第16話 シュウミンのビジョン
おはようございます。
投稿です。
眼が丸くなったのは隊長だけではなかった。
会議室に残っていた隊員達、ほぼ全員が目撃、丸い眼になった。
(な、なにが起きたのだ!?こ、この私の身に!?……ヌ、ヌッコに、は、初めてを奪われたのかっ!?)
固まる隊長。
「ニャーン」
一鳴きすると、今度は固まっている隊長サンの、鼻の頭をペロする。
ざりっ!
「!!!!!!!」
(い、一度ならず二度もっ!)
真っ赤に染まる隊長の顔。
(また来るぜ!貴重な情報、ありがとうよ!だが、忘れるなよ?お前はオレ様にとんでもない貸しがあることを!)
ネコは気まぐれ。
さっ、と隊長から離れ、隊員達の足下を風のように走り抜ける。
「わっ!?」
「きゃっ!?」
玄関まで逃走すると、そこにはドリとシュウミンが待っていた。
「ふふっ、わーかー?隊長にチューしちゃって、ヤリ逃げ?」
「逃がさないんだからっ!大人しく私に抱っこされなさいっ!ちっちゃくても満足させるんだからっ!」
(お前ら、その色々と誤解を招きそうな言い方、ヤメッ!)
「ニャーオ、ナァーオ」
「くっ、かっわいい声出したって逃がさん!我が呪符で絡め取る!」
(おいおい、ネコ一匹にそこまで本気になるかぁ!?)
(若、注意ですぞ!こやつら、なぜ先回り出来たのです!?)
(あ、言われてみればそうだな?)
さっ、とドリが呪符を胸元から取り出し、構える。
シュウミンの魔力が、目に見えない障壁を作り始める。
「ごめんねぇ、ネッコ!私の魔力探知、感度いいのっ!逃がさないんだからっ!」
(魔力感知で先読み?ほ、本気かこいつら!浮遊のトラップはマズい!それにマジック・ウォールだと!?)
「ウニャーン」
立ち止まり、耳が垂れ、とてもとても悲しそうに泣き出す白黒ネコ。
(通してくれよぉ、もうお家帰りてぇんだ。腹も減ったし)
すり抜けるのか簡単なのだが、それでは普通のネコでないことがバレてしまう。
「ナァーン、ニャァーン」
その鳴き声、項垂れた姿は、シュウミンの心を激しく撃った。
ここで無意識にシュウミンの魔力感知が働く。
子供が泣いている!
(なにこの映像!?幻影?ビジョン!?)
シュウミンはその並外れた感知能力で、若の過去に感応した。
(あの子供、ネッコのご主人さまだろうか?グレーの髪?なんて可愛い子供なのだろう!何があったの?ほれ、おねーさんに話してごらんなさい!)
幻影に問い掛ける優しいシュウミン。
その子供と白黒ネコが重なる!
(なに!?このビジョン!)
白黒ネコは闇に呑まれ、消えてしまった。
(あっ、だめ……私……)
シュウミン、母性爆発!
がしっ!
「え?ち、ちょっと!?シュウミン!?あ、あなた何をしているの!?」
ドリを羽交い締めにするシュウミン。
ドリの大きなバストが、更に強調される。
「いきなさぁい!ここは私に任せて!必ず食い止めてみせるっ!」
「はあぁ!?シュウミン!?あんたねぇ、自分が何しているのか分かってんの!?」
「ウニャーン」
猛ダッシュで駆け抜ける白黒ネコ!
(あんがとよっ!シュウミン!名前覚えたかんな!)
ネコは軽々と防御壁を乗り越え、街に向って走って行った。
「……お前達、何をしている?」
「「隊長!?」」
そこには仁王立ちの隊長と副長。
建物からの明りで二人の表情が分からない、逆光なのだ。
声からすると、かなり呆れているような気がする。
「えっと……」
口籠もるシュウミン。
マズいと思ったのか、ドリが代わりに答えた。
「ゆ、勇者ごっこですっ!」
「は?」
「わ、私が門番で、シュウミンが勇者側に寝返ったザコ・ゴブリン」
メリメリ。
「あだだだっ!て、手加減しなさいよっ!」
……ザコですっえぇ?……思わず腕に力が入りすぎるシュウミン。
「……それで?勇者を逃がしたと?」
「ま、まぁ隊長、そんなお話しです」
「では、ここが魔王城で、誰が魔王だ?」
(うげっ、ど、どうしようシュウミン!隊長しつこいっ!ヌッコ逃がしたの根に持ってるよ!何とかしなさいよ!あんた!)
今回はここまでです。
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