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妖御伽譚 下  作者: 鮎弓千景
古き慰霊碑にてー亡者の魂ー
8/22

がしゃ髑髏8

だが、避けてはまた次の攻撃が繰り出されるためになかなか隙を窺うことができない。


図体が大きいから、てっきりスピードは遅いと思っていたのだが…

こちらが見誤っていたのは確かだ。


「…っ!」


すかさず私が避けた所を鋭く攻撃してくる。

さすがというべきか…かなり闘い慣れしている。


「くっ…!」


がしゃ髑髏の大きな指先が頬を掠めた。

一瞬、大きくバランスが崩れる。


そこを逃さないように肩、脇腹と、次々とその鋭い手刀が襲いかかった。


なんとかギリギリの所で交わすも、寝衣を容赦なく切り裂いていく。

小さな紅い玉が滲んだ。


傷自体は浅くても表皮を切り裂かれれば、それはそれで痛い。

繰り出された攻撃を避け、私は肩口を押さえつつ軽い足取りで後退する。


その時、ドクン…と鼓動が高鳴った。

傷自体は大したことはない。ただの擦り傷、

これは確かだ。


なのに、何だろうか…

この熱さを伴う傷の疼きは。

ズキズキして、その痛みが体中をじわじわ侵食していく。


「うっ…!」


焼けるように痛い。熱い…!

思わず片膝をついた。痛みに息を吐き出す。


吐き出す息さえも、その熱を含んでいるように思えて…。

火照った頬をポタポタと汗が滴る。


「辭っ!!」


お稲荷さんが駆け寄ってきた。

疾風もくーん、と鳴きながら私に擦り寄る。


「辭っ、傷口見せてみろ!」

「はいっ…」


白に言われて肩口を覆っていた手を退ける。

傷口を白が覗き込んだ。


「くそっ、邪気が傷口から入り込んでやがるな…」


恐らくはその拒絶反応による熱が生じているんだろうと悔しそうに呟いた。

だからこんなに体が熱いのか。


「とりあえず、この場を切り抜けないとどうしようもないぞ。」

「は、はいっ…」


その言葉でゆっくりと立ち上がる。


「くっ…」

「まだイケるかっ?!」

「大丈夫ですっ…!」

「じゃあ、一気に退かせるぞ!」


足に力を込めて踏ん張る。

がしゃ髑髏の放つ強烈な邪気を吸わないように、袖口で再び鼻を口を覆った。


真っ直ぐに相手を見つめるのとは別に隣から風を感じる。

暗いのにも関わらず、ざわざわと周りがざわめいて…


ずいぶんと見知った気配。

お稲荷さんが変化したのだ。


子狐の影だったものは、私より大きくなっている。

すらりとした長身から滲み出るのは、四神に仕える上位の妖としての気品。


強さ、切なさ、祟高さ、恐れ…その全て。

ふわりと揺れる彼の尻尾は艶やかさを失わずして、そこにある。


疾風も竜巻を発生させていた。

その瞳には迷うことなく妖としての鋭さが宿っている。


ああ、彼らがいれば私はまだ闘える。

胸元から札を二枚取り出して構えた。


がしゃ髑髏はそれでも怖気づいたりなどせず襲いかかってきた。

三つはそれぞれ散らばって、その攻撃を避ける。


疾風が竜巻をがしゃ髑髏へとぶつける。

竜巻に飲み込まれ、骸骨はがらがらと大きな音を立てた。

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