がしゃ髑髏6
眠りについてどのくらいの時間が経っただろう。
ふと、耳にカチッ…カチッ…という音が聞こえた。
眠っているはずなのに、その音だけは妙にクリアに私の耳に届く。
何故かそれだけは…
一瞬、壁時計が時を刻んでいる音だと思ったが、近くで妖の気配を感じた私はすぐさま跳ね起きた。
ぶわぁ…
跳ね起きた瞬間に布団が強風に煽られたかのように飛んだ。
危ないところだった。
後一歩遅かったら大惨事になっていただろう。
突如として起こった強風により煽られた布団は、まるで鎌鼬にでもあったのか。
ボロボロになっていた。
それを見て、私の背中を冷や汗が伝う。
間一髪だった。本当に…。
お稲荷さんも疾風も警戒体制をとっている。
視線を巡らせるが、肝心の妖は見えない。
「慌てるな、辭。」
「ですが…!」
「いいか、焦りは隙をつくる。
慌てずゆっくり気配を追え。」
白に言われるがまま、私は瞳を閉じた。
妖の気配を追う。部屋の全ての気配を全身で感じとる。
お稲荷さんと疾風の気配…
それとは違う肌に纏わりつくような気配。
昼間感じた気配と同じだ。
「…!後ろです!」
ギンッ…と高い金属音が響く。
いつも緊急時にと備えている小刀を抜いた瞬間、何かと衝突した。
「くっ…!」
小刀とぶつかったのは、大きな歯…
この妖、私達を食べるつもりだった?!
『見つけた…』
地に這うような低い声。地獄の底からの悲鳴のような声。
ズズッ…と闇から何かが這い出てくる。
「ちっ…
久々に強者が出てきやがったな…」
こりゃ、やべぇかもしれねぇな…と、白が緊迫そうに呟いた。
声質が硬いことから本当に危ないというのが見て取れる。
闇から這い出てきたのは、大きな大きな骸骨だった。
普通の骸骨の何倍もある大きさだ。
漆黒の二つの穴がこちらを見つめている。
『見つけた…見つけた…楿の姫…強い力…』
「がしゃ髑髏がお出ましとはぁ…」
「これが、がしゃ髑髏ですか…」
がしゃ髑髏は戦死者や野垂れ死にした者など、埋葬されなかった死者達の骸骨や怨念が集まって巨大な骸骨の姿になった妖。
初めて見るがしゃ髑髏に圧倒される。
この禍々しいまでの妖気は、深く吸ってしまえばこちらがやられかねない。
袖口で鼻を覆いつつ、私はがしゃ髑髏から距離をとろうとする。
その瞬間、がしゃ髑髏が大きく口を開けて迫ってきた。
バッ…と一気に後方へと飛び退く。
何もない空虚の所をがしゃ髑髏の歯が、ガチンッと大きな音を立てて合わさる。
図体が大きい上に、このスピードではいつやられるか…
チラリと手に持っていた小刀を見た。
刃こぼれが酷い。
これではもう使い物にはならない。
カランッと小刀を捨てた。




