後日談02 ―夏祭り― 2 セイロンと…
時系列順最初はセイロンとお出かけ。
『夏祭り』がはじまる30分前――
カキ氷のシロップの最終確認も終わり、いつもの街に出るような服に着替えてセイ様を待っています。
本当で全員で出かけようとしたのですが、主催者側のお手伝いもあって時間を区切って遊びに行ける人が組んで楽しむことになりました。
残念ですが、今回が上手くいけば次回以降も開催できるのでその時までのお楽しみにしておきます。
ディン様とキィとニールは最初の時間帯は本部でお手伝いから始まるそうです。
私とセイ様が最初の時間帯がお遊びタイムです。
でも、とうとう始まるのですね……感慨深いです。
ほんの一言から企画書を作って、本当に形になるなんて!
嬉しいけど緊張しますね。
ドキドキする胸を押さえていると玄関のドアが開きました。
「ごめん、待たせたかな?」
「いいえ、時間ピッタリですよ。セイ様」
少し慌てたように玄関ホールへ足を進めるセイ様は私と同じようにラフな格好です。
私の前まで来ると目を細めて「ちゃんと付けてくれたんだね」と髪飾りにそっと触れて柔らかく微笑みます。
今朝キィに皆様からと渡されて今日のお祭りに付けて欲しいと言われた、前に皆様からいただいたブレスレットと同じ5色の石が花のように散りばめられている髪飾り。
いつももらってばかりで、申し訳ないなと思いつつ嬉しいです。
なにかお返しをせねばなりません!
そんな事を考えているとクスクスと笑うセイ様の姿。あれ?
「セイ様? 何かおかしいですか?」
「おかしいと言うか……ルゥ、百面相。可愛いよ?」
そう言って私の頬をふにふにと……触ります!?
「! せ、せいさま!?」
「ふふ、少しは緊張が取れた?」
「セイ様……ありがとうございます」
「実は私も少し緊張していたんだ。だからお互い様かな」
ニッコリと私を安心させるような微笑みを浮かべたセイ様は「じゃあ、行こうか」と手を差しだします。
セイ様と手を繋いでですかとちょっと逡巡しているとセイ様は指を絡めるように私と手を繋いで「時間がないから、ね?」と有無を言わさぬ笑顔。
何か言いたいような気もしますが、言ったら最後な気がするので諦めます。
気持ちを切り替えてお祭りを楽しみましょう!
「セイ様。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、少ない時間を楽しもう」
~~~~~~~~~
『夏祭り』の会場として解放された広場はドーナツ状と言いますか、真ん中のスペースを休憩場所として大きくとってその周りに屋台を配置してあります。
なので、ぐるっと一回りしても真ん中で休憩しながらも楽しめます。
提灯の代わりに街灯を彩るのは子供たちが作った紙の飾りたち。
七夕飾りの星やあみかざり、輪っかかざりなどなので雰囲気は出たかなと思ってます。
アル姉様の演出は半分くらいの時間が過ぎてからだそうです。
ヒントは街灯としか教えてもらえませんでした。気になります。
広場に入ってすぐに見てまわるのかと思ったらまずはベンチへ。
どうまわるか決めようとのこと。
そういえば、ここに来るまでお祭り以外の話をしていて特に決めていませんでした。
手を繋いだまま座るとセイ様はニコニコとした笑顔で私に聞きます。
「さて、ルゥはどこから回りたい?」
「う~ん、迷っちゃいます。セイ様はなにかありますか?」
「私が決めて良いの?」
質問に質問で返すのはあまり良くはないとは思いますが、屋台の申込みの種類を見た時から迷っていて決められなかったのです。
優柔不断なので、セイ様に決めて欲しいと思い頷きを返します。
セイ様はどうしようかな……と少し考えた後、少しはにかみながら私を見て「食べ歩きがしたい」と言いました。
「食べ歩きですか?」
「うん、ディンから話を聞いて一度してみたくて」
そうですよね。
つい近くで接してくれているので忘れがちになってしまいますが、セイ様は王族です。
まあ、食べ歩きをする公爵子息のディン様が特殊とも思いますが……
セイ様はあまりお願いを言ってくれませんので、今日は恩返しにいい機会です。
「楽しそうですね。ぜひ、してみましょう!」
「ありがとう、ルゥ」
柔らかく微笑むセイ様に私も笑顔になります。
セイ様は一度キュッと私の手を握り直して「気になっているものがあるんだ」といきいきとした表情で私を引っ張って歩きはじめます。
でも強くではなくエスコートしなれている感じなのでラフな服装とでちょっと違和感で面白い。
そんな事を言ったら、セイ様はクスクスと笑いながら「ルゥだってされなれてるよ?」返されてしまいました。あぅ、やぶへびでした。
セイ様の目的の場所まで小物屋さんを冷やかしたりして――
「どれも可愛くて迷いますね」
「じゃあ、全部買っちゃう?」
「せ、セイ様!?」
「ふふ、冗談だよ?」
「……今、反対の手が動きませんでしたか?」
「どっちでしょう?」
――歩いていくと、セイ様が気になっているというものはマフマフと言うお菓子の屋台でした。
スフレ生地を一口大に小さく焼いてジャムなどを挟んだお菓子だそうです。
洋風の小さいどら焼きみたいな感じでしょうか、何種類かを選ぶとカップに入れてくれるそうです。
色々な味があるなのでスタッフさんのオススメを数点とセイ様の好きなベリー味と私の選んだリモン味を買いました。
私はお菓子を知識をもらって作っていただけなのでオリジナルをつくれる人は素晴らしい。
自分なりに精いっぱいしているつもりだけど……もっと頑張らないといけませんね。
「ルゥ?」
「は、はい! なんでしょう」
考え込んでしまっていたようでセイ様に苦笑いで呼ばれてしまいました。
やってしまいました―。
「またお菓子の事考えているでしょう?」
「え? な、なんで分かったのですか!?」
「ふふ、だって私よりずっと屋台のほう見ているから」
かなり妬けるよとクスクス笑いながら、片手を繋いだままなので私が持っているお菓子の入ったカップからマフマフを一つ取り出して私の唇にポンポンと軽く当てます。
セイ様? と声に出そうと開いた口へと軽く押し当てるようにして「どう? 美味しい?」とセイ様は首を横に傾げながら聞く。
食べるまでこの体勢が続きそうなので大人しくお菓子をかじって味わいます。
ふわふわの生地にちょっと酸味の効いたベリーのジャム。これで十分美味しいけれどきっとセイ様はこの味にクリームっぽいものがあったほうが好きだと思う。
そう思いながらセイ様を見ると私がかじった半分をぽいっと自分の口に放りこんで味わって「クリームが欲しい」と一言ぽつり。
それを聞いて『やっぱりそうだった』とちょっと嬉しくなって笑うとセイ様に不思議そうな顔を向けられたので思った事が同じと説明すると珍しくセイ様の顔が赤くなりました。
「ルゥは私の好みがわかるんだね」
「うふふ、褒めてもなにもでませんよ?」
「それは残念。でも嬉しいものだね」
「なにがですか?」
「好きな子に自分を理解してもらえること」
「せ、セイ様!? あ、あの」
「落ち着いて、ルゥ。焦らせている訳じゃないから」
セイ様が急に真剣な眼差しになるので、なぜか焦燥のようなものを感じてしまい慌てる私を宥めるように頭を撫でる苦笑いのセイ様。
キィとはまた違った優しい手つきに落ち着いてくる。
一度深呼吸をして「すみません」と言えば、「良かった」ホッとしたように優しく微笑む。
「……ただ、本当に嬉しくて。今だけ、この時だけは私のことだけ考えて」
「セイ様……」
「ルゥが向き合い始めてくれているのは感じてるし、私は待つつもりもある。」
でも……とセイ様は一度目を伏せたあと、「使える手段は使わないとね」とニッコリと笑う。
その微笑みはまるであの時のサミィお姉様と同じなのですが!?
なにか寒気のようなものを感じてふるりと身体が勝手に震えます。
「寒い? 今度は暖かい飲み物でも買いに行こうか」
「そ、そうですね」
「その前にコレ食べてしまおうか。はい、ルゥ♪」
この上なく楽しいと言った表情でまた私の口にマフマフを持ってくるセイ様。
「ひ、一人で食べられますよ」
「だってルゥの手は塞がっているよ?」
「ベンチに降ろせば……」
「私は食べ歩きがしたいなぁ」
「は、はい……」
……えーと、今日はお祭りなのでちょっと流されてみます。
考えるのを放棄したわけじゃないですよ。……たぶん。
セイ様とはこのほかにチュロスや串焼きなどを食べたりしましたが、セイ様が食べさせることが楽しかったらしくマフマフ以降も全てそうでした……。
よ、良かったのかなぁ? と思いつつセイ様が楽しそうならいいかと納得していると……
――リン――
どこからか鈴の音が聞こえたと思ったらセイ様が「もう時間か……」と残念そうに言いました。
時間が分かる魔術具をアル姉様から渡されていたようです。
「そろそろ本部へ戻らないといけないね。ありがとう、ルゥ」
「私こそ、楽しかったです」
「私も楽しかった。ルゥは……いや、行こうか」
「? はい」
本部へ戻るまで繋いでいた手を離す時にちょっと寂しさ覚えたのはお祭りの雰囲気のせいなのか、それとも……。
お読みいただきありがとうございます!
時系列2番目はディンブラです。




