後日談01―みんなでおでかけ―
本編完結による多数のアクセスとブックマークと拍手お礼話。
感謝でいっぱいです! ありがとうございます!!
本編終了後:わりとすぐな時系列
ある日の勉強会の日。
休憩時間になったのでお菓子の準備をキィとしはじめると、セイ様が私に側に来て微笑んで言いました。
「ねぇルゥ。デートしない?」
「デートですか?」
ビックリしつつそう返せば「そうだよ」と言いつつ、いつの間にかセイ様に手を取られてそのまま引き寄せられたと思ったら、手のひらにちゅっとキスを落とされました。
「せ、せいさま!?」
動揺する私の手をディン様が引っ張りセイ様から離すと、私を後ろにかばいセイ様の手をぺしっと叩きます。
「だー! このキス魔!」
「ヒドイよディン、言いがかりだ。私はルゥにしかしないよ?」
「そ、れ、が! 性質が悪いってるんだよっ!!」
「そうかな?」
「あったりまえだーーー!」
まるで毛を逆立てた猫のように威嚇するディン様を首を傾げて受け流すセイ様。
言葉の応酬が始まったと思ったらすぐに追いかけっこになってしまいました。
……これは。
「ケンカするほど仲が良い?」
「……姉様。あながち間違っていないと思いますが、これは違うと思います」
「そう?」
「はい」
すぐにニールに訂正されてしまいました。
違ったそうです、残念。
横に立ったニールにはとうとう背を抜かれてしまいました。
2センチだけ高いのですが目線が変わらなくて姉としては複雑な気分です。
「ルゥ様、支度が終わりました」
「ありがとう、キィ。一人でさせてしまってごめんなさい」
「私の仕事ですから。それより……如何なさいます?」
苦笑いでセイ様とディン様のほうを見るキィに、私もどうしましょうと視線を向けます。
するとニールから提案が。
「姉様。こちらに注意を向ける方法思いついたのですが、試しても良いですか?」
「方法?」
「はい。姉様にも手伝っていただきたいのですが」
「私に出来ることなの?」
「姉様がいないとできません」
それならば「どうぞ」と促すとニールはにっこりと笑ってから「姉様、大好きー!」と私に抱き付いて右頬へすりすり。
私はあまりの衝撃に言葉が出ません。
声が出ないこととは反対に妙に頭は冷静で、大きくなったなぁとか髪の毛がふわふわだ~とか頬っぺたは私よりもすべすべ?とか考えてしまって……。
ニールは可愛い義弟で、これは注意を引くためで――ドキドキするのはビックリしたからで……?
でも、どうして、ちがって、ちがくなくて? とだんだんと私の頭は混乱をきたして……
「ルゥ様?」
キィが後ろから私の左耳に囁くように言ったので、
「ふみゃぎゃっ!」
変な声が出ました。
「きぃ~!? ひどいです!」
「それは申し訳ありません」
耳を押さえて涙目になりつつキィを見上げればくすくすと悪戯を成功させたような表情。
この顔は絶対に悪いとは思っていない顔ですね!
「キームン!」
「なにぶん、ニルギリ様の策が不発だったようなのでお手伝いをしようかと」
「これからだったのに」
「それは失礼いたしました」
あれ? 今度はニールとキィが言い合いに?
セイ様とディン様が追いかけっこになるのと違い、この二人が言い合いになるとだんだんと気温が下がっていくのですよね……。摩訶不思議。
「ルゥ! 大丈夫か!?」
「妙な声が聞こえたけど……」
と慌てたようすでこちらに戻って来たディン様とセイ様。
……妙な声ですみません。
「私は大丈夫ですけど……」
笑顔で言葉の応酬をしているキィとニールを見て――
「あー、これはまた」
苦笑いというより引きつった顔のセイ様に
「オレ、止められる気がしない……」
お手上げと言ってしゃがみ込むディン様。
仕方がないので私がお茶を淹れはじめると慌てた様子でキィとニールが戻って来て手伝いに参加してくれました。
……平穏って言葉が欲しい今日この頃です。
お茶を飲みつつ勉強のことや魔術の話をしてひと区切りついたころにセイ様が「さっきの話のことなんだけれど」とチケットのようなものをテーブルに置きました。
それを見たディン様が「あ、あの時の!」とちょっと引きつった顔で言いました。
「そう、あの時の。ディンも持っているでしょう」
「……家にあるハズだけど、どうすんだ?」
「あるならディンのも使って皆で出かけない?」
「皆様で、ですか?」
「そう。本当はルゥと二人だけで出かけたいけれど、ルゥはみんなと一緒のほうが良いでしょう?」
「はい! 皆様と一緒のお出かけは嬉しいです!」
「僕も楽しみです、姉様」
「そうね、ニール。私も楽しみよ」
ニールと笑い合うと皆様も口々に「私も」「オレも楽しみだ―」「良かったですね、ルゥ様」と言ってくれました。
次の勉強会の日しかなさそうなので、内容を他の日に振り分けてその日一日の予定をなしに調整することになりました。
お父様もお母様も――多々の注意事項はありましたが――快諾してくださったので今から楽しみです♪
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今日はお約束したみんなでお出かけです!
シンプルなライラック色のワンピースに、あの変装用の榛色のウィッグに珊瑚色のカチューシャ。
ウィッグの着用はもめたのですが、用心のために変装をしないと! ということで納得してもらいました。
セイ様達も以前アル姉様とのデート(?)の最後に会った時の様な服装です。
今回はお揃いの色を見に着けようという事で私のワンピースの色に合わせた紫色の小物を見に着けているんですよ。
セイ様は帽子、ディン様は腕に巻いたスカーフでキィはタイ。ニールはシャツで一番お揃いな感じですね。姉弟らしくて嬉しいです♪
「ねぇ、ルゥって知らないのかな?」
「なーんも思っていなさそうだもんな、ニルギリと同じで」
「だよね……そろそろ習っていても良そうなんだけど。キームン、どうなの?」
「そのあたりは奥様の采配なので私からは何とも……」
「なんかさーアル兄あたりがストップしてそうだよなー」
「「「……(そうかも)(あり得ます)(あるなー)…はぁ」」」
「ねぇ、姉様。殿下達どうしたんだろう?」
「お疲れかしら?」
「じゃあ、僕たちだけでお出かけしよう!」
「その方が良いかしら?」
ニールと目で合図をして気が付かれないように後ろを向いて、そぉっと足を出そうとして―――
「「「ちょっと待て(下さいね)!!」」」
満面の笑みの三人に一瞬にして捕まりました。わぉ。
ちゃんと皆で仲良くお出かけです。
もう一度来てみたかった植物園!
アル姉様と来た時は割引チケットはもらえませんでしたね。
なにか理由でもあるのでしょうか?
それはさておき、困りました。
来るときは皆様でということで忘れていましたが、前回来た時にアル姉様から言われていたことを思い出しました。
「私は一度来たことがあるので、4人でどうぞ?」
「なんでそうなる!?」
「偶数じゃないとだめなのですよ」
「ルゥ様? 5人でも入ることが出来ますが……」
「奇数で大丈夫ですか?」
「姉様どうして?」
「アル姉様がペアで入るのよと仰っていたので。そうではないのですか?」
「……アル兄」
「大丈夫だよ、ルゥ。何人でも一緒に入れるから」
「そうなのですか? なんでアル姉様はそう言ったのでしょうか」
「まあ、アル兄だし(アル兄は絶対ルゥで遊んだな…)」
「うん、アールグレイだし」
「アールグレイ様ですし」
うんうんと頷く3人。アル姉様は何か3人にしたのでしょうか?
首を傾げる私に入り口付近まで行っていたニールが呼びます。
「姉様! 宝探ししてるって、行きましょう!」
「面白そうですね。ニール、今行きます」
皆様も早くと声をかければ笑顔で答えてくれた3人と一緒に向かいます。
楽しみ♪
宝探しと言うのはこの植物園内に隠されている小さな石を探すと言うもの。
白石と黒石があるそうで、黒石は数個しかなく見つければ特別なプレゼントがあるそうです。
埋めてはいないそうなので簡単かと思いましたが、白石でさえ全然見つかりません。
「見つかったー?」
「なかなか難しいね、ディンは?」
「セイが見つかんないの? オレは白1個、ルゥ達は?」
「私もまだ見つかりません~」
「僕は1個見つけました!」
「私はまだですね……」
う~ん、何とか一つだけでも見つけたいなぁ。
そうだ! 〔真実の瞳〕なら見つけられるかも!
しゃがんで皆様から見えないように、ないかな~と言いつつ瞳に意識を集中させるようにして発動――世界の色が換わる――させます。
すると小さな樹の精霊がおいでおいでと手招きしているのが見えました。
正解かな? とワクワクその茂みをかき分けると小さな丸い石。
声を出さずに“ありがとう”と言って〔瞳〕の発動を止めてみれば手の中の石は真っ黒な石。
見つかったことに嬉しくて走って戻ればいつものパターンと言いますか……段差に気付かずそのまま地面へ!
――と思ったら、ぽふっと私を受け止めてくれたのはキィでした。
おそるおそる見上げれば笑顔なのに目が笑っていません。
バレマシタ?
「え、えーと。キィ? ありがとう」
「……ルゥ様」
「……うーんと。……ズルしてごめんなさい」
「は?」
「え?」
思っていなかった答えだったのか珍しくポカンとした表情のキィ。
もしかして気付いていなかった?
……だとするとキィはなんで怒っていたのでしょう。 走ったから?
「キィは……怒っていますよね?」
「えぇ、ルゥ様がいないことに気付かない自分に怒りを覚えておりました。ですが……」
黙っていれば気が付かれなかったのに~ 墓穴を掘りました。
「えーと、キィ?」
「ルゥ様、不正はいけません」
「……不正じゃないもん」
ぷいっと横を向けば「ないもんって……」つぶやいたあと片手で私を抱きしめながらキィはふふっと笑い出します。
「キィ?」と見上げれば片手で口元を押さえて涙目のキィが見えました。
どうしのだろうと動けずにいると、通路の向こうからニールとディン様がひょっこりと姿を現します。
「どうしたの、姉様。……あー、キームンが姉様抱きしめてる! ずるい!」
「不可抗力です」
「もしかして、ルゥ転んだ?」
「うぅ……はい」
9歳になっても落ち着きがないと思われましたよね……恥ずかしいと顔を両手で覆います。
「それで、キームンはいつルゥを離してくれるの?」
いつの間にかセイ様も戻ってきたようですが、声がいつもより低く感じます。
「そうですね、私としてはこのままずっとでも構わないのですが。……この状況で3人は捌ききれそうにありませんね」
「賢明な判断だね」
「恐れ入ります」
「「……」」
キィが抱き留めていた手を離してくれたので、そろりと後ろに下がって二人を見れば笑顔なのに空気が重い。
ディン様とニールの方へ視線を移せばディン様は彼らとは反対の方向を見ていて、ニールはニコニコしていました。
……つい一週間ほど前に似たような空気感を味わったような?
せっかくの皆様でと一緒のおでかけなのに……こういう時、サミィお姉様やアル姉様だったら上手に収めることができるのにと自分の力不足に悲しくなってうつむいてしまいます。
「どうしたんだ、ルゥ」
石は見つかったか? と、にかっと笑って私に聞くディン様。
ディン様はこういう時に一番に気付いて笑顔にしてくれるのです。
見習いたいなぁ。それに……
「アル姉様みたい」
「うっ、あんま嬉しくない」
「アル姉様、素敵な人なのに……」
「う~ん、超えたい相手に似てるって、自分はまだまだなんだって思えるんだよ」
ふふっと笑う私に「素直に喜べないんだよなー」とディン様は苦笑いになって頭をガシガシとかきます。
そうでした。
ディン様は『打倒アル姉様!』って言っていますものね。
「ごめんなさい」
「ん~、まぁ今回はイイや。ルゥが笑顔に戻ったから。……ん? これもアル兄効果?」
うわー嫌だー!と頭を抱えるディン様の声に私とニールは顔を合わせて笑い、セイ様とキィもこちらに来て「「アールグレイ(様)の呪いだ」」とポツリと零していました。
……“かーす”ってなんでしたっけ? からす?
「姉さまは石、見つけられた?」
「……えぇと。いちおう?」
見せてとニールにせがまれて手の中の黒い石を見せます。
「すごい!」と驚いてくれましたが、先程のことがあるのでちょっぴり罪悪感です。
……キィの視線がイタイです。
もうしませんから許してください、以後気をつけます!
と、キィに向けてにへらと笑えば彼は仕方ありませんねと言うような苦笑い。
とりあえず、大丈夫。かな?
そろそろ制限時間という事で入口に戻って石を景品と交換してもらいました。
白石はディンが2個、ニールが1個。
私はあの黒石1個です。
白石の景品はこの植物園に咲いている花の種だそうで、咲くまでのお楽しみということ。
育てやすい花だそうです。
花の種を貰ったディン様は私に育てて欲しいとのこと。
ニールと一緒に育てて、ちゃんと咲いたらお返しにプレゼントすることにしました。
「良く見つけられましたね! 黒石の景品は特別なものなのよ」
「あ、ありがとうございます……」
受付のお姉さんの笑顔に若干の罪悪感を抱えつつ受け取れば、石のようなものの中にスターチスの花が入っているブローチでした。
〔記憶〕にある樹脂の作品のように見えますが、手触りはひんやりとしていて鉱石のようです。
お姉さんによると、この植物園で育てているある特殊な花の蜜や花粉と樹液を混ぜるとこういったものが出来るそうです。
たくさんは作ることは出来ないので、景品に使っているそうです。
それからスターチスの花言葉も教えてもらい、嬉しくてすぐに付けました!
セイ様とキィは見つからなかったので、参加賞の押し花の栞。
参加賞は全員もらえるので、全員で来た今日の思い出になりました。
これも嬉しい。
その後はディン様の案内で、こじんまりとした森の中のような雰囲気のカフェで一休み。
アル姉様のオススメ第二弾だそうです。
私としては好きな空間なのですが、セイ様とキィが何とも言えない表情をしていました。
こういうところは苦手なのでしょうか?
次からは気をつけなくてはいけませんね。
案内された席は 丸テーブルで私の左隣からセイ様、ディン様、キィ、ニールです。
暖かいお茶を飲みながら注文したケーキが来るまでの間、店内を見回しながら私だったらココにこう置いて~など想像していると、ふと視線を感じて左を見ればニコニコ顔のセイ様。
「セイ様?」
「なぁに?」
「えっと、なんでしょう?」
「ふふ。楽しそうだね、ルゥ」
「はい! 楽しいです。皆様と一緒にお出かけしてお茶もできて」
「そう、なら良かった」
セイ様は私の答えが嬉しかったのか、頬杖をつきながらとろけるように微笑みます。
だんだんと顔が熱くなってきたような気がして……このお茶ってハーブティーでしたっけ?
ぱたぱたと手団扇で扇いでいると、お待たせしました~と注文した数種類のケーキが盛られたお皿が運ばれてきました。
アル姉様オススメとあって見た目も綺麗で美味しそうです。
一番に選んで良いよと言われたので、迷いに迷った結果ベリーのタルトにしました。
セイ様は私が最後まで迷っていたショコラ&べりーのムースでディン様はフルーツタルト。
キィはミルフィーユでニールはロールケーキです。
いただきますと一口食べればサクサクのタルト生地にビタータイプのアーモンドクリームが合っていてその上は優しい味のクレーム・ディプロマットと色々なベリーたち。
カスタードクリームを使うことが多いので参考になりますね~
幸せを感じているとセイ様から「ルゥ」と呼ばれました。
「なんですか?」
「このムースと迷っていたでしょう?」
「はい。その味の組み合わせは良くしますが、ショコラのタイプはなにかな~と」
ビタータイプかミルクタイプか。
どちらとも美味しいですから迷うのですよね。
う~ん、やっぱり気になります。
「セイ様、いかがでしたか?」
「そうだね……ルゥが味見してみて?」
はいどうぞと今度は有無を言わせない微笑みのセイ様が私にムースを掬ったスプーンを差しだします。
……こういう時に王族の笑みは必要ないのでは!? と思いますが、お菓子の誘惑には勝てませんでした。
パクリとムースを食べれば舌の上で蕩けてすぐに消えてしまいましたが、酸味の効いたベリーのムースとそれに負けないビタータイプのショコラの心地よい余韻。
このお店はビター系がお好みなんですね。
「セイ様、ありがとうございます。美味しかったです」
「ふふ、良かった」
お礼を言えばあのとろけるような笑顔で答えてくれて、あぁまたさっきと同じになっちゃうかもと思ったら「あー!」とディン様の声。
ビックリしてそちらに向けば立ち上がりセイ様を指さす、顔の赤いディン様の姿。
「セイ! 抜け駆け禁止!!」
「してないよ」
「じゃあ、隣譲って!」
「ダメ」
「ディン様? 私と変わります?」
「それじゃ意味ないの!!」
「え?」
「あはは」
ディン様が怒ってセイ様が笑って。
「姉様、これも食べてみて! 生地に弾力があるよ!」
「ルゥ様、こちらの組み合わせも面白いです」
「あ、ありがとう?」
ニールとキィからも一口ずつもらって。
「ルゥ、オレのも食べてみて!」
「ディンのは同じタルトでしょう」
「セイ! ほっんと一言多い!!」
「いただきます、ディン様」
「ルゥ~」
「ちぇ」
「セイ!?」
「ん? なにかな」
「イエナンデモアリマセン」
みんなで笑って。楽しいひと時。
そっと胸元のスターチス入りのブローチを触りながら――願わくば、いつまでも続いて欲しい――思いました。
スターチスの花言葉。
――永遠に変わらない心、変わらない誓い――
読んでいただきありがとうございます!
誤字、改行修正2015/06/08 19:35




