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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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提案

外を窓から眺めると、平地に造られた沢山のレンガの建物が見える。

街の中を進んでいるようだ。

「ケホッ、ケホッ」

俺の背中にくっついているミーシャが咳をする。

「ん、どうした?」

「あれ、おかしいな。何か熱っぽい」

同時にミーシャの背中を握る力が弱くなり、

ズルズルと落ちて倒れこんだ。

俺が慌てて抱きかかえると

すぐにモーラとナバがとんできて額に手をあて

「風邪ですわ。治るまで寝かしといた方が良いです」

モーラが心配している俺の顔を見て、教えてくれる。

「分かった。皆にうつると悪いから馬車のすみで俺が面倒見るよ」

俺の今までの異常な体力向上を考えると

この世界では普通の病気にはかからないだろうという確信がある。

隅に荷物の山から引っ張り出した毛布を敷き、ミーシャを抱き上げると

そこに寝かして、上からタオルケットをかける。

後ろを振り返ると、アルデハイトは天井を見上げてボーっとしている。

ミーシャにも一切興味ないんだろうな。思いながら

ナバが渡してきた濡れタオルを額にあてる。

「ありがとな」

「困ったときはお互い様です」

しわがれ声で白髪のナバは微笑んだ。


しばらくすると馬車が止まり、アルナが馬車内へと入ってきて

「あれ?風邪ですか?」

と尋ねてきたので頷いた。

「今夜、宿泊する旅館についたので、皆さん降りてください」

俺はそこで、アルナを見るアルデハイトの眼が変わったのに気付く。

珍しく同じ生き物として認識したようだ。

「あなたは?」

眼を見開いて尋ねるアルデハイトに

「私はアルナですけど?タジマ様のメイドですよ」

「そうですか……アルナさんという名か」

「降りてください。ルーナムさんがお部屋をとっています」

「はい」

おお、アルデハイトが人間と普通に会話してる。

いや、しかし待てよ。こいつアルナの才能を……。

面倒なことになりそうだったので、何かを言うのはやめた。

レインコートを羽織った俺はミーシャを

タオルケットに包んでその上からさらにレインコートを被せ

背負って馬車から出て行く。


レンガで造られた大きな旅館の中へと入ると、

ロビーでルーナムが従業員と話している。

「ああ、タジマさま。二日くらい足止めされそうです」

「雨がやばいの?」

「それもありますが、王都へと続く道に

 雷精とナルバスの群れが出現したようです?」

「……?」

ルーナムは渋い顔で

「雨期によく出現する、幽鬼族と水棲族ですね。

 攻撃的ではないので、近寄らなければ害は無いのですが……」

「うーん、つまりは数が多すぎるので去るのを待つってこと?」

「そういうことです」

ルーナムは、アルナと話し込んでいるアルデハイトを見て

「彼はどうですか?」

とおもむろに尋ねる。

「俺とアルナにしか興味がないようだよ」

「でしょうね。魔族は人間を見下してますから」

「アルナさんに話しかけてるのも、才能を見抜いたからっぽいよ。気をつけて」

「分かりました。アルナにも言っておきます」

「あ、そうそう他の皆とちゃんと話さないと、魔族シメるってあいつに言っといた」

ニヤニヤする俺にルーナムは憂鬱が晴れたような表情で

「やはり、タカユキ様でよかった……」

と呟いた。


俺は、エプロン姿の従業員の人から二階の部屋へと案内される。

気付いたアルナと、ついでにアルデハイトもついてきたので

俺と同じく病気にうつりそうもないアルナに

汗だくのミーシャの着替えを頼んで、二人で部屋を出た。

廊下でアルデハイトに釘を刺す。

「アルナは俺のだからな。お前の国にもっていったら、分かってるな」

当然、言葉のあやである。俺のとはまったく思ってない。

こいつには、はっきりと言ったほうが効果的なのが分かったからだ。

「めっそうもない。ちょっと筋肉のつき方が他の人間と違うから

 お話を聞いていただけです」

「……わかるのか?」

「服の上から見れば分かるのですよ」

アルデハイトは髪型を整えながら答える。

「良いですよー。着替えさせて、寝かせましたー」

アルナが部屋の扉を開けて、顔を出す。

「しばらく面倒見ててもらえる?ちょっと、皆と今後のこととか話してくる」

「わかりましたー」

菅の体力を受け継いでいるのなら、風邪程度にはかからないんじゃないかと思うので安心して任せられる。

「私も一緒に看ましょうか?」

アルナと俺の顔を交互に見ながら問うアルデハイトに

「お前は俺と来い。アルナと一緒に居たら不安しか感じんわ」

「はい……」

微妙にうな垂れたアルデハイトの手を引いて、

ロビーの端でソファに座り煙草をふかしていたザルガスに

「こいつと、ザルガスたちとルーナムさんも交えて今後を話し合いたいんだが」

と提案すると、快諾してくれた。


ザルガスとルーナムとアルデハイト、そして何故か部屋に入ってきたマイカの

四人と俺で、テーブルを囲む。

アルデハイトは皆が不快になるといけないので

俺の席の後方に椅子を置いて座らせた。

予想通り、早くも興味無さそうにボーっとしている。

「旦那、パナスたちは街へと情報収集にいってまさ。風邪の妹さんは?」

「ミーシャは部屋で寝かせた、アルナが面倒看てる」

「皆さんも風邪には注意してください。この時期多いですから」

ルーナムがそう言うと、ザルガスは真面目に頷いて

「おう。注意するぜ。皆にも言っとく」

マイカがチラチラ後ろのアルデハイトを振り返った後に

思い出したかのように

「かぜ……いっかい、なってみたい……あこがれ」

「なったことないの?」

「かからない……なぜだ……」

マイカは、謎の落胆でうな垂れる。

「元気なのが何よりだぜ。ところで旦那、

 ルーナムさんも……やばい新情報がありますぜ」

ザルガスが顔を寄せて声を潜める。

「どうしました?」

「第二王子領のミルバーン城が、昨日落ちたそうです」

「なんですと?」

「濡れたパナスがさっき走りこんできて教えてくれました。

 またすぐに情報収集に言ったから今はおりませんが」

「そこは近いの?」

俺は尋ねる。戦争とかそういう怖い話なのか。

「南部の第二王子領の東端ですから、ここからなら王都よりは近いですね」

「しかし、ミルバーンとは……相手方はゴルスバウでないのでは?」

「不明なようですな。噂によるとオークとゴブリンの大軍団だったそうで」

ゲームとか映画でよく聞いたことがある名前がいきなり出てきた。

こっちの世界でもああいうの感じなのだろうか。

「うむ……そのまま北上してこないと良いが……」

「ゴルスバウと隣接している南側に戦力集中していたのが仇になったようですな」

「というか……あそこは、元々指揮系統が無茶苦茶ですからね。

 ミイ様が派遣した王都からの近衛師団と、第二王子軍が各地で入り混じってます」

「ここからは支援軍は出ないんですかい?」

「雨期に入ったので難しいでしょう。

 ただ、ラングラール様とランハム様なら、もう防衛線を構築しなおされているはずです」

そうこう言っている間に、道路に面した窓の外を

大量の騎兵隊が雨を切り裂くように素早く駆け抜けていく。

「さすがですなぁ。もう手はずを終えましたか」

ザルガスは唸り

「私がホワイトリール城に戻る必要はなさそうですね」

ルーナムはホッとした顔をする。

「我々はどうしますか?しばらく待機して王都へ?」

「それが良いでしょう。王都へ向かわねばなりません」

「わかりやした。皆にもそう伝えて落ち着けておきます」

そこでアルデハイトが後ろから、椅子を音もなく前に引いて

会話に入ってくる。びっくりしている皆に向けて

「オークとゴブリンはどのくらいの数なのですか?」

と見回して尋ねる彼に

「……詳しくは分からんが、大体二万という話だ」

不快そうなザルガスが、咳払いしながら答える。

「距離はここから南西に休まず歩いて50ダール(時間)ほどですよね。

 飛べば半ダール程度か……」

「タジマ様は、民を救うタイプですか?

 または、自分の幸せにしか興味がない感じ?」

「い、いや、たぶん救いたいほうかな……」

いきなり突っ込んだ質問をされて、何とか俺は答える。

「いえ、私としてはどちらでも良いのですよ。我が魔族を虐げなければ」

「で、何が言いてぇんだ、てめぇは!!」

激怒したザルガスがドンッと机を両手で立ち上がる、

続いて、何故か無表情のマイカも

ドンッと思いっきり片手で机を叩いて立ち上がった。

「うん……わるくない……すっきりする」

「……マイカ、座っておれ」

「はい……すわります……お行儀……わるかったか……」

ルーナムに言われてマイカは大人しく座った。

立ち上がったままのザルガスは座ったままのアルデハイトを睨みつける。

アルデハイトはそちらを見ずに


「タジマ様と私が行けば、今から二ダール(時間)以内に制圧できますが。

 いかがでしょうか?」


興味無さそうな表情のまま、俺に提案する。

土砂降りの窓の外では、濡れた歩兵隊が通り過ぎていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王政ではなく民主主義というから、 人間より進歩してるのかと思いきや、 戦闘力で序列を決めてるところは動物というか、 やはり通常の魔族っぽい 戦闘力至上主義で民主主義が成り立つの? 一番強い奴…
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