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番外編:02/セイロンよりの一コマ。本編26 ―花祭り― 6 の直後の話。

小話で載せるタイミングを失ったので、書き足して再編集第二弾。

セイロン視点ですね。




side Ceylon




 花祭りが終わって母上から「ルゥちゃんに花を見せてあげたの?」と言われて忘れていたことに気がついた。

 慌てて母上から温室の鍵を条件付きで特別に貸していただいて、ルゥを誘ってみた。



「王妃様の温室ですか?」

「うん、見せたい花があったのを忘れてて……もし良かったらなんだけど今から見に来ない?」

「はい、ぜひ! でも……今日はニールもキィもいないのです」

「そうなんだ。それは残念だけど、今日までくらいしか咲いていないんだ。彼らには申し訳ないのだけれど私としてはルゥだけでも見て欲しい」

 

 ダメかな?と聞けばルゥはちょっと考えているみたい。

 彼らがいないのは私としては好都合だし、もう一声かな。

 

「ルゥが彼らにどんな花か教えてあげるのはダメかな? 次の機会に咲いた時にまた連絡するからその時は皆で見よう」


 それでどうかな?と問えば納得してくれたようで、侯爵夫人――キャンディ様――に許可をもらって魔術院まで送ってもらった。

 どうやら私が来た時点で転移の許可を取っていたらしい。

 さすがは魔術師団団長の奥方というべきか。


 ……自分の行動が読まれていたようで少し悔しいな。

 ルゥのことになると他のことを考えるのを置き去りにしてしまうのは自覚している。

 なるべくそうならないようにしているつもりだけれど……溺れているってこういう事なのかな。




 

 キャンディ様は母上と待っているということで、ルゥと二人で目的の場所へ手を繋いで向かう。

 

 ルゥが「ニールも手を繋ぐの好きなんですよ」なんて言う言葉に嫉妬して「セイ様の手は大きいですね」と言う言葉で嬉しくなって。

 あぁもう、彼女の一言で世界が変わる。



 庭園の奥へ進み通常は入れない場所へ進み、鍵を3回使ったところで目的の場所についた。


 そこは母上……歴代の王妃が守っている特別な花――『アウロラ・ローゼ』――がある場所。


 『花祭り』の時は色々あってルゥにこの花を見せることが出来なかった。

 あの時に一緒に見たかった花であり、いつか彼女に贈りたい特別な花。


 

 私達の前には、咲ききったアウロラ・ローゼがまるで虹を生み出しているように錯覚させる。


 元は白い花弁だったものが今は色とりどり花弁へと変化して風に乗って舞うものあり幻想的な風景になって椅子。

 その情景にルゥは紫苑色の瞳をキラキラさせて眺めていて、私も嬉しくなる。


「セイ様! 凄いです、虹がお花から出来ているみたい」

 

 自分がさっき思っていた事と同じ事を言われて……心が通じているんじゃないかと舞い上がりそうになる。

 そんな心を静めたのはポツリと感じた水滴。


 しまった! ルゥを連れてくるのに夢中で水が撒かれる時間を忘れていた。

 これから急いで庭園を抜けようとしたら間違いなく濡れてしまうだろう。


 たしか東屋があったはずと思い出し、「水撒きが始まるから来て」とキョトンと私を見ていたルゥの手を取って少し速足で歩く。

 こういう時にディンだったら軽々と彼女を抱き上げるのだろうと思ってちょっと悔しい気持ちになるけれど、まずは雨を避けないと。などと下手な言い訳をして道を急ぐ。


 思ったよりも近くにあった東屋に入って一呼吸後には、魔術具によるしとしとと降る雨のような水撒きが始まった。

 間に合ったと息を吐き、ルゥを見れば彼女は庭園をみてほろりと涙を零していた。

 彼女のその横顔に見惚れるが自分が泣かせてしまったかと「ルゥ」と声をかけ、彼女の涙を拭う。



「セイ様?」

「泣いて、いるの?」

「え? わたし……なんで?」


 ルゥ自身なんで泣いているか分からずに困惑しているようだった。

 数分はこの水撒きは終わらないため、そのまま立っていてもしょうがないと彼女の手を取り椅子へと誘う。

 

 椅子に座ってなおルゥは庭園のほうを気にしている。

 彼女の心を奪っている情景に嫉妬して、自分のほうへ向いて欲しくて。

 少し意地悪をしてしまおうか。

 

 彼女の肩を叩きながら「ルゥ」と呼びかければ彼女は私のほうへ向いて……彼女の頬に私の人差し指が当たる。

「引っかかった?」

 笑顔を向けてそのままふにふにと彼女の頬をつつけば、ようやく私のほうへ意識を持ってきてくれたルゥが顔を真っ赤にして「セイ様ヒドイですー!」と私の手を掴もうとする。

 ふふ、憂い顔よりルゥには笑顔が似合う。それに照れている顔もね。


 ひとしきりじゃれた後、二人並んで座り直してまだ雨のように降り続ける庭園を見ているとルゥは少し眠くなったのか私のほうへ寄りかかってきた。

 

 もう少しルゥと一緒にいたいけれど、ここで寝ては風邪を引いてしまうかもしれない。

 残念だけれど誰かに迎えに来てもらおうかと考えて彼女に問う。


「ルゥ、もうちょっと起きていて? 誰か呼ぶから」

「……もう、ちょっと……」

「ルゥ?」

「セイ様と……いっ、しょ……に」

「……ルゥ、それは」


―――本気にしてもいい? 

 

 すやすやと眠って私に身体を預ける愛しい人に、そう言いたい。

 

 他にも彼女にはたくさんの言葉を贈りたい。

 今は叶わぬこの想いが彼女に届くようにと頬にキスを落す。


 いつか未来でこの場所にまた二人で来ることを願って。






 

 




読んでいただきありがとうございます!


不定期投稿ですみません。

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