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リベンジ・スープ(後編)

数話の結末故、気合いが入り、かなりグロ注意となっています。

50話


「あ…………あ…………」


「うっ…………」

「「うわああああああああ!!!」」


 手首から先を斬られた侍2名が、慟哭(どうこく)をあげた。


「あっははははははっ!! 涙を溢れさせながら泣き叫ぶ

とは、情けないぞお前達。それでも誇り高き武士なのか?」


 彼等の目前にいる女侍は、両膝をついて溢れんばかりの

涙をこぼし続け、先端が失せた両手首を凝視する男達を

笑い飛ばした。


「痛いよぉ…………」


「も、もう痛いのは嫌だ。反省もした。武士の誇りなぞ、

この瞬間を限りで捨て置く! だからぁ…………これ以上

痛め付けるのはy…」


『『『『『『『『ヒュッ』』』』』』』』


 (サニー)女侍(クレイン)に懇願をしていた途中、8つの風斬り音が

連なって聞こえた。


『『『『ズリュ…………』』』』

「「…………!!…………あっああっ…………!?」」


()()(しゃ)の、()腕三枚(わんさんまい)、おろしたり。フハッ、我ながら

ひどい(せん)(りゅう)だなぁ! 分かるか? これが貴様らが幼少の

拙者(せっしゃ)に行った行為だぞ。許しをこうているのに、無視

されて痛め付けられるのは、辛いなぁ」


 クレインは、半狂乱(はんきょうらん)気味に言葉掛けの川柳を読みつつ、

幼少期の仕返しを行った。


「ぅう…………」


「あぁ…………」


 2人はあまりの恐怖から、言葉を聞けなくなっている。


「貴様達、今おろした腕は、1本以上の筋繊維を無傷に

している。(タコ)烏賊(イカ)のように、自在に動かしてみろ」


「ぅぅ…………ああっ…………!!」


「痛いィ…………!!」


 2人は命令を受け、文字通り死ぬ気で筋肉に力を入れた。


『ピチャピチャ』

『ペシッ!』

「「!!」」


「おぉ、()(こつ)の部位は本当に烏賊のようにしなるのだな」


 クレインは、好奇心の交えた笑みを浮かべながら、

感嘆の声を呟いた。


「い、言う通りにしたから…………」


「どうか我等をs…」


 喜ぶクレインを見た2人は、主人に()びる子犬の

ような目をしながら、再び許しを()おうとした。


(みだ)()り・()(さん)

『ヒュヒュヒュヒュヒュヒュ…………』


 しかし先程同様、答えは刀による無慈悲な斬撃

だった。


「「ギャアアアアアッ!!…………っつ!?」」


 当然、死を感じる程の激痛が襲ってきたのだが、

その刹那、真逆の感覚を味わった。


「な…………い…………」


「消え…………た」


 肘から先の肉体と、感覚が消失した。先程、三枚に

なった肉体を動かす為に、連動させていた上腕の筋肉を

動かせど、無くなった肉体がしなる感覚はもう来ない。


「貴様達は、無くしたものが(ひじ)の先だけで、羨ましいよ。

拙者が亡くしたのは、親友の命だ」


~回想・幼児期~


「うおおおおー!」


(たこ)さん飛んだー!」


 共に遊び、


~寺子屋~


「刀の切先(きっさき)を炎で熱すると、(つば)まで熱が伝わる現象は?」


「熱伝導!」


「正解!」


 共に学び、


~忍の館~


「ニャンタマ、今日も(とう)(りょう)のカツオを盗み出したん

だって~?」


「本当、ここの誰よりも忍んでるよな~、お前」


「にゃ~」


 共に猫を愛で、


~道場~


「はあああっ!!」


「うおおおっ!!」


 共に研磨し、


~F級クエスト~


「クレイン、俺はこれだけ取れたぞ」


「フッ、甘いぞクロウズよ。私はこぉーんなに取ったぞ!」


「か、完敗だぜ…………!!」


 共に競い、


~昼食~


「いやー、海外の肉ってヤマト王国の肉とは、また違った

美味さがあるよなー」


「それに、凄く力が(みなぎ)る! 1切れずつ交換しよう!」


「ああ!」


 共に食卓を囲んだ。そして、


「よぅ、田舎者共」

「男は消えな」

「嬢ちゃんは俺たちと遊ぼーねぇ~~」


「下衆共、何クレインにちょっかい掛けてんだ?

お前らが失せろよ」


「ぁあ?」


「F級がC級に歯向かうのか!?」


「バーカ、テメェらの精神(こころ)は今もF級だ!」


「はぁ~~!?」


「ぶっ殺してやらぁ! オラa…」

「すっトロイんだよ、ボケぇ!」

「グアッ!?」


 いつも拙者を全力で守ってくれた…………!!


~回想終了~


 なのに…………まだ超える所か、守り返すことすら出来て

いなかった…………いや、守るべき時に守れなかった!!


「もう、戻って来ない。誰にも優しく、差別せず、

こんな拙者にすら、愛を持って接してくれたクロウズ

は、二度と戻って来ないのだ…………」


「かっ…………ぁあ…………」

「もう…………許…………して……………………」


 肘の先を霧散させ、脚部の(けん)を斬裂させ、全身の神経

密集部に傷を負わせたというのに、奴等はまだ生を渇望(かつぼう)

しているか。つくづく完成度の高い(けだもの)だな。


「貴様達、ここまで(しゅう)(たい)を晒しておいて、まだ生きること

を望むか?」


「いぎ…………だい……………………」

「既に…………我等…………底に堕ちて…………いる…………」


 とても、以前は侍の矜持(きょうじ)とやらを語っていた男共とは

思えぬ回答だ。


「そうか、死ねば楽になれるかもしれぬのに、生きたいと

申すか。ならば、条件が必要だな」


「「…………ゴクリ」」


 拙者が要望を聞く素振りを見せただけで、子犬のごとき

上目遣いか。…………いい加減、この獣畜生(けものちくしょう)共の顔を見る

のもウンザリしてきたぞ。


「兄弟で殺し合い、生き残った方をこの場から脱しても

良いことにしよう」


「「!!…………」」


 拙者が条件を言ったや否や、只でさえ青い表情を

していた奴等の顔が、更に真っ青になった。


「嫌と申すなら、足先からゆっくりと霧散させていくぞ」


「「や、やります!」」


 …………多少の兄弟愛はあるかと思ったが、それも自身の

命と天秤にかけられれば、()(やす)くかなぐり捨てられる程度

の物か。…………尚更、クロウズの死が悔やまれる。


「頼む! 俺のために死んでくれ! フォール!」

「止めてくれ! 兄上ーーーー!!」


 獣の生への執着心は、マトモに動かせぬ脚すら動かし、

無い腕から突きすら繰り出す程の、強さであったか。

加えて、兄の方がより、獣だったようだ。


 …………このまま決着に漕ぎ着かせるのも良いが、一工夫

(こしら)えようか。


「フォールよ、昔拙者を虐め抜いていたとは思えぬ

無様さだなぁ」


「ク、クレイン~~…………。悪かったよぉ…………俺ぁ、

本当はぁ…………、お前がぁ、好きだったんだぁ…………。

だけんどぉ、どう接すれば良いのか分かんなくてぇ…………」


「で、兄と共に虐め始めたと? 世界一醜い告白をどうも。

だが、拙者はこうして想いを伝えた勇気に答えようと

思う。どれ、拙者が応援してやるので、顔を覆っている

腕を退()けて、兄の命を貫くことに用いてみよ」


「!!、承知した! うおおおおおおお!!!」

「がっ!? ごふぅ!!?」


「ほら、好いた女からの応援だ。ガンバレー」

「おおおおおおおおおっ!!」


 …………まさかここまで奮い立たせてしまうとはな。

これは兄が死ぬのも時間の問題だな。


「フン、地獄で天上に居るクロウズへ土下座するのだな」


 そうして、一方的な殴打は1時間に渡って続いた。


「ハアッ…………ハアッ…………やり…………ましたよ…………」


「ああ、良くぞ兄を地獄へ落とした。辛かっただろうが、

これで少しは、岩に磨り潰されたクロウズの気持ちも

分かっただろう?」


「はぃい、俺は、クロウズ君に、到底許されぬ行いを

しました。今後は満足に動かぬ五体を用い、(ざん)()の人生を

歩みます!」


「うむ、約束通り、何処へなりとも行くと良い」


「クレイン様、我が秘めたる想いを聞いてくださり、

そして、クロウズ君への懺悔の機会を与えて頂き、

誠に感謝申し上げます!」


 そういって、弟の方は四つん()いで去り始めた。











「乱れ斬り・霧散」

「ギャアアアアアアアッッ!!?」


 しかし、立ち去る事は叶わなかった。


「いっ…………行って…………良いと…………」

「言ったぞ」


 膝下も霧散した獣に、断言する。


「だっ…………だっ…………だったら…………なn…」

「誰も"斬らぬ"とは、言ってないだろう?」


「…………あ」


 拙者の声援を受け、顔色を良くして兄を撲殺(ぼくさつ)した弟

だったが、再び顔を青ざめた。


「貴様の下衆(ゲス)な想い? 聞く価値も無いわッ!!」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」


 クロウズと比べることすら、おこがましい獣が当時の

拙者を虐めながら好いていたなど、腹立たしいことこの上

無い! 下半身全てを霧散させる!! 歩くな!!


「そんなものは、これから完全に消してくれる。こんな

風にッッ!!」


 拙者は激情のままに、兄の亡骸を霧散させた。


「兄…………上…………」


 残ったのは、血飛沫と骨肉の汁のみだった。


「貴様もこうなる。だが、嬉しいだろう? 血を分けた

兄と共に、融合しながら地獄へ堕ちるのだ。そして、

地獄に堕とすのは貴様が好いた女。嬉しくない訳が

ないだろう!」


「…………ぁ…………ぅ……………………」


 狂っている。それは拙者自身が1番自覚している。

だが、狂わずにいられるか!


「クロウズはたった独り、岩に潰された! 貴様らは

兄弟仲良く侍らしく(やいば)に斬られる! この幸せを糧に、

()(りょう)大数回(たいすうかい)、地獄で頭を下げろ!!!」


「かっ…………ああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああ!!!」


 こうして、拙者は獣の上半身を20秒あまりの(とき)をかけ、

兄と同様の有り様にしてやった。


「…………クロウズ、ようやく終わったぞ」


 汚い返り血を払い、納刀を終えた拙者は、10秒間だけ

感傷に浸った後、天国の親友へ復讐の完遂を伝えた。


(…………これだけの事をしたのだ。怖いもの知らずの(ぞく)

も、拙者に怯えて醜態を晒し尽くしているか)


 周囲を見渡すと、獣2匹に雇われた山賊共が、全員腰を

抜かし、実に9割が汚物を垂れ流していた。


(事前に事後処理を頼んでいたとはいえ、ワイルドには

本当に迷惑をかけてしまうな)


 獣共との戦闘中は、山賊達の拘束作業を行っていた

ワイルドだったが、今度は"召喚"を駆使して汚物の除去

を行っている。…………あれを召喚と呼べるのかは、未だ

に疑問なのだが。


「ワイルド、惜しみ無い協力を本当にありがとう。そして、

改めて証拠の隠滅をお願いする」


「いえ、クレインさん、そしてクロウズさんの本懐を

遂げられて、本当に良かったと思います」


 拙者とは、一月前に昇級試験で顔を合わせただけの

関係だったのに、クロウズに劣らぬ優しさを持った

この少年は、誠心誠意、拙者のサポートをしてくれた。


「フフ…………拙者も、きっと彼も、今の言葉は嬉しいぞ。

…………では」


 ワイルドよ、この汚れた殺人者"3名"の存在抹消を、

頼んだぞ。


 そう言って拙者は、殺人者としての落とし前をつける

べく、愛刀を自らに突き立てた。
































       "縮地・レベル7!!"


『ドォン!!』


 刹那、拙者に音速を超えた速度で接近する者が居た。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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