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後日談02 ―夏祭り― 1 準備

季節もの?

 (ララン)真っ盛りの暑さきびしい今日この頃。

 今日は待ちに待った夏祭りがあります。


 私が思い出した〔日本〕の夏祭りをこの世界用にアレンジしたものを5人で企画書にしてサミィお姉様に提出したところ採用されてセイ様の公務としてすることが決まりました。



~~~~~~~~~



 思い出した経緯は(ルフス)の加護持ちなのに (ララン)の暑さが苦手なディン様の「すっっごく冷たいお菓子が食べたい!」一言でした。


 シンプルなのに全然思い出さなかった『カキ氷』。


 それから他の屋台も思い出し……この世界になさそうなのは、カキ氷、綿あめ、チュロスにベビーカステラ、 焼きそば、たこ焼き、お好み焼き、ポップコーンにくじ引き、かたぬき、ヨーヨー釣り、輪投げに射的!


 そう思ったら反射的に「夏祭りがしたいです!」と言っていました。

 私が急に叫んだので4人ともビックリして「「「「夏祭り?」」」」と困惑してました。あはは。


 でも、宵闇に光る蛍のような提灯の灯りたち。

 昼間の暑さを忘れるような夏のひととき。

 〔小さい時の記憶〕はほとんどないハズなのに、出てきたということは本当に好きだったんでしょうね。


 うっとりと夏祭りの光景に思いを巡らせていたようで、皆様の私を呼ぶ声で一人の世界に浸ってしまっていたことに気が付きました。

 ハッとして皆様を見れば不思議そうな顔。

 取り繕うように、にへらと笑うとニール以外の皆様の顔が赤くなってしまいました。

 私にはこのくらいの室温でちょうど良いのですが、男の人には暑かったのでしょうか。

 ニールは暑くない? と聞けば「姉様、可愛いよ」との答え。

 何に対して? と言うか答えになっていないような……。



「ルゥ様。それで、『夏祭り』とは一体どういったものなのでしょうか」

 片手で口元を押さえて、何か堪えるようにまだ顔の赤みが取れないキィが尋ねます。

 そんなに私が可笑しかったのですか? むー。


 気を取り直して先程思いついたことを皆様に説明すると思いのほか好印象のようです。


「へぇ、面白そうだね」

「ルゥが言った料理、美味そう」

「食べ物だけかい、ディン」

「だって聞いた事ない料理だぜ? 気になる!」

「僕も気になる。……でも姉様が全部つくるの?」

「仮に侯爵家や知り合いの料理人に手分けをしても足りなそうですね」

「料理に関しては無理かなと思ってます。主に材料の点で」


 そうなのです。

 皆様に説明しているときに少し冷静になって気付いたのですが、〔日本〕と名称が違っていたり同じ材料をそろえるのが難しそうなのです。

 元々この国には和食系の材料が少ないのですし……あのサクラのある東国にならあるかもしれませんが。

 あ、考えてたらおかかとゴマの醤油おにぎりに海苔を巻いて食べたくなった。




「屋台に関しては全てというのは無理そうだけど、お祭り自体はいい案かもしれないね」

 企画書を作ってみようか? とセイ様。


「企画書、ですか?」

「そうだよ、ルゥ。姉上の手伝いでこういった事をしたことがあるんだ」

 少しはにかみながら言うセイ様。

 以前、少しずつ公務の手伝いができて大変だけれど楽しいと言っていましたね。

 「それに、実績があれば文句も少ないでしょう?」とぞくっとするくらい魅力的な笑顔を向けるセイ様に皆様無言。私も息が止まりそうになりました。



「『花祭り』や『収穫祭』の半分……今回は3割程度の規模で考えてみたらと思うんだ」

「夕方からでしたらそのくらいが打倒でしょう」

「それに今回は子供メインを考えて、ルゥの思い出したものを2、3個取り入れてみようかと」

「セイロン様、2、3個だけですか?」

「うん、きっと成功すると思うから楽しみは徐々にのほうがいいでしょう」

「だんだん姉様の言う『夏祭り』に近づけるようにするんですか?」

「そうだよ、ニルギリ。それで……」

 

 セイ様とキィとニールのぽんぽんと意見が出されていく様子に気後れしてしまい、言葉が出ません。

 ちゃんと負けないように進むって決めたのに……また一歩進むのが怖い。

 

 私と同じく3人から一歩引いているディン様は私が逡巡しているのに気付いたのか、ひょいと私を覗きこんでいつもの太陽な笑顔で「大丈夫だ」と笑います。


「オレも一緒だから大丈夫だ」

 それに……。と私の腰に手を回して私の身体をグッと引き寄せたディン様は囁くように言葉を紡ぐ。


「ルゥが迷うなら一緒に答えを探すって言っただろ?」

「……ディン様」

「それから……って、あっぶねーな! セイ! ルゥに当たったらどうするっ」


 突然言葉を切ったディン様の手が素早く動いたと思ったらその手にはなぜか定規が。

 どうやらセイ様が投げたようですが、今必要なもの……ではないですよね。


「心外だな、ディン。私がルゥに当てるように投げると思う?」

「思わないから性質が悪い!」

「ディンがルゥを抱きしめるのが悪い」

「横暴すぎない!?」

「そうかな?」

「そ、う、だ! それにお前らが話に夢中になっていただけだろう」

「それは否定できないね。ごめんね、ルゥ」

「いいえ、私の意見をまとめてくださっているのに」


 うつむきそうになった私の手を取ったのはいつの間にか側に来ていたニールで、私の手を取ったかと思うと、私の身体はニールの方へ引き寄せられていて夜空のような藍色の瞳に覗きこまれていました。


「姉様? 僕、姉様の『夏祭り』のお話をもっと聞きたいです」

「ニール?」

「それに姉様の不安は僕が取り除きたいんです」

「そうですよ、ルゥ様。ルゥ様の不安は私たちが払ってみせますから」

「キィ。……皆様は私を甘やかしすぎです」

「では、厳しくいきましょうか?」

 クスクスと笑いながら、するりと私の頬を撫でてから微笑みを浮かべるキィ。


「では、思い出せる細かいところまで教えていただけますか? 最初の段階で細かいところまで案を出しておいて、そこから今回できるものを探してきましょう」

「頑張って思い出しますね。皆様も気になったことあったら質問してください」

「りょーかい! オレも頑張る!」

「ディンはイイよ」

「なっ!」

「冗談。みんな一緒に、だよね?ルゥ」

「はい!」



 そんな感じで話し合いは続き、荒いですがなんとかまとめてお父様たちへ提出。

 何回かの提出し直しの末なんとか企画が通りました!


 和風の材料が少ないので思い出した料理関係の屋台は出来ないものも多いので、とりあえず今回は簡単に出来そうなポップコーン(ディン様のスタッセン公爵家)とカキ氷(私のメルローズ侯爵家)で出すことになりました。

 みんなで楽しむものなので家の名前は出さずに使用人さん達の合同のお店ような形で、ですけど。

 遊びに関しては一番簡単そうな輪投げをお父様の知り合いに頼むそうです。

 うふふ~楽しみ!


 お祭り自体は『花祭り』や『収穫祭』がありますから規模を小さく、夕方16時から21時までの時間限定のお祭りです。最初なので1日だけの開催です。

 12歳までは20時になると帰宅しないといけません。そのあたりはお父様たちに丸投げです。


 規模を小さくしたので私から価格を一定にすることとチケットを提案。

 価格に関しては全てではなく、少額で買えるものをつくると言った方が分かりやすいでしょうか。

 それに対応してチケットをつくると言ったところです。

 例えば、カキ氷1杯、ポップコーン(小)、串焼き一本、輪投げ1セットが同じ値段でチケットが1枚使える。

 チケットは後で現金に変換(登録屋台のみ)と言ったようにしたいと提案。


 案の定吃驚させてしまいましたが、私の中で『夏祭り』は“子供のためのお祭り”という意味合いが大きいのでお願いしました。

 これにノリノリで賛成してくれたのは偵察と言う名の応援をしにきてくれたサミィお姉様。

『財源? 予算? おほほ、それなら私とアルで狸畑から取って来るから大丈夫よ』とにんまりと愉快でたまらないといった笑顔でどこかへ消えたと思ったら1時間も経たないうちにアル姉様と数枚の書類を持って帰ってきました。

 私は見ませんでしたが、その資料を見たセイ様とキィが頬を引きつらせていたのをよく覚えています。

 

 

 それと、その年の『夏祭り』限定のうちわを記念品として作るということに。

 うちわ……実はありそうでなかったのです。

 火をおこすのに扇ぐ必要のない世界ですが、暑さをしのぐ魔術を全ての人が使える訳ではありません。

 扇子は高価なものに入ってしまうそうなので提案した時に喜ばれるとは思いませんでした。

 〔私〕はなぜか作り方を知っていましたし、幸いにもこの国にも竹があったのです。

 まだまだ知らないことが多いですね。


 アル姉様の提案で、何か面白い演出をしてくれるそうです。

「当日のお楽しみよ」と、とってもイイ笑顔で言ったのを聞いたウヴァ様とお父様が慌てて追いかけていましたね。

 ……アル姉様には前科があると見ました。



 企画書を一緒に作ったということでディン様、ニール、キィそして私の名前も書かれていました。

 未成年ばかりで良いのかと思ったらちゃんと宰相(ウヴァ)様と魔術師団団長(おとうさま)とアル姉様の名前もありました。あまり目立ちたくないのでひとまず安心。



 当日までに私たちがしたことは飾りつけを考えたりポップコーンとカキ氷の味を決めたりしました。

 色々と考えましたよー。

 みんなで楽しむお祭りなので、孤児院の子供たちに折り紙で飾りを作ってもらって(実は七夕飾りなんですけど)お礼にお楽しみ券を渡しました。

 遊ぶもの1回と食べ物2個分です。

 孤児院の子供たちだけではなく、会場の設置や飾り付けを手伝ってくれた子供にも配る手配はしてあるので、不公平感というのは少し払しょくされたかなと思っています。

 どの世界でもすべてを平等にすることは難しいですね。


お読みいただきありがとうございます!

この話のあとの個別話は夜に4人分投稿予定です。

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