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誘き寄せられる厄災共

お久しぶりです、今日と明日は

複数話更新予定です。

69話


~グロリアス王国~


「ふぅ、これで傷は完治しました。栄養食をどうぞ」


 連続治療により、ローリーには若干の疲れが

見てとれる。


「ありがとさん。戦いの方も終わったようだぜ」


「あんなに沢山いた群れが…………数十分で全滅する

なんて…………」


 治療した冒険者が指差す方向を見ると、王国を

囲い潰さんとしていた群れが、全て(しかばね)と化して

いた。


 その最前線では、デュランが…………


「…………聖女、怖すぎんだろ」


 震えていた。何に、と、問われれば、彼が見ている

方向にいる聖職者の女、


「はぁあぁ~~~~…………、これでもう、貴方達の

魂は浄化されました。来世にて、私のような特のある

人物に生まれ変わることを祈ります。アリス・ホープ

シャインより」


 アースヒーローズの回復役・アリスに、である。


(俺ごとモンスター共を消滅させようとしたことに

始まり、エゲツねぇ光線で群れを瞬殺しやがった。

規模で言えば、サタヤナの脳筋魔法と同等以上

だったぞアレ…………)


 回復役とは思えない破壊力の攻撃魔法で、攻撃役が

泣きたくなる程の戦果を挙げていたのだ。加えて、


(モンスターを(ほふ)るときのあの顔…………聖女とか天使

というよりは…………"悪魔"って感じの狂気が放たれて

いなかったか?)


 モンスター虐殺時に表面化していた、狂気の表情。

これが、デュランを心底震え上がらせていた。


「ともあれ、誰かが死んだり、回復係のあの娘が

ぶっ倒れる程の怪我人が出る前に、片付いて良かった

ぜ。他の場所に人手が居れば、俺が向かいますぜー、

ワイルドさーん!」


 デュランは持ち場を守りきり、達成感と(あん)()

包まれた。しかし次の瞬間、彼の五感はアリス以上

の"恐怖"を捉えた。


(スゲェ揺れに…………え? 雑魚を追い立ててるあの影

ってまさか…………)


~ウァームタウン・北門~


「よ、良かったッス、アッシの魔法が雑すぎて、結構

外しちゃったッスけど、皆の基礎力が高かったお陰で

何とかなったッスね!」


 防衛が無事に完了し、サタヤナも一息ついていた。


「姉ちゃん、スゲー魔法をぶっぱなせるんだな」

「一瞬、ローズさんが援軍に来たかと思ったぜ」

「良かったら、俺らのパーティーに加わってくれない

か? 討伐数に応じて、クエスト報酬の分け前を増やす

からさ」


 そこへ、彼女の力を欲して、中堅冒険者パーティが

勧誘に来た。


「申し訳ないッスけど、アッシもパーティっぽい

集まりに属しているので、お断りしますッス」


 だが、サタヤナはデュランとチックの顔を思い

浮かべ、丁重に断った。


「う~ん、君みたいなハイスペックな娘を相手に、

俺達も簡単には引き下がれねぇよなぁ」


「そのパーティーに彼氏とかいるなら、一緒に迎え

入れるよ」


NT(ネト)R^2(ラ・レ)展開は絶対しねぇって、天地神(てんちじん)(めい)に誓うよ

~~!」


 しかし彼らも、少なくとも表面上は、向上心

(あふ)れる(まっと)うなパーティである為、簡単には

引き下がらない。


「彼氏とかは居ないッシ、それでもお断りしまッス

が、お三方の実力を大幅に上げれる、アッシの集まり

が属している集団を紹介するッス!」


「集まりが…………」

「属してる…………」

「集団?(…………てか、彼氏無しの娘に断られる俺ら

って、どんだけ魅力ねーの!?)」


「そうッス、アッシと同僚の男2人は、その集団で

"筋肉"を鍛えることで、単なるレベルアップでは

得られない"基礎力"を獲得s…」

『グワオオオオオオオオオッッッ!!』


 サタヤナが説明している途中、"竜"の咆哮(ほうこう)

(とどろ)いた。


『西門に、厄災・グリーンドラゴンが接近! 各門の

実力上位10名は、直ちに西門へ向かえ!』


 そして、司令塔からも、状況と命令が伝えられた。


「(ここには竜は見当たらないッス。ならば、)お話は

後でッスゥ!!」

『バヒュン!!』


 これを受け、サタヤナは今いる門に竜が迫って

いないことを確認すると、一目散に駆け出した。


「「「は、速ぇえ…………」」」


 先程の説明にあった"筋肉"由来の速度に、3人は

面食らっていた。


~西門~


「ヤベェよ、アレ…………」

「人類が相手して良い奴じゃねーよ…………」

「だ、だが、此方には、第一級魔導兵器が居る!!」


 冒険者達は、今いる最大火力の持ち主、ローズ

の方を見る。


(グリーンドラゴンだか、何だか知らないけどさ

…………よりにもよって、"絶対に勝てない奴"が

出てくるんじゃないわよっっ!!!)


 だがそのローズも、以前に自分達のパーティが

充電期間に入らざるおえなくなった原因を作った

"別の厄災(レッドドラゴン)"を(そう)()しており、腰が大きく引けていた。


(…………まぁ、私の全力が通じなければ、逃げても

大した罰は与えられないだろ。どっち道、ここは

滅ぶ運命だったってことね)


 そして、ウァームタウンが滅ぶ運命だったと

決めつけて、立場を維持しつつ逃げることだけを

考える始末であった。


(え…………? 折角魔導兵器2人に安全を確保されて

いたのに…………ここに来て厄災に襲われるなんて!?)


 平凡な魔法使い・サウザンドグローリーのサンドラ

も、折角の安寧(あんねい)を崩されたことに、恐怖を隠せて

いなかった。


~フォーレスト・ビレッジ~


(いや~、こんなに見られると、恥ずかしいな~~!

僕、この1月程でそんなにマッチョになったのかな

~~?)


 バフとガードで防衛に大きく貢献したチックは、

何故か自身の筋肉に、皆が注目していると勘違い

していた。


「なぁ…………アイツにポーション飲まされてから、

何か異様に調子良かったんだけど…………」


「ああ…………、俺も、普段苦戦する奴を楽々倒せて

ビックリしたぜ…………」


「後、凄いスピードでモンスターと私の間に入って、

守ってくれたわ」


「絶対、総重量100kg超えなのに、どっからあの

速度が出てるんだ?」


「まさか、俺が補助に感謝する日が来るとはな…………」


「あの軍勢相手に、軽傷者13人で済むとか、奇跡も

良いところだぜ」


 だが、冒険者達が見ていたのは当然、鎧の中の

筋肉ではなく、彼の見た目不相応な"基礎力"である。


 そして、


『グオオオオオオオオーーーーーーーーー!!』


 ここには、A級竜種・大海竜の群れが出現した。


「あわわわわ…………」


 いかに動じにくいチックといえども、短期討伐が

絶望的なA級竜種の群れには恐れ戦いた。


(…………あれ? 何で陸地に海の竜が群れてるんだろう??)


 だが、大きな違和感が、彼に冷静さを戻した。


~リジョン・バルディ視点~


「な…………んで……………………ここにあんなヤローが

……………………いるんだよ……………………!!」


 S級に匹敵するモンスター・赤鬼を倒した俺様

だったが、その直後SS級竜種・レッドドラゴン

が出現しやがった。


「見て、あそこで走っているモンスターを追って

いるわ」


 ミュールの奴が指差した方向を見ると、レッド

ドラゴンから必死こいて逃げているモンスターが、

数匹いた。


『ハアッ! ハアッ!』

『ゼブル様ッッ! そろそろっ! お助けっ…………!!』


 まるで俺達なんて眼中に無ぇみてーに、逃走に集中

してやがる。まぁ、あんなのに追われていりゃ、当然

かもしれねぇがな。


~魔王城~


「フェッフェッフェ、雑魚を生き餌にし、天災共を

人間の住み処へと送る。奴等を除いて、対処できる

者なぞ居るまい。さぁ、絶望にうちひしがれるが

良いわーーーーーー!!!!」


 魔王城では、作戦トップのゼブルが高笑いを挙げていた。


(おいおい…………命がけのオトリモンスター達って、

回収しねーのかよ)


 どうやら、足が速めのモンスター達を使い、強大な

竜達を誘導、それが上手くいった所で、空間単位で

人里に送ったようだ。


 だが、その直後にオトリモンスター達を回収可能

であるにも関わらず、見捨てたのだ。


「フン、雑魚にMPを割くほど無駄なことは無いわい」


 その理由も、部下を何とも思っていないからこその

ものであった。


~リジョン~


「もういっちょ、気合いを入れていくぞぉ!!」

『ドォン!!!』

「バルディ!!」


 赤鬼戦で乱れた息が整った俺様は、レッドドラゴン

に向かって最高速度で駆け出した。


 決して、無茶するつもりはねぇぜ、


「オラァ!!!!!」

『ザギャァァァァアアアン!!!!!』


 俺のスピードに、虚を突かれた奴の大振りの爪を

回避し、駆け抜けた距離分の衝撃波を乗っけた強化(パワー)

斬撃(スラッシュ)…………衝波斬撃(ショックスラッシュ)をぶちかましたのさ。


『グォ…………!!』

(傷は付いたが…………)


 だが、こんなチャチな傷だとよ…………


「かすり傷にもなってねぇなぁ!!」

『グオオオオオオオーーーーー!!!』


 1000回同じところをぶった斬っても、切り傷

にもなりゃしねーぞ!!


 俺の力試しは、見事に無力さを証明しちまった。

畜生め!!


赤鬼(あんにゃろう)で、超音速に慣れていて良かったぜ」


 ただなぁ、コイツ、神経質って奴らしくて、かすり

傷で興奮して、本気で俺を殴り殺そうとしてやがる。

ジョセフの速力バフでフツーに避けられて居るが、

素の俺だと、必死こくレベルの速度だぞコレ。


岩石付与(エンチャントロックス)!!』

巨岩(ハンマー)投擲(ショット)ォ!!!」


 ()えて、俺様がオトリに徹している隙に、ミュール

達が合体大技を繰り出した。…………最近気づいたが、

奴等は力を合わせることで、俺以上の火力を出せる

らしい。


「パワーで負けてんのは(しゃく)だが、コイツを防げんの

か? 厄災!」


 ヴィヴィアンの顔色と岩のサイズから、これは即死

させる気の一撃だと分かる。流石の野郎でもどっか

骨折するだろうな。


『グァオ!!』


 所が、(ヤ )(ロー)は両腕で受け止める訳でもなく、

中サイズの火球を吐きやがったんだ。


「んだそりゃ!?」


 何か、俺達を舐めてる気がして腹が立ったから、

全力の回し蹴りをぶちかましてやった。


「ちったぁ、飛べやゴラァ!!」


 効いてないのは仕方ねぇかもしれねぇが、浮きすら

しねぇのは、マジで(Heart)に来やがる。んで、巨岩だが、

火球が触れてねーのに溶けはじめてやがr…

『パァン!!!』


 おお!? 先端部が裂けて、円盤(えんばん)みてーのが飛んだ

ぞ!!


「ッツ! 何て火力なの!!」


 ミュールの奴が、飛ぶ打撃で岩の形を操作したよう

だが、残った大部分が溶け落ちた事には、やっぱ(おのの)

ちまってるぜ。


『グオオオオオ!?』


 思わぬ岩の動きに野郎も追加の炎を吐けなかった

のか、空いた大口に直撃した。溶かされた巨岩の減速

具合から、威力の殆んどがこの円盤に乗っているから、

ダメージに期待だな。


『ピシピシ…………バガァン…………』

「こりゃ…………"厄災"とか言われる訳だぜ」


 バカの憶測は外れて当然とばかりに、野郎は円盤を

噛み砕きやがった。硬さも重さも俺の斧とは比べ物に

ならず、速度も音速を超えていたのにだ。


「バルディ君危ない!!」

「当たるかぁ!!」


 そして、野郎は至近距離から俺に業火を吐き

やがったんだ。これには下がるしか無かったぜ。


~1分前、正面・防衛ライン~


「ふぅ、暇になっちまったなぁ」


 カルロスは、ビキニ3人との会話にも飽きて、

周囲を見渡している。


「そういえばディー君って、ここ出身って言ってた

よね」


「言ってたね~。確か可愛い妹が居るって、訓練所で

自慢してたよね」


(いも)(おんな)と平気で組めるディー君基準の可愛いでしょ?

どうせディー君そっくりなゴリラ女でしょwww」


「「だっははははははwwwww!!」」


 本人が居ないことを良いことに、3人は他者を

知ろうともせずに、侮辱している。


(ってことは、前世の俺の家を思い起こすあの屋敷は

クソガキの実家なのか。憧れの俺様に使われれば、

さぞ嬉しい事だろうな)


 この会話を聞いたカルロスは、暇潰(ひまつぶ)しを思い付いた。


「お前ら。モンスターももう来ねぇだろうし、俺は

ちょっと散歩してくるわぁ」


「「「行ってらっしゃいませ~~!」」」


 胸を強調するポーズの3人から、桃色の声援を

受けて、カルロスは歩みだした。


(腐った集落の一軒家、骨董(こっとう)品でも物色してやるか)


 それから1分後、厄災の襲来が報ぜられた。


~アント・ネット街国・工業都市・ワイルド視点~


多数(アロット)(ビッグ)召喚(ゲート)海底(マリアナ)流星群(ミーティオ)!!」


 陸や大地を駆け抜ける巨大な竜達。だが、ある

瞬間を境に、巨大な水の塊によって、生命ごと骨身

を押し潰された。


(スーパー)回収(コレクト)! 流石に竜肉は無駄に出来ないな」


 俺が呼び起こした大自然の力は、厄災と呼ばれる

竜種すら、赤子の手をひねるように絶命させてしまう。


「フレイさんが抜けた城下町の裏は、猫ちゃん一匹

居ない。表に5匹の厄災が居るけど、まぁ、この速度

でフレイさんが向かっているし、問題ないな」


 問題は、俺とフレイさんが居ない地域の防衛だ。

俺は全域を()(かん)し、手助けする箇所と段取りを即座

に決めた。


「インテリ幹部さんよ、アンタの自慢の(ざん)(ぎゃく)な作戦、

俺が完封してやるよ!」


 今、遠隔(えんかく)で、大量のゲートを開いた。

最後までご覧くださりありがとうございます。

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