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トーキング フォー ザ リンカーネーション  作者: 弐屋 丑二


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オッドアイのアルデハイト

翌朝、俺たちは

城門の外まで出たランハムから手を振られ見送られながら

再び、馬二頭、馬車二台、徒歩多数の編成で出発する。

朝食時にルーナムが語ったところによると

王都のある中央領は、第一、第二、第三、第四、第五王子領の

五つの領土に星型に囲まれている中心にあるという。

つまりこの第三王子領をほぼまっすぐ西進していけば

いずれ中央領に入り、王都へとたどり着くということだ。


「幽鬼の森、みたいなのはないんですか?」

と尋ねた俺に、ルーナムは微笑みながら

「ほとんど人間しか住んでいませんよ。安全です」

答えて、目前に延々と続く一本の広い道を眺める。

そのまま半日歩き続け、道の左右にいくつかの村や町を通り過ぎ

パーシバル城周辺の穀倉地帯を抜けるとと、分かれ道や

すれ違う旅人、そして行商人たちが増えてきた。


木陰を見つけて全体で小休憩をとるときは必ず、

馬車からパナスとザルガスが出てきて、道行く人々と雑談して

情報を仕入れている。

立ったまま話し込んでいるパナスを遠くに見ながら

俺は道の端の大木に寄りかかって休憩する。

気持ちの良い風が吹いていて、眠くなってきた。

「兄さーんっ!おきてーっ」

ミーシャが隣で叫んで俺を起こす。

「かぜ……ひく……日中は、おきておけ……」

となりのマイカも心配しているのか何なのか

よくわからない表現で声をかけてくる。

「ああ、すまん。寝かけてた」

顔をあげると、道行く人々が忙しなく通り過ぎていくのが

見える。ぼーっとした頭を横に振りながら起き上がると

一瞬、通行人の中に、黒髪の頭に2本の立派なねじれた角を生やした青年見えた。

ピッタリとした真っ黒な旅装に大きなリュックを背負い

スタスタと第三王子領方向へと歩いていくその細身の青年を指差して

「角……あいつ頭に角が……」

と二人に教えるが

「……?」

「……認知できない……まんまる、あたまだ」

二人には見えないようだ。そうこう言っているうちに

その青年は遠くでチラッとこちらを振り返り、去っていった。

「見間違いだったかなぁ……」

「疲れてるんだよー」

「すこし……ばしゃで……やすむといい」

俺は二人に促されて、大馬車内で寝ることにした。

再び、俺らの一団は王都へと進み始める。

マイカが御者をしているこの大馬車の中は、

座って情報交換を続けているザルガス、パナス、モーラと

休憩で同じように身体を休めている寝ているミノ、そしてライガスがいた。

「旦那もダウンですかい?」

身体を休めていると、ヘロヘロのライガスが話しかけてくる。

「うん。何か通行人の中に、立派な角の生えた人見ちゃってな……」

「へぇ、そりゃ大変っすな。いい薬もってねぇか、モーラに聞いてみますわ」

ライガスがモーラへと伝えに行くと、驚いた顔のモーラが

俺の寝ている馬車の角へと、すぐに近寄ってきた。

真っ黒な瞳で俺を見つめながら

「旦那、通行人の中に角生えた人いたってホントですか?」

「うん。見えたけど幻かもな。そんな人、今までこっちで見たことないし」

「ちょっと、こちらへ……ライガスは寝てろ」

「ういー。やっとマッチョ女どもに絞られた分が回復してきたぜ」

ライガスは無駄口を叩きながら横になるとすぐに寝入ってしまう。

馬車はゆっくりと前進を続け、時々小石に乗り上げた振動が伝わる。


「御頭、旦那がおそらく"魔族"見ました」

「なんだと……この国にも入り込んでんのか」

ザルガスが腕を組んで黙り込む。

「??」

俺は聞きなれない言葉に首を傾げる。

ミーシャの村の村長が五だか六種族だかいるとは言っていた気がするが。

ああ、ランハムも魔族討伐がどうこうと言っていた気はする。

「そいつは、どちら側に向かってましたか?」

「パーシバル城の方角だけど……ところで魔族ってどんな感じ?」

「言うのも悔しいんですが」

パナスが本当に口惜しそうに

「うん?」

「人間の上位種族みたいなやつらです」

「上位?」

「羽根で空が飛べて、頭がいいんですよ。寿命もとても長い」

「必ず美男、美女ですね。でも性格がすげぇ悪いです」

「できれば関わりたくねぇやつらですよ。嫌な思い出しかねぇ」

吐き捨てるようにパナスが俯いて教える。

あ、思い出した。

「昔、人間を支配してたんだろ?ミーシャから何か聞いた」

モーラが少し考えた後に口を開く。

「それは神話の世界の話ですよ。

 今では数も少ないし、この国では、例の"流れ人"スガ様が

 生きているころに周辺の生意気な魔族の集団を締めまわっていたようで

 人々から魔族の話は一切聞きませんからね」

「そうか……」

「しかし……実は普通にそこらを歩いているってなら、話が違ってくるわけです……」

モーラは考え込みながら

「旦那が実物を見たのならば、

 角や羽根は擬装して消し、人間に紛れ込んでいたはずですし」

「……警戒するにこしたこたぁねぇ。次の休憩地点で全員にすぐ伝達してくれ」

腕を組んで黙っていたザルガスが念を押し、二人が頷く。


遅い昼食のために入った町で、そのことを伝えられた皆は

様々な反応をした。

興味無さそうな者、おびえる者、そして眉を顰める者。

「ああ……そう……」

俺に告げられたマイカは興味無さそうに馬に飼葉や水を与える。

「魔族かぁ……私はあまり悪いイメージ無いけどね」

意外な発言をするミーシャを見つめると

「村長と子供のころ行商でいった先ではみんな親切だったよ」

「そうなの?」

「うん。村長が仲良かっただけかもしれないけど」

「ふーん」

色んな一面があるもんだなと俺は思う。

とはいえ俺たち"人間"に善人も悪人もいて

人それぞれ、好きな人や嫌いな人も違うように、

魔族というものもそんな感じなのかもしれないな。

そんなあやふやなことを考えながら、俺はミーシャと

皆が昼食を食べている、大きな飲み屋へと入った。

この町ではここが唯一、食事を出せる店でもあるらしい。

昼間から暗がりで飲んでいる人たちも多い。

俺たち二人は空いていたテーブルに座り、店員さんに食事を注文して待つ。

「相席いいですか?」

酒場へと入ってきた真っ黒な格好をした青年が

周囲を見回した後に、暗がりから声をかけてくる。

「他にも空いてる席ありますよ」

俺が親切に教えてあげると

「いや、ここがよいのですよ」

とミーシャの隣に素早く座り込んで、リュックを下ろす。

青年の黒髪に隠れた地味だが異様に整った顔を見て、俺は思い出す。

さっき通り過ぎていったあいつだ。

「あ……!!」

声を上げようとすると、青年は口に長い指を当て

「シーッ」と黙るようにジェスチャーしてくる。

不思議そうに、青年と俺のやりとりを見ているミーシャに

「怪しいものではありません」

と断ってから、俺の目をじっと覗き込む。

右眼が青色で、左眼が黒だ。なんというんだっけこういう人を……。

ああ思い出した、オッドアイだ。

「どうしてもあなた様とお話がしたくて、探しておりました」

その青年は静かに切り出す。

「我々が、スガ様との関係が悪かったのはご存知でしょうか?」

「……何となく知ってるよ」

魔族が菅からシメられていた話はさっきの馬車でも聞いた。

「あれはそもそもの誤解があるのです」

「……?」

「我々は決して人間を虐げたいとは思っていません。

 守るべき生活のために、そうせざるを得ない時以外は」

よくわからん話になってきたが、

なんかの言い訳をしているのは分かる。

青年は、少し間を置いて再び喋りだす。

「なので、今回はあなた様と早期にご接触を図るために

 代表して私が、ここまで参上した次第にございます」

「何かよくわからないけど、つまり今度は

 痛い目会う前に、早めに仲良くなっておこうってことか?」

「話が早くて助かります」

そこで勘のいいミーシャがこの青年が魔族であることを気付き

皆を呼びに行こうとする。

同時に青年はミーシャのうなじを軽くトンッと叩き

椅子の上に気絶させた。

「おい……」

立ち上がった俺に、青年は慌てた様子で

「優しく寝かせただけでございます。不快にさせたなら申し訳ありません」

と頭を深く下げる。続けて

「アルデハイト・リヒターと申します。

 この笛を拭けばいつでも参上いたしますから、御用のときはお呼びください」

アルデハイトは逃げるように小さな黄金の笛をテーブルの上に置き、

素早くリュックを持ち、去って行った。

すれ違ったウェイトレスが不思議な顔をしながら食事をテーブルにおいて

微笑んでカウンターへと戻っていく。

俺はミーシャが息をしているのを確めてから、

近くのテーブルで食事をしているルーナムやザルガスに

急いで今起きたことを話しに行く。

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― 新着の感想 ―
[一言] 好印象を持ってる人もいれば、逆の人もいる この世界の魔族は一般的なエルフみたいな存在かな 彼らは人間に対して高圧的で見下すことが多いが、 友好的なこともよくあるし ミーシャは魔族に対し好印…
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