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リベンジ・スープ(中編)

お待たせしました。ここ数週間、色々な事が

あり、ようやく手をつけられました。

49話


~3年前~


「クレイン、このクエストを受ければ、いよいよ俺達の

剣術を活かせるクエストを受注出来るようになるぞ!」


「フフッ、入門段階とはいえ、この早さで昇級クエストに

達したのは、私達が初めてなのではないか?」


 クロウズと拙者(せっしゃ)は共にクエストをこなし、F級からE級

に昇格する為のクエストまで、漕ぎ着くことが出来た。


「リズさん、その辺どうかな~?」


「えーっと、どれどれー…………あっと、残念! 過去に

現S級のフレイ・パイロン様が、2日で到達しています!」


 新人受付嬢の熊獣人娘は、各最速記録が書かれた紙を

確認し、残念な報告をしてきた。


「そうかー、俺達の倍速か~。記録更新してたら、リズ

さんに褒めてもらおうと思っていたのにな~」


「むっ、私だって、クロウズを褒めるぞ!」


 当時の拙者は、クロウズが熊娘(リズ)に気がある等と、雑念に

まみれていたな。


「ははっ、俺もお前を褒めてやらないとなぁ」


 そういって、拙者の頭を撫でてきた。


「ウフフ。2人共、十分に早いですよ、それこそ褒めずに

いられない程に。ここまでよく頑張って下さいました。

昇格を心よりお祈りすると同時に、これからのご活躍を

期待しています!」


「その言葉を待っていたぜっ! これで昇級クエストの

成績は、俺がNo.1確定だーー!」


「むむっ、絶対にクロウズにだけは負けぬ!(全く!

2日前、盛大に資料をぶちまけた小娘等に浮かれおって

…………!!)」


 クロウズのだらしなさに呆れつつも、兎に角彼に成績で

勝ち、熊娘(リズ)に取られぬ事で頭が一杯だった。


~翌日・正午~


「フッ! フッ!」


 抱えられるギリギリの重量の岩を持ち、早足で進んでいた。


「クレイン、あまり無理するなよ。昼休憩の号令も

かかったし、休みにいけ。岩は俺が運んでおく」


 クロウズは同じくらいの大きさの岩を、余力を残して

運んでいた。この程度の力量差、すぐに追い付いて

見せる!…………等と思っていたな。


「断る! クロウズが働く時、私も働かねばならぬのだ!」


「そうか、それじゃあ、これ等を片付けてから一緒に

休むとしようぜ」


「うむ! フッ! フッ!」


 こんな調子で周囲も見ずに、猪突猛進に目的地のみを

見据えていたものだから、横で"起爆装置"を握った奴等

が立っていたことにすら、気づくことが出来なかった。


「じゃあな~、お邪魔虫~」

「墜ちろ」


 轟音(ごうおん)と共に、崖に大きくヒビが入り、我等の立っていた

場所が崩れ始めた。


「うおおおおっ!?」

「なっっ!?」


 今思い返せば、クロウズは拙者が抱えていた岩が死角

になったせいで、奴等の存在に気づかなかったのだろう。

…………或いは、歩く位置が逆であったならば…………!!


『ドギャッ!!』

「きゃあっ!?」


 彼は(とっ)()に、自身が保持していた岩で、拙者が抱えて

いた岩を殴り飛ばした。彼の脚力なら、岩を手放し余裕

で抜け出られたであろうに。


 拙者は彼の思惑通り、岩の慣性に引かれ、崖上まで

達することが出来た。…………だが、


「クロウズーーーーーー!!! う、ああああああ

ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 クロウズは、岩の下敷きになりながら落下していき、

2度とその姿を見ることは叶わなかった。


 そして、落とした張本人である奴等は、"転落事故"

として、試験官に報告を行った。拙者を犯人扱いすれば、

罪の擦り付けとして訴えられた際のリスクが大きく

なったからだろう。事実、拙者の訴えは、証拠不十分

として棄却され、この3年、殺人犯共はこの世にのさばる

事となった。


 弱く(つたな)き者は泣きじゃくる事しか出来なかったのだ。


~回想終了~


 そして、これから拙者は、奴等と同類…………いや、

ともすれば奴等以下の殺人者となる。…………だが、

拙者が堕ちる事でクロウズの無念が晴らされるなら、

後悔は無い。たとえ三途の川で、彼の木刀を浴びる

ことになるだろうとな。


「まさか女の分際で、ここまでたどり着くとは

思わなかったぞぉ…………」


 殺戮者の内、サニー(兄の方)が下劣な笑みを浮かべて言葉を

発した。


「女の拙者を分際と(のたま)うか。ならば、分際に実力(チカラ)

おろか度胸も及ばず、初めから小賢しい罠を仕掛けて

くる貴様らは、さしずめ底辺だな」


「「なっ…………!?」」


 図星か。とすると、奴等の意識にも、自分達は拙者

未満という自覚があるようだな。


「ふ、ふんっ! 笑ってられるのも今の内だぞ!」


「そ、そうだっ! 女相手に、男である我等が直接手を

下すまでもないのだっ!」


「者共、かかれぃ!」


 サニー()が号令を出すと同時に、中々高級な武器を

装備した山賊共が、ワラワラと現れた。


「…………こやつらも男だろう。女は雇えなかったのか?

…………いや、女が()かれる要素が皆無な貴様らに、女を

(やと)うなど、無謀な話だな」


「ぐぬぬぅ…………!!!!!」

「消せば全てが無に帰す! 殺れぇ! 消してしまえぇ!!」


「「「うおおおおおーーーー!!」」」


 賊共が一斉に駆け出してきた。…………しかし、所詮は

ツカハラ兄弟(この程度)に雇われし者共。拙者の間合いに到達

するまで2秒もかかる愚鈍共(ノロマ)だ。しばらくは遠方の

連中に気を配るとしようか。


「ひゃひゃ! 高速の鉄を味わぇえ!」

『ドォン!!』

「「「ファイアー!」」」


 成程、魔力で生成した雷を集約させ、鉄を高速で放つ

のか。火縄銃より効率的だが、速射性は拳銃の足元にも

及ばぬな。


「フッ!(だが、弾速は此方が優れているな)」

『キィン!!』

「がはっ!?」


 拙者は刀を振るいつつ、(みね)の角度をずらすことで、

弾丸の軌道を他の賊へと反らせた。


『ゴオオオオオッッ!!』


 その刹那、先程の魔法武器から放たれた火炎が、

拙者の間近まで到達した。


(みだ)()り・()(さん)

『ゴウウッッ!!』


「おおっ!」

「流石は最新兵器!」

「A級も瞬殺だぁ!」


 正面から見て、拙者は炎に包まれたのだから、

沸き立つ気持ちも分からなくはない。


「炎を…………」

「斬り払った…………??」


 だが、後方の連中は、拙者が刀の風圧で火炎を

防いだ事に、驚いていた。そして、動きも止まって

いたので、


「もう休め」


「「ギャアアッ!?」」


 "ついで"に撃った飛ぶ斬撃で魔法武器ごと無力化

しておいた。


「ならば掠め取ってやる!」

「フルボルトォ!!」


 火炎が消え、"ようやく"動き出した前方の山賊の

内、中距離武器を手に取る者達が投擲(とうてき)や発動を始めた。


「乱れ斬り・群隼(むらぶさ)


 魔力消費を極限まで抑えつつ、連続斬りを全て

飛ばした。


「「「「「ウギャアアアアッッ!!」」」」」


 中距離武器持ち全てと、不用意に接近した近距離

武器持ちの半数を無力化した。因みに2名、面白い

倒し方をしたな。


「アギャギャギャギャギャ!?」

「ゴfu…ギィイィイイッ!!?」


 敢えて峰打ちで飛ばした一太刀目を分銅(ふんどう)()に当て、

鎖に誘電(ゆうでん)させつつ、電撃を放った者に命中させたのだ。

我ながら、効率的な立ち合いだったと思う。


「貰ったぁ!」

「潰れろぉ!」


 先に武器を振るったのは、斧持ちの少し手前を

駆けていた戦槌持ちだった。戦槌(せんつい)が、奴の腕力が

急増したかのような、挙動を見せたしたのだ。


~回想・ミュールとの稽古~


「ま、参りました!」


 私の刀を首筋に宛がわれたミュールが、そう表明

した。


「フッ、最近更に巧みな動きを見せるようになったな。

身体能力も研ぎ澄まされ、達人の域に近づいているぞ」


「ありがとうございます!…………ですが、コーチには

手加減されても、未だに1本も取れません。やはり

槌や斧は、刀や短刀と相性が悪いのでしょうか?

攻撃速度なら、私の(はる)か上のバルディすら、コーチ

には一太刀すら当てられませんし」


 彼女は良く、拙者の戦闘技術を学ぼうとするので、

此方も教え甲斐(かい)がある。


「相性は、確かにあるだろうな。だがまぁ…………幾ら

絶対速度があれど、奴はまだまだ隙が在りすぎる。

これでは避ける分には(なん)()せぬな」


~回想・バルディとの稽古後~


「んが…………あ~あ、まーた気絶させられたのか、俺」


「また、起きるのが早くなったな」


「スピードも速くなったと思うんだけどな~ッス」


 相変わらず、珍妙な敬語を使う奴だ。


「実際、お前の物理攻撃力と敏捷性の成長は、正しく

異常といって差し支えない。だが、幾ら当たれば即死

の一撃も、当たらなければ無意味だぞ」


 逆を言えば、避ける側は集中力を途切れさせては

いけないということだ。


「振りかぶってから加速してたら、(しゅく)()みてぇに瞬間

超加速的な動きにゃならねぇですよな~。ヒットさせる

反対側に爆薬つけて、振りかぶったと同時に爆発させ

りゃあ…………」


 たまに、このような突拍子もない発想から、新戦術

が開発されたりする。


「それだと、普段以上に斧を引き付けるような筋収縮を

するだろう。ならば拙者はその筋肉の動きから、お前の

動きを見切り、一太刀を入れる」


「まるで未来予知じゃねーか! じゃあ、見えても避けれ

ねー程、加速するまでだぜ!! ッス」


 だが、奴はやはり脳筋だった。


~回想終了~


「ギャアアッ!?」


(あまりにも…………遅い)


 極限まで戦槌の予備動作を消しているミュール、

隙だらけだが動作が俊敏なバルディを見慣れている

と、この2人の動きが最早制止しているも同然に

見えてくる。


 一先ず"最小限の移動"で2人の得物を回避して、


「ごぷっ!??」


 起爆加速を起こす戦槌持ちは、側面からの袈裟斬り

で倒し、砂塵を纏う斧持ちは、遷音速(せんおんそく)の突きで倒した。


「まるで戯れているかのようだな」


「「「「「ギャアアアアアアアア!!!!!」」」」」


 残りは互いの間合いで切り捨てたのだが、誰一人と

して拙者の動作を知覚出来た者はいなかった。


「う、ううう…………最初の奴は、数で押せば余裕じゃ

無かったのか…………」


(だま)…………されたぜ…………。こんな金鉱山、手放す訳が

ねぇもんな」


「仮にこの女を殺せても…………次の男ってのに殺された

んだろうなぁ…………」


 虫の息の賊共が、悔恨を述べだした。…………奴等の

思惑と照らし合わせると、実に呆れつつ、(わら)えて

くる。


「…………よもや、アーロン・スパークマン討伐に、

こ奴等を動員する予定だったとはな、開いた口が

塞がらないとは、正にこういうことを指すのだな」


 あの下劣な男は、見た目と力が極限まで備わって

いる分、ツカハラ兄弟の最上位互換と言えなくもない。


 そして、今の言葉を聞いた賊共は、今更顔を

青ざめている。最も、大量出血による貧血が現れた

だけとも考えられるが。


「ふんっ! こ奴等なぞ、捨てゴマ以外の何でも

ないわっ!」


「我等の主力は、これ等だ」


『ガコォン…………』


 どうしようもない外道発言と共に現れたのは、

サイクロプスの倍程の体躯を持つ、2体の巨大

鋼鉄カラクリ人形だった。


「これぞかの諸葛(しょかつ)(りょう)と並ぶ、我等の知略の結晶!」


「絶対的な防御力に、対魔性能! 刀は通じず、

飛ぶ斬撃の魔力は()き消される外装に、絶望

するが良いわっ!!」


 片方は1対の豪腕に、大太刀と攻城砲を持ち、

もう片方は、8本腕の中央4つが大砲と変わらぬ

大きさの拳銃を備え、外側4本に太刀と小太刀を

対になるように装備していた。一撃(いちげき)型と連撃(れんげき)型と

いった所か。


「諸葛亮…………か、言っていて恥ずかしくないのか?」


「黙れぇ!!」


「結果で語ってやるよ!」


 2人は一斉にカラクリを駆動させ、砲撃機能の方を

使用してきた。


居合飛(いあいひ)(ざん)

『『『『『『ドン!!!!!』』』』』』


 音は、"6つ"連なって響いた。


五中(ペンタミドル)召喚(ゲート)。(…………これは高威力すぎか?)」


 その内の1つが、拙者と手を組んでいる召喚士に

向かっていったが、難なく超速度に反応し、(いず)()

へと転送していた。


 そして拙者は、一撃型の大太刀の間合いに入ると

同時に、撃った。


轟鷲(ごわし)音裂斬(おんれつざん)!!」

『バァン!!』


 縮地で最高速度に達し、その上で全身を捻る事で

達した剣速。"音速"の斬撃を飛ばしたのだ。


『…………』


 斬撃がカラクリの外装に触れると、やはり魔力が

消滅した。…………だが、拙者は斬撃を放つ際、魔力を

刀に纏ってただ撃たず、刀を振るって圧縮した空気の

先端に纏わせ、振り切ったと同時に、後方を塞ぐよう

にして撃ち出した。


 するとどうか。空気は鋭利な斬撃の形を保ったまま、

カラクリを切断し始め、周囲の衝撃波は、上下に別れた

カラクリの構造を破壊し始めたのだ。


「なっ!? っうおお!!」


 サニー()がやられて焦ったフォール()だが、直ぐに

落下する兄には当たらず、拙者のみに被弾する左下腕の

拳銃を操作し始めた。…………それでも、遅いのだ。


「居合・()(じゅう)雷閃(らいせん)!!」

『『『『ドドドドォン…………!!!』』』』


『ドサドサゴシャアァアン!! ドサドサドサ…………』


 召喚士(ワイルド)に教わった"筋力トレーニング"のもう1つの

成果、高強度の筋力の連続発揮を駆使し、下半身は連続

縮地を、上半身は連続斬りを繰り出した。


 つまり、カラクリの各関節部を何度も斬りつける

事で、十肢(じゅっし)を全て落としたのだ。


「お、おのれぇ!!」


 頭から血を流す兄が、先にガラクタから這い出てきた。

腕には珍妙な突起が並んだ大太刀が、握られている。


「女のぉ…………分際でぇ…………許さぬ…………」


 弟も内出血したコブを目立たせながら、腰に2丁の

拳銃を携えている。


「まだ言うか、その女にここまでしてやられて、未だ

に歯向かう執念だけは、褒めて"やる"」


「男が女の下に成るわけにはいかぬのでな、この刀は

刀を破壊することに特化しておる。故に、貴様は絶対

に我に勝てぬ!!」


 …………散々速度の違いを見せつけたのだが、井の中の

蛙には、難しい話なのだろうか?


「その前に、我が得意の二丁拳銃により、両胸に風穴

が空く! 兄上、悪いがこ奴は我が仕留める」


 2人して、侍の矜持を全て忘れているようだ。兄も

兄なら、弟の下劣さも納得がいくな。


「うむ、任せたぞ。その後は(うたげ)だ」


 しばし、全員が残心(ざんしん)を取った。


「シャアアッッ!」

『『パァン!!』』

『バキッ!!』


 弟が二丁拳銃を抜いたと同時に、二丁共が謎の暴発

を起こし、更には、兄の特殊刀まで折れ飛んだ。


「名をつけるまでもない、飛ぶ斬撃だ。対魔処理は

行わ無かったのか? 彼方を取ると、此方を取れず

とは、よく言い表したものだな」


「「……………………」」


 刹那、奴等の顔が青ざめた様が、ハッキリと見えた。


「ま、敗けだ」

「こ、降参s…」

『スパパパパパッッ!!』


 拙者が間合いを詰めたと同時に、20本の肉片が飛散し、


「「…………!!」」

「ここからが本番だ」

『ザンッ!…………ボトボトボトボト』


 それより大きな肉塊が、大地へと墜ちた。

最後までご覧くださりありがとうございます。

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