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後日談02 ―夏祭り― 3 ディンブラと……

時系列順2番目はディンブラと。

 

 

 

 セイ様と『夏祭り』の本部に戻るとセイ様はお父様に呼ばれていき、私は迷子の子供のお世話をアル姉様たちとする係りです。

 アル姉様は大人気で親御さんが迎えに来ても「帰らないー」という子が何人かいましたが、「会場で面白い演出するわよ~」の一言で親の手を引いて急ぎ足で広場のほうへ向かって行きました。


 ずっと気になっていたので、アル姉様が演出のために他の方と交代するときに「もう少しヒントを!」とお願いしたら、“街灯に特製の魔術具を仕込んだ”というヒントを出してくれましたが……それだけじゃまったく分かりませんよ、アル姉様!


 余計に気になってどんなものだろうと頭の隅で考えつつ、お迎え待ちの迷子の双子の姉妹たちとお絵かきをしたり折り紙を教えていると、次の休憩時間となったようでディン様が迎えに来てくれました。


「ルゥ、出られそう?」

「えっと、たぶん……」

「「えー、おねえちゃん行っちゃうの?」」

「う、うん。ごめんね」

「「えー、もっと遊びたい~」」


 泣かれてしまうよりは懐かれて嬉しいけれど、別れる時の寂しさを紛らわす方法はどうしたら良いでしょう。

 私が迷っていると側まで来たディン様が彼女たちと目線を合わせるようにしゃがんで「ごめんな。このおねえちゃん、オレに貸して?」にかっと笑いかけます。


 ディン様に話しかけられた双子ちゃんたちはお互いの顔を見合わせて、それからディン様と私の顔を交互に見るとにこーと笑顔を向けて「「おにいちゃんはおねえちゃんの王子さま?」」と声をそろえて言いました。

 な、何を言うのですか!?

 た、たしかにディン様はセイ様の従兄弟で絵本に出てくる王子様のようでもありますし……うにゃー。


 今日は考えないで逃げたい気分になことが多いのはなんでなのでしょうか!?


「ふぇ? お、おうじさま?」

「おー、そう見える?」

 双子ちゃんの発言に慌てる私と対照的にニコニコと笑みを浮かべながら双子ちゃんの頭を撫でる苦笑いのディン様。


「残念ながらまだおねえちゃんの王子様じゃないんだよなー」

「「じゃあ、きしさま?」」

「騎士?」

「「お姫さまを守るのはきしさまなの!」」

「お、いいな。それ」

「「じゃあ、わたしたちはせいれーね」」

「精霊?」

「「お姫さまを守ってるのー」」

「あ、ああ。あの絵本か」

「「そうなのよー」」

「では、精霊様方。お姫さまをお連れしてもよろしいでしょうか?」

「「ちゃんとまもるのですよ、きしさま!」」

「仰せのままに」


 私が混乱している間にどうやらディン様と双子ちゃんたちとの間で話がまとまったらしく、にこにこと笑う彼女たちに恭しく騎士の礼をしているディン様が目に映りました。

 後で聞いた話によると精霊様が守っているお姫様を騎士様が連れ出して世界を見せて愛を伝えるという内容の絵本があるとか。

 そんな絵本は見たことないのです。我が家の蔵書は結構種類があったと思うのですが……。あとで誰かに聞いてみましょう。


 彼らのやり取りをぼーっと見ていた私の前に双子ちゃんたちが来て私の手を取ってディン様の前まで連れ出し、「「さあ、そとのせかいをみてくるのです!」」と言い私の後ろにさっと回り込んで腰辺りを勢いよく押しました。


「え? なに、きゃっ」

「ルゥ!」


 急な衝撃に耐えられず転びそうになったところをディン様が抱きとめてくれたので倒れ込むのは回避できました。

 ディン様から離れようとすると「ストップ」と言い私が動かないように手を回して「……って言って」と囁きます。

 え? 私が言わないとダメですか? とディン様を見上げれば「あの子たちの劇に乗ってやらないとさ」とウキウキしている様子。もっともな意見なのですが恥ずかしい。

 チラッと双子ちゃんを見ればこちらも何か期待しているようなキラキラした目で私のほうを見ていました。


 本をニールに読ことはありますが、演劇は無理です! そんな期待されても……うぅ、そんな目で見ないでください。

 あーうーどうなっても知りませんよ! ……覚悟を決めましょう。くすん。


 

「え、えーと。……き、騎士様。わ、わたくし、に。世界と……あ、愛を、教えて、くださいませ?」

「えぇ、必ず。私が貴女の望みを叶えましょう!」

 なんとか言い切った私のセリフのすぐ後にディン様は嬉々として騎士様のセリフを言い、私を所謂お姫様抱っこをして外へと飛び出しました。


 人間、ビックリしすぎると反射しかできないのですね。「「ばいばーい」」と手を振る双子ちゃんたちに自動的に手を振り返していました。自分の行動にビックリです。


 本部の裏手の人気(ひとけ)のないところで私を降ろしたディン様は私がジト目で見ているのを見てちょっとバツの悪そうな顔で「ごめん、ちょっと悪乗りした」と謝ってくれました。

 が、ちょっと意地悪が過ぎると思うので美味しかったマフマフを後で2カップ分買ってもらうことを約束しました!

 うふふ、これで研究できます♪



 気を取り直して、ディン様とも手を繋いで会場を見てまわります。

 アル姉様の演出が見たいのと、先程まで走り回っていたというディン様の休憩も兼ねてその時間までのんびりと過ごすことに決めました。


 私もディン様もそんなにお腹は空いていなかったので、飲み物を飲んだりフルーツをちょこっと食べたりして広間の真ん中にあるスペースで今は休憩中です。



「そんなに嬉しいの?」

 机に片肘をついて頬を乗せたディン様が楽しそうに笑っています。


「はい! ディン様に取ってもらったものですし」

「っ! そ、そうか?」


 休憩前に輪投げをしたのですが、私はあらぬ方向に飛んで行ってしまって何ももらえず。

 ディン様は1等のところに引っかかったのですが勢いが良すぎて飛び出してしまって、それでも3等にひっかかりました。

 その景品があの植物園が提供してくれた逸品! 花好きには堪りません!!


「それに花の種ですよ!」

「デスヨネー」


 花の種の入った袋を掲げるとディン様はガックリといったように机に突っ伏すようにうなだれてしまいました。

 やっぱり花好きではないと喜ばれないのでしょうか。

 私はとても嬉しかったので、目の前にあるディン様の柔らかい薄暗くなってきた世界にでも輝く金色の髪を撫でてみます。感謝を込めて。

 ディン様派一瞬ピクッと動きチラッと私を見た後、力を抜いて私のなされるがままになっていました。


 しばらく撫で続けていましたが、ディン様がもぞもぞと動き始めたので終わりにした方が良いと手を止めて「ありがとうございました」と告げれば、先程の体勢に戻ったディン様は「喜んでもらえて良かったよ」と満足そうに柔らかく微笑みます。

 なんだかこのやり取りが面白くて思わず二人とも笑い始めてしまいました。


 すると急に街灯の光が弱まっていってしまい、なにか不具合が出たのかと立ち上がった私の手をディン様が掴んで「大丈夫」と言って人差し指を空へ向けます。

 その手の動きにつられるように上を向けば、街灯から光がポンポンと生まれ空へと上がっていき弾けては消えるを繰り返す。


 花火のような蛍のような、心が湧き立つような鎮めるような。そんな相反するものが調和する不思議な感覚。

 幻想的でどこか懐かしさを感じる光景に目も心も奪われる。



 すごいよな……アル兄。とポツリと零すディン様を見上げれば、眩しいものを見るような、何かに挑むような表情で光を見ていました。


「これ作ってる時にオレも手伝ったんだけど、まだまだ敵いそうになくて悔しかった。でも同時に絶対に追い抜いてやるって思ったんだ」

 だから……と、私のほうに向き直って煌めく琥珀の瞳で真っ直ぐに私を見る。


「誰にも負けないように頑張ろうって思うんだ。目標に向かうことも、ルゥの事も」

「ディン様……」

「ごめん、なんかこの光景を見てたら言いたくなって」

 焦ってるつもりはなかったんだけどなぁと苦笑いでがしがしと頭をかくディン様に私は何も言えなくて。


 私が困惑しているのを見透かしたディン様は気分を変えるように手を差しだして「私と踊っていただけますか、お姫様?」とお道化たように言います。

 ビックリして周りを見れば、いつの間にか街灯の光は元に戻り、音楽の演奏が始まっていて人々が思い思いに踊っていました。


「私、こんなダンス知らないのですが……」

「こういう時は楽しめばいいだけだからさ。見よう見まねで大丈夫!」


 にかっと笑うディン様のこの笑顔につられて私も笑顔になり、私も成長しなきゃいけないと改めて思います。


「が、がんばります」

「では参りましょうか、お姫様?」

「はい、騎士様?」


 クスクスと笑いながら踊りの輪に入って時間までディン様と楽しい時間を過ごしました。


お読みいただきありがとうございます!


時系列3番目はニルギリです。


作中に出てきた絵本がルフナの家にない理由……

“黒髪の精霊”に守られた“紫の瞳のお姫様”を“金と銀の騎士”が連れ出すという内容が、モヤモヤしたためにキームンが隠しましたとさ。

という裏話があったりなかったり。

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