- Limiter Removal - 超格上との戦い
71話
~リジョン・バルディ視点~
『グオオオオオオオッッ!!』
咆哮と共に、岩をも溶かす業火が迫り来る。
「2人とも合わせて!!」
『了解!』
「おうよ!」
そこで、ミュールが軸となり、地面から斜め上に
岩を隆起させる合技を繰り出す。
「『「射出・巨岩塊!!!」』」
ヴィヴィアンがミュールと同系統の魔力を
ありったけ加え、岩のサイズを爆増。更に、
ミュールの戦槌の振り下ろしに合わせ、俺様が
両手斧を叩きつた事で、地面に加える衝撃の
増加に比例して、岩塊の射出速度を爆増させたぜ!
『ゴウッ!!』
「「やった!」」
それぞれのブーストの甲斐あって、至近距離まで
迫っていた業火を、押し退ける事に成功した。
「くっ…………」
だが、ミュールが顔をしかめた通り、岩は一瞬で
溶け、その先の岩壁を溶かしつつ、押し返してきた。
『もう一度よ!』
「ぬぅりゃっっ!!」
対処法は、俺ら十八番のごり押しだ。岩塊が溶ける
前に、マグマに風穴をぶち開ける!!
「空いた!…………けど」
「落ちてくる!!」
無事、風穴を開けれたは良いが、上や左右から
挟み込む形で、マグマが迫ってきやがる。リョウと
ミュールが随分と焦っているが、んなもんへでもねぇ!!
「ボケがぁ! この程度の液体、風圧だけで凌ぎきれる
わぁ!!! オラァァアアアアアア!!!!!」
『ズドドパァァン!!!』
こんな時こそ、鍛えた筋肉がモノを言う!! 両手斧
を団扇の要領かつ超音速で振りゃあ、前方の風穴位
広げられるわぁ!!
「俺、コッチ広げる! オラララララッッ!!」
少し前まで高度な連携に付いてこれていなかった
ティグも、両腕の風圧で左側のマグマを押し退け
始めたぜ。良いねぇ、それでこそ心友だ!
「アンドレさん!」
『絶技・超嵐鎌鼬!!』
ここまで動けば、リョウが我に返らない筈もなく、
いつもの名采配で、力を集約したアンドレの斬撃で、
右側のマグマを担当した。
「(ここに6発!)ドラゴンに気をつけて駆け抜けて!!」
そして、ミュールが落下寸前のマグマ6ヶ所に、
飛ぶ打撃をピンポイント炸裂させ、稼いだ時間で
俺らは野郎の動向に注意を払いながら駆け出した。
『グオオオッッ!』
「かわしまくれっっ!!」
野郎が放つ、無数の火球に対し、俺は速度で、
ミュールは体捌きと岩隆起で、難なく回避をする。
「ガルアアッッ!!」
ティグはミュールより少し速いお陰で、どうにか
回避出来ているようだが、ブレイン派のリョウの安否
がちっと気になった。
「流石レオンさん!」
『この程度、容易く阻める。ゲイルの足と合わされば、
鎧小僧に引けば取らん!』
別で頑張っているであろうチックを引き合いに、
レオンが防衛力を見せつけていた。問題ねぇな!
「!、ゲイル!!」
『ガルルッ!!』
ティグに迫る炎を見て、リョウはゲイルを走らせた。
「レオンさん!」
『むぅん!!』
「助かった!」
こんな感じで体感時間30秒程、現実時間3秒程度
で、まずは俺様が奴の懐に潜り込んだぜ。
『グオッッ!!』
「オラァ!!」
爪攻撃を難なく掻い潜り、鳩尾に飛び蹴りを
お見舞いしてやった。斬撃が効かねぇなら、打撃
を無限に蓄積してやらぁ!!
(縮地!!!)
野郎が膝蹴りを繰り出す前に、野郎の腹を最速で
かけ上がる!
「折れろぁ!!」
首を通過中に、回し蹴り! そん時の反動を駆使して、
顎を蹴り上げだぜっ!!
『食らいな!』
「岩砲撃!!」
本来、石を高速で飛ばす技を、ヴィヴィアンの
強化で岩サイズかつ、カッチカチにして、ミュール
が飛ばす!!
『グウ…ゥオ!』
野郎が一瞬、ミュールの方向を見た瞬間に、気道
を蹴り込み、同時に地面へと離脱!
(…………欠片も効いている気がしねぇ。斬撃はかすり
傷にも満たねぇ跡だし…………跡は、ある…………!!)
俺は超ペースで縮地を繰り返し、平面的に縦横無尽
な動きを始めた。
『ニッ…………グオオオオオ』
当然、野郎は炎で奥のミュールごと一掃しようと
するよな。
『「ハイパー・鎌鼬!!」』
ティグ、アンドレの、異色コンビによる鎌鼬が、
野郎の口に直撃だ!
『パァァァン…………』
…………直撃したは良いが、野郎は炎ごと鎌鼬を
噛み砕きやがった。んで、ずっと縮地するのは
スタミナがキツいぜ。
『グオオオッッ!!』
野郎は一瞬目線を泳がせて、俺らを錯乱した後、
俺とミュールの方向に速射性重視の火炎を吐いた。
「おらよっ!!!」
俺は前に出て回避しつつ、回り込んで尻尾に斬撃を
お見舞いした。
『ドロドロ…………』
ミュールは…………、炎に飲まれる直前、隆起した地面
を蹴って、マッハで跳んだ事で、回避に成功していた。
その上、隆起した地面が溶かされる寸前に、半径1m
程度の円盤を射出しており、それを足場に戻ってくる
算段らしい。
そして、俺の両手斧なのだが…………、
『ピシィ…………』
(チッ…………)
片方の刃に、ヒビが入った。"斬撃"を繰り出せるのは、
反対側から1発が限界だろうな。
『グオオオオオオオッッ!!』
「「!!」」
野郎は、ギリギリの俺やミュールに追撃を加えるの
ではなく、ティグとリョウに接近戦を仕掛けた。
「クソガァァアアア!!!」
効かねぇと分かっていても、俺は野郎を追従して、
拳や蹴りを入れずにはいられなかった。
超音速で迫る炎の牙。ティグもリョウも、ステップ
の距離が全く足りねぇ。
『グワオッ!!!!!』
窮地を救ったのは、ゲイルだった。両前足でリョウ
を、両後足でティグを弾き飛ばすことで、十分な回避
距離を確保。しかし、全てを焼き消す牙が、ゲイルを
噛み砕いた。
『…………グォ?』
なーんてな、零体のゲイルに、どんな物理攻撃も
効くわけねーんだよ!!
『ガルルルルルルァッッ!!!』
そして、野郎の広い口内で、ゲイルが暴れ狂う!
『グオオオオオオッッ!!』
残念ながら、効いていないようだが、それはゲイル
に対して吐いた炎も同じ。
この無防備な隙に、俺は野郎の頭上へ飛び上がり、
「だりゃあああっっっっ!!!!」
「ヌリャアアアッッッッ!!!!」
『ガルルルルァッッッッ!!!!』
回転落下中のミュールの戦槌に被せるように、俺は
両手斧のひび割れた面を、野郎の身体からすり抜けた
ゲイルは、拳を叩きつけた。
狙うは、鋭い衝撃による、脳震盪!
『グオオ…………オオ…………??』
ダメージこそ、1%も出ていないかもしれねぇが、
確かに脳震盪を起こしているようだ。
だったら、
「お前ら、奴に深傷を負わせる策がある。時間稼ぎを
頼めるか?」
アレを試すには、今しかねえって事だ。
「どれくらい掛かるの?」
だが、時間は少ねぇ。ミュールがこう聞くのも当然
だ。時は鐘鳴らす…………だったか?
「10秒以内にやる!」
「稼ぐわ!」
「うん!」
「やってやらぁ!!」
『グオオオオオオオオッッ!!』
全友が納得し、怒れる厄災が動き出した瞬間、各自
が作戦を始める。
「ウオオオオオッッ!!!」
俺は、兎に角後方へと下がる。それこそ、クソダセェ
敗走者のごとき勢いで。
「はあっ!」
『『『『『『ボゴッ!』』』』』』
ミュールは、大小様々な土人形を生やした。
「お前、俺らの見分けつかない!」
「人間様に、オツムで勝てるわけないよー!」
その間に、ティグとリョウは挑発をした。
『グオオオオオオッッッ!!』
脳震盪に、憤怒。野郎の業火は、吐き始めこそ多数
の土人形を気化したが、その後2秒は明後日の方向に
吐き尽くされた。
『ミューちゃん!』
「おりゃあああっっ!!」
ヴィヴィアンが生成した岩石を、ミュールが野郎
にぶつける。
『グオッ…ッツッ!?』
野郎に直撃した岩石が砕け、ミュールサイズの人形
になる。野郎は人形に爪を振るうが、盛大に外した。
『グオオオオオ!!』
『バラッ!』
もう一撃と爪を振りかぶった瞬間、ティグの爪形の
飛ぶ斬撃で、人形が崩れ落ちる。
『グォオ?…………グオオオオオッッ!!』
野郎からすれば不思議極まりない現象により、
1秒もの棒立ち時間を稼ぐことに成功した。
そして、
「ジョセフ!」
俺は、後方のジョセフの元に到着した。
「俺に、ありったけ振動を寄越せ!!」
賭けだった。急に現れた俺に、コイツが直ぐ様適切
なバフをかけられるか、否か。
「任せよ! 振動付与!!」
刹那、俺の全身に、過去最大の振動が宿った。
「恩にきるぜ心友!!!」
『ドォン!!』
準備が整った瞬間、俺は"音速"で厄災へと駆け出した。
(カス以下でも、傷は付けれたんだ。俺とカルロスさん
の違いは、"振動"の有無。だったら、限界まで振動を
纏って、切れ味最強の一撃をお見舞いしたらどうなる!!)
前を見ると、野郎は数秒前より我を失っていた。
俺は本当に最強で面白ぇ大心友達を持ったようだな。
『う"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"!!!』
全筋力を、
『グオ!?』
全MPを、
『(もらった!)絶振!!』
衝撃波を、
『超昇斬撃!!』
発声を全て込めた片刃斧で! 腹をカッ捌く!!!
「見て…………!!」
「おお…………!!」
「いけーーーー!!」
『グワオーーー!!』
家族を守るため、彼は自らにとって力不足すぎる、
壊れかけの斧を振り上げた。
流れに沿わねば、人類最強の攻撃力すら、はね除ける
"厄災の鱗"は、破損間近な初心者用両手斧の通過を、
"確かに許した"。
最後まで御覧くださりありがとうございます。




