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【日輪の魔女】~蘇りし最強の魔女と日本魔導帝国の逆襲~  作者: 仏滅


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前史

趣味です。

 未曾有の被害を出した第一次世界大戦。

 新進気鋭の専制国家、ドイツ帝国の野望が、ここに潰えた。


 1919年にヴェルサイユ条約が結ばれ、世界は不戦ムードに包まれていた。


 しかし、その十年後。1929年、突如として世界に変革が訪れる。


 魔法。

 想像上の産物であるはずのそれが、現実化したのである。


 突如として発見された新エネルギー。後に魔力と呼ばれるようになるそれは、大気中に漂っているほか、人体にも含まれていることが判明した。

 それをどうにか利用できないかと試行錯誤が続けられ、ついに、体内魔力を用いて超常現象を引き起こす魔法が発明されたのだ。


 魔法は、瞬く間に全世界に広がった。


 魔法を自在に操れる人々が、軍事、経済、政治を牛耳っていく。若ければ若いほどより強力な魔法が扱えたことから、これが各界の指導者の低年齢化にも繋がった。


 1930年。列強と呼ばれる先進諸国の首都上空にて、突如として高濃度の魔力の塊が観測された。その塊は周囲の魔力を取り込み、人の形を取って具現化した。

 殺戮に特化した戦略級魔法を操る未知の生物………【魔女】の登場である。


 人型ではあるが、明らかに人類ではない。【魔女】はそんな化け物であったが、何故だか全員の外見が女性であった。


 政治、経済、軍事、科学技術、あらゆる分野で魔法を使う人々が台頭する中、第一次世界大戦で敗北、またはその結果に不満を持っていた列強諸国では、国民の不満を背景に、圧倒的な暴力の権現である【魔女】が独裁体制を確立した。


 古代ローマ帝国の復活を夢見るイタリアの【灰狼の魔女】ビアンカ=ルッジェーロは、国号を大イタリア帝国として、海軍の増強に乗り出した。


 太平洋の確保を目指す日本の【日輪の魔女】あさひ 陽花はるかは、国号を日本魔導帝国として、因縁の相手、中国へ工作を仕掛けた。


 第一次世界大戦の復讐を謳うドイツの総統、【黒鷲の魔女】アデーレ=グレッシェルは、国号を神聖ドイツ帝国として、旧ドイツ帝国領の回収に乗り出した。


 魔法の登場により世界が大混乱に陥る中、この三国は手早く適応し、魔法を科学に応用した魔導科学を発展させ、魔導兵器を量産した。

 そして、圧倒的な軍事力を手に入れたこの三国は、それぞれ自分勝手に侵略を始めていった。


 エチオピア帝国を滅ぼし、アルバニア王国を併合したイタリア。

 オーストリアを併合し、チェコスロヴァキアを解体したドイツ。

 中国大陸に介入し、満洲国を建設し、日中戦争を開始した日本。


 この脅威に対抗するため、他の列強諸国も、【魔女】をトップとする独自の体制を確立していく。


 日本に太平洋の覇権を取られることを危惧していたアメリカでは、臨時選挙で【魔女】の【自由の魔女】オリヴィア=マッキンリーが大統領になった。

 ソビエト連邦でも、【真紅の魔女】アナスタシア=タラソフが権力を掌握し、大粛清を行った。


 また、ドイツに対抗するため、【博愛の魔女】マリアンヌ=ヴァリエが臨時大統領となったフランスと、【三舌の魔女】ソフィア=アレンが挙国一致内閣を設立した大英帝国イギリスが手を組んだ。


 そしてソフィア=アレンは、急速に成長するドイツを止めるため、ある策を実行する。



 

 1939年の夏。第一次世界大戦後にドイツ帝国からポーランドに割譲されていた”ポーランド回廊”と呼ばれる地域で、暗殺未遂事件が起こった。

 ポーランドの指導者が狙われたのである。犯人はドイツ人の青年であるとされた。


 ポーランド政府はこれに激怒し、イギリス、フランスと手を組んでドイツに宣戦布告した。


 突然の宣戦布告に驚いた【黒鷲の魔女】は、お世辞にも仲が良いとは言えない【真紅の魔女】アナスタシア=タラソフ率いるソ連と手を組んだ。

 危機的状況の中で、ソ連まで相手にしている余裕がなかったのだ。

 これが、かの有名な独ソ不可侵条約である。


 ドイツ軍はポーランド軍に次第に押されていった。しかし、突出しすぎたポーランド軍主力が丸ごと包囲されて殲滅されたことで、戦況が変わる。

 【黒鷲の魔女】の虎の子である大戦車部隊がポーランド領内に逆侵攻を開始した。魔改造され、海も走行できるようになったおかしな戦車部隊である。

 そして同時に、【真紅の魔女】率いる革命軍も東部ポーランドに侵入した。


 予期せぬソ連の攻撃に大混乱に陥ったポーランドは、瞬く間に崩壊し、ドイツとソ連は協定を結んでポーランドを綺麗に東西分割した。

 

 ポーランドを滅ぼした総統の目は、次はフランスに向いた。


 【博愛の魔女】がドイツとの国境部に建設した巨大な要塞線は、魔導兵器と大戦車部隊によって蹂躙され、あっという間にパリが陥落し降伏。マリアンヌ=ヴァリエはイギリスに亡命した。


 ドイツと同盟を組んでいたイタリアは、しかし、未だに参戦していなかった。最初は劣勢であったし、まるでギャンブルのような危なっかしいドイツの作戦は、失敗に終わるだろうと思っていたからだ。

 しかしドイツは、フランスを降伏させ、西ヨーロッパをほぼ掌握した。


 これに遅れまいと大イタリア帝国は英仏に宣戦布告し、地中海に自慢の魔導艦隊を解き放った。

 戦略的に重要となるジブラルタルやマルタ島などを陥落させ、イタリア軍はついにエジプトに上陸した。北アフリカで戦っていた大英帝国の守備隊は、挟み撃ちされる形となり、エジプト北西部のエル=アラメインで全滅した。


 1941年、日中戦争に行き詰っていた日本魔導帝国は、中華民国の臨時首都”重慶”の上空で、【日輪の魔女】自らが戦略級魔法を使って脅しをかけるという強引な方法で講和を強要し、中国東北部と山東半島、上海を手に入れ、満洲国を承認させて戦争を終えた。


 そして、ドイツ軍の快進撃を見たあさひ 陽花はるかは、列強諸国の目がヨーロッパに向いているのを好機と捉え、東南アジアにある英仏植民地を手に入れるため、英仏に宣戦布告した。

 世界最強の魔導艦隊である”連合艦隊”を擁する日本は、2ヶ月ほどで東南アジアを掌握し、中立を保っていたタイ王国に圧力をかけて陣営に引き込んだ。


 この行動に”待った”をかけたのが、【自由の魔女】オリヴィア=マッキンリー率いるアメリカ合衆国である。元々日本のことを快く思っていなかったアメリカは、太平洋の覇権を日本に奪われると考え、日本に対して東南アジアと中国からの完全撤退を要求した。


 当然、【日輪の魔女】はこれを拒否し、日ソ中立条約を結んで後方の憂いを断った後、アメリカの前線基地となっていたグアムに戦略級魔法『爆炎華』を叩き込んだ。

 太平洋戦争の始まりである。


 地上は魔導特殊作戦群が、海上は連合艦隊が連戦連勝で、日本軍は西はハワイ、東はインド中部までを掌握した。


 1941年、日独伊三国同盟が締結され、「今後、世界はこの三国を中軸として回る」との宣言がなされた。俗に言う中軸国の形成である。


 中軸国の相互参戦の協定に基づき、ドイツとイタリアがアメリカに宣戦布告すると、アメリカはイギリス、フランスと組んで魔女円卓会議共同宣言を発表。日独伊の魔女独裁体制の打破を訴えたが、中軸国の勢いは止まらず、中軸国に味方する国も現れ、その勝利は確実と思われていた。




 しかし、1942年の春。情勢は一変した。


 ポーランド分割以降は静観していたソ連の【真紅の魔女】がついに動いたのである。

 ソ連は、突如として独ソ不可侵条約と日ソ中立条約を破棄し、ポーランド西部と満洲国に同時侵攻を開始した。


 予期せぬ侵攻に、まともな防衛隊が置かれていなかった満洲国は即座に解体し、日本軍は中国及び朝鮮半島から追い出された。ドイツは辛うじて国境に防衛隊を置いていたが、大英帝国への上陸作戦中であり、対処が遅れる形となった。ドイツと同盟していたルーマニア、ブルガリア、ハンガリーが降伏し、ソ連軍はドイツ東部に進撃した。


 ドーバー海峡から急いで帰ってきた【黒鷲の魔女】と大戦車部隊は、何とかソ連軍の進撃を食い止めることに成功したが、以後膠着状態が続いた。


 一方地中海では、大イタリア帝国が、自慢の魔導艦隊が大英帝国の帝国大魔導海軍ロイヤルネイビーによって壊滅し、さらにはエジプト、リビアを失陥して追い詰められていた。

 相次ぐ敗北で国内が混乱していた上に、突如として首都上空に現れた【博愛の魔女】マリアンヌ=ヴァリエの襲撃で、ローマが壊滅した。

 ここぞとばかりに反魔女独裁を掲げる秘密結社が武装蜂起し、国内は大混乱に陥った。【灰狼の魔女】ビアンカ=ルッジェーロはマリアンヌ=ヴァリエに捕縛され、アメリカ合衆国に輸送されたのち封印された。


 中軸国の一柱が、早くも崩壊したのである。


 イタリア半島を北上した反乱軍は、そのままドイツ国境を越え、ソ連軍と接続した。


 唐突なイタリアの戦線離脱に大混乱に陥ったドイツ軍は総崩れとなり、【黒鷲の魔女】アデーレ=グレッシェルはソ連軍に連れ去られたが、アメリカ軍がそれを強奪し、ビアンカと同様に本国に輸送して封印した。


 そして年が明け、1943年になった。たった1年にして、戦況は大きく転換した。


 残る中軸はただ一柱、日本魔導帝国のみ。


 その日本魔導帝国も、ハワイからインドに及ぶあまりにも広大な占領地があだとなり、戦線が綻び始めていた。

 【日輪の魔女】は、樺太から自ら突入してきた【真紅の魔女】の相手をするのが精一杯で、インド戦線への支援が途絶えた。インド戦線は次第に押し戻されていった。

 連合艦隊も流石に多勢に無勢であり、次第に分断され、各個撃破されていく。


 だが、最後の一柱は、そう簡単には倒れなかった。


 アナスタシア=タラソフは、あさひとの戦闘で重傷を負い、【魔女】の補助を失ったソ連軍の侵攻は止まった。


 愚かにも、イタリアと同じように首都への直接攻撃で解決しようとしたマリアンヌ=ヴァリエは、あさひに逆に捕縛された。その行方は今でも分かっていない。


 連合艦隊の残党は、太平洋上で強襲攻撃を繰り返し、敵の補給網をかき乱した。


 日本列島は巨大な防衛結界で覆われ、不沈空母となり徹底抗戦を続けた。こうして防戦一方ながらも、2年近く耐え続けたのである。


 しかし、1945年9月23日。太陽の帝国に終わりが訪れる。

 防衛結界を破り侵入した【自由の魔女】オリヴィア=マッキンリーが東京を強襲した。

 迎撃に出た【日輪の魔女】は、圧倒的な魔力をもって侵略者を撃退する。しかし、その裏に隠れていた【三舌の魔女】ソフィア=アレンの強襲によって意識を奪われ、封印された。


 こうして中軸国の野望は潰え、生き残った3人の【魔女】たちによる新世界が幕を開けたのである。

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