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妖御伽譚 下  作者: 鮎弓千景
古き慰霊碑にてー亡者の魂ー
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3/22

がしゃ髑髏3

こいつは、本当に地獄耳だな…とお稲荷さんは思った。


素直に言おうが言うまいが、後で物凄い目に遭わされる。

きっと…いや、絶対に聞こえていた。


ゆ、指切りだけは、勘弁だからなっ!

あの時の恐怖といったら…


「で?辭、今までどこに行ってたんだ?

あれ以上遅くなってたら、探しに行くとこだったんだからな!」

「心配してくれていたのですか?」

「なっ…?!べ、別に…。

ただ、辭に何かあったら怒られるのは俺だ。」


辭がそう問うと、お稲荷さんは急に顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。

相変わらずのツンデレというか、なんというか。


本当に素直ではない。

私と同じだ。よくペットは飼い主に似るというけれど、それは本当なんだろう。


「うっ…何だよ?」


じっとお稲荷さんを見ていると、白はジト目で問い返してきた。


「いえ、先程の質問なのですが…」


私は分家の裏山にある石碑について、お稲荷さんに話した。

白は興味深かそうに聞いている。


「石碑か…」

「はい…お稲荷さんは何か知っていますか?」

「残念だが、俺も聞いたことがない…」

「そうですか…」


さて、どうしたものか。


お互いに沈黙していると、疾風が私に擦り寄ってきた。

そのまま優しく黄色の毛並みを撫でる。


白はゆらゆらとフワフワの尻尾を揺らしながら、目を閉じている。

ふと白は片目だけを開けて、それよりも…と呟いた。


「辭。」

「はい。」

「早くお風呂に入った方がいいぞ。」

「え?」

「…死臭はな、俺達妖にとって時にマーキングとして使われるんだ。」


マーキング…

その言葉をいち早く咀嚼し理解した辭は、バッと立った。


膝にいた疾風がコロリと転がる。

そして、くーんと鳴いて無垢な瞳で辭を見上げた。


「疾風、ごめんなさい。

また後で遊びましょうね。」


ニコリと笑うと、お稲荷さんにお風呂に入る旨を伝えて部屋を出る。

足早にお風呂場へと向かった。


マーキングとして使われるということは、即ちそれは他の妖に、これは自分の獲物だということを知らせる為。


そして、お稲荷さんが早くお風呂に入った方がいいと言ったのは、近くまで妖が迫ってくる可能性が高いから。


問題はいつ付けられたのか。

それについては大体の見当はついている。


恐らく石碑でだ。

やはりあの時感じた妖の気配は、気のせいではなかった。


お風呂でゴシゴシと見えない匂わないマーキングを落とす。

死臭は妖にしか見えないし匂わないものらしい。


湯船に浸かっている時、裏山の方から妖の気配を感じた。


間違いない、確実に来てる…

裏山から分家までは少し距離があるが、差ほど離れていない。


今夜辺りか、遅くて明日の朝方。

その妖はここに来る…!

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