ、と。


 第六国境警備隊の駐屯地と決まっただけで、人、物、お金、が一気に動いたのだ。

 街は潤い始めたが、住人達の戸惑いも大きかった。


 首都ホワイトパレスから直接物資が入ってきたのだ。

 一流の武具、保存食、最先端の装備一式。

 入ってきたのは物資だけではない。

 警備隊専用の鍛冶屋、道具屋等が一般に向けても開店したのだ。

 より安く、良質の品々が手に入る。


 周囲の街からも人が流れ込み、飲食店や宿屋は賑わった。

 が、若葉街既存の鍛冶、道具屋等は窮地に立たされた。

 品物が売れず、常連が新規の鍛冶屋等に流れたのだ。


 そんな中、雑貨ド・ゴンザは品質の良さと安価な設定で、新規店とでも充分に渡り合っていた。

 もともと国宝級の鑑定士であるゴンザだ、首都からの道具屋、雑貨屋など歯牙にもかけない。

 それどころか、街長のピノ・ミントを唆(そそのか)し、あ、失礼、ピノ・ミントを促(うなが)し、若葉街商工会を発足させている。


 鍛冶屋に至っては、直接指示し、勉強会まで開いている。

 玉竜鑑定士で大太刀を振るう者が、直接鍛冶屋を指示するのだ、品質が上がるのは当然である。

 他の商店に至っても鑑定士の最高峰の指示、品質は格段に上昇し始めた。


 それは首都ホワイトパレスから進出してきた商人達を、戸惑わせるほどだ。


 彼らは、この若葉街に駐屯する第六国境警備隊を足場に、街の経済を支配する予定だったのだ。


(経済支配かぁ)


(そうですぞ、これは国家間経済バトルの雛形でもありますぞ、若葉国にホワイトパレス国が経済支配をしようと侵略してきたのですぞ)


(住んでいる人達の生活を奪おうと?)


(そうですぞ、何も剣や拳で戦うだけがバトルではありませんぞ。いいですか若、一連のこの国に対する侵略行為、これも裏では利益が動いておりますぞ)


(極寒の地を春に変えた環境魔法、その根幹が知りたい、奪いたい)


(そうですぞ、環境魔法の構築だけではなく、この国自体が欲しいと闇が動いておりますぞ)


(捨てられたとはいえ、ここはオレの祖国だしなぁ)


(若……)


(とーちゃん、かーちゃんいるしなぁ……ん?)


(どうされました?若?)


(ニャオ先生の窓、明るい、まだ起きているのか?ちょっと寄って来るぜ)


 街長ピノ・ミント宅の2階、やや大きめの窓はほんのりと光っていた。


(わ、若!?深夜にご婦人の部屋を訪れるとはっ!パ、パーフェクトではありませんなっ!)


(いいじゃん、ネコだし!)


 機敏な動作で二階まで駆け登る白黒ネコ。


 カリカリ。


(どうした?ニャオ先生?まだ起きているのか?怪我は治っていると思うけど?まだ痛いのか?)


 カリカリ。


「……ニャーオ」


(できるだけ小さな声で、優しくっと)


「え?なに!?」


 怯えた声が部屋の中から聞こえてきた。


「ナーオ」


(そんなに怖がるなよ、可愛い子ネコだよ)


(……若、パーフェクトではありませんな)


(うるせー)


 半透明の氷窓はそのままだ。

 若は顔を近づける。


(中はよく見えないなぁ。ああ、そうだニャオ先生は魔力の使い方がヘタだったな)


(若、言葉を変えましょうか?不得意とか、苦手だとか)


(いっしょじゃん!同じじゃん!ヘタはヘタだ!言葉変えて誤魔化すのは嫌いだぜ)


 フッ、と曇った氷が透明になる。

 中には小さな水晶を手に持ったニャオ先生が見えた。

 床に座り込み、片方の手にはチェックのハンカチーフを握っている。


 白黒ネコはその小さな手を見つめ、次に俯(うつむ)き加減の顔に視線を移す。


 泣いていたのだろうか?眼が赤い。


「ねこ……さん?」


(そうだよ、ネコさんだよ、開けてくれ!その水晶の魔力を、ちょっと解放すればこの氷は形を変える、知っているだろう?)


「どうしたのです?夜ですよ?早くお家に帰りなさい、ゴンザさんが心配します」


 窓から距離をとり、熱心に話し掛けるニャオ先生。


(……ゴンザ)


(はい、何でしょう若?)


(このエルフの先生は、優しいなぁ、お前が心配しているから帰れとよ)


(そうですな)


 カリカリ。


(開けないのか?)


「ふふ、開けませんよ、あなたは男の子でしょう?お部屋には入れてあげません、それにネコは魔性とも言います、夜はダメです」


(そうなのか?オレ魔性か?)


「ナーオ」


「……ごめんなさい、本当は怖いのです」


 そう言ってポロポロと涙を零すニャオ先生。


 若の膨大な魔力が、巧みにニャオ先生の感情を読み取る。


(ああ、あの時のならず者か?あいつらならブリザード・ワームに喰われて死んだ!もうニャオ先生に酷いことできないぜ?)


(若、今日のところはお帰り下さい、傷ついた女性に我々が出来ることはありませんぞ)


(そうだな、オレ達は基本壊し屋、戦士だしな)


 涙を流しながら、白黒ネコを見るニャオ先生。

 その瞳をじっと見つめる白黒ネコ。


(この先生、ガキの頃、雪の中に一人いたんだってな)


(……らしいですな)


(オレと同じだな)


(……それは……)


(オレは捻(ひね)くれて、乱暴者になったけど、この先生はなんでこんなに素直で優しいんだ?チビどもにも街の皆にも信頼が厚い。こんな人がオレのかーちゃんだったらよかったのに)


(若……それ以上の言葉は慎(つつし)み下さい、ゴンザは悲しゅうございます)


(……わりい、今から帰るぜ)


「ニャーオ」


(じゃ、帰るぜ、またな!)


 白黒ネコが立ち去ろうと身を起こす。


「あ!」


(どしたん?)


「ま、待ってください!」


(?)


「ま、窓は開けませんが、もう少しいてくれませんか?」


(どっちやねんっ!帰れと言ったり、待てと言ったり!)


今回はここまでです。

今日は7月7日、七夕さまです。

夜、晴れるといいな。


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