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第8話 「初めての笑顔」

第8話を公開します。



20150605公開

 大きな人に縄で繋がれて、何時間も歩かされた後で着いた場所は石と木の板で出来た高い塀に囲まれた学校の様なところだった。

 途中で休ませてもらった時にたっぷりと眠れたし、【るみおねえちゃん】がずっと励ましてくれたおかげでなんとか美羽はここまで歩き切れた。

 ただ、美羽にとって不思議だったのは、目が覚めた後で大人たちの数が少なくなっていた事と、【おねえちゃんとおにいちゃん】に元気が無くなった事だった。


 縄をほどいてもらった後で飲まされた水はおいしく無かったけど、のどが渇いていたせいで夢中で飲んだ。

 【おねえちゃんとおにいちゃん】と一緒に座って休んでいた時だった。

 後に美羽の人生を変えることになる少女の名前を初めてちゃんと聞いた。

 その少女の名前はモリハルカだった。

 何度か【おねえちゃんたち】同士の会話に出て来た気はするが、はっきりと聞いたのはその時だった。

 切っ掛けは【まりなおねえちゃん】だった。


「さっき、アンタ達、またモリハルカさんの事を話してなかった?」

「あ、聞こえてた?」

「まあね。私も前から彼女の事は気にはなってはいたけど、今ではクウフクの次くらいにキョウミがあるわ」

「ま、私のエイキョウだろうけど。なんせ、私のジンカクケイセイにも深く関わっている子だから」

「例えば?」

「私のノウリョクは話したけど、それを彼女は最初から信じてくれたの。まあ、彼女自身もイジョウって事もあるのだけど」

「おい、それ以上は・・・」


 慌てて声を掛けたのは【けんたろうおにいちゃん】だった。


「もう隠さなくても大丈夫よ。こんな目に遭った仲間だもの。秘密を漏らさないでしょ?」

「ああ」

「うん、多分、大丈夫」

「もちろん」

「それに、万が一、私の予感が当たった場合、何も知らなければあの子を誤解するだろうし。他人の“空気”が見えるって言ったけど、あの子の兄妹は全員が他人と違うの。とんでもなく“濃い”というか」


 美羽は相変わらず赤ちゃんのままのお母さんの手を握りながら、【おねえちゃん】たちの会話を聞いていた。他にやる事が無いからだった。


「あの子、その気になったら、悪魔の様にも天使の様にもなれるよ。私は黒ハルって呼んでるけど、そんな時に近付くの止めた方がいいわ。精神がもたないもの。逆に白ハルのハルはもう堪らなく可愛いとしか・・・」

「うーん、それだけだったら、そんなに変わっているとは思えないけど」

「実際に目の前にしたら分かるわ。もし無事に帰れたら頼んで上げる。それと、あの子がうちの高校に来たのは私のセイセキに合わせただけで、その気になったらどこの高校でも合格するわよ。だって、ほぼ無敵な記憶力と計算力が有るもの」

「無敵な記憶力って何よ・・・」

「例えば、教科書に書かれている文字全てを覚えられると言ったら?」

「ヒキョウね。そんなの有り得ないけど」

「例えば、その記憶の中の教科書をグーグ●先生の様にケンサクが出来るとすれば?」

「確かに無敵ね」

「例えば、スウガクのホウテイシキを独自に編み出せるとすれば?」

「なにその天才?」

「例えば、中学生の段階で剣術の師範クラスの強さを持っていたとすれば?」

「え、その話、本当か?」


 声を上げたのは【つばさおにいちゃん】だった。


「橋本君には悪いけど・・・ 多分、どうやってもハルには勝てないと思う。反射速度が半端無いもの。お弁当を一緒に食べている時、目の前で、飛んでるハエを箸で挟まれた事も有るんだから、私・・・」

「宮本武蔵先生かよ・・・」

「その後、半べそかきながら箸を洗いに行ったわ。本人曰く、『蚊でも蜂でも飛んでる虫は私の箸の前では敵じゃない』って豪語してたわよ。あ、そうそう、飼っていた犬のノミさえも試したら挟めたとも言ってたわ」

「凄いんだか、馬鹿なのか判断に苦しむな、そこまで行ったら」



 美羽は思わず笑顔になっていた。

 

 今日初めて、楽しいから浮かんだ笑顔だった。


如何でしたでしょうか?


 さすがに鬱展開が続くと書いてる方もしんどいので、今回はちょっと明るめにしました(^^)

 少しでもクスッとしたシーンが有れば、mrtkは大満足です(^^)/

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