外道の行動原理
お知らせ : 今月、多忙につき、投稿ペースが
落ちます。可能な限り毎日を目指しますが、
酷いと週に2話以下になります。
「僕は、この王都で生まれ育ち、霊感を活かせる
死霊術士になるべく、自己研鑽の毎日を送って
いました」
~回想・少年時代~
「リョウ~~、剣術ごっこであそぼーぜー!」
幼い頃は、それなりに友人が居たように思います。
「ご、ゴメン、僕…………やらないといけないことが
あるから…………」
「まーた幽霊とお喋りするの~? 明日こそ遊べよー!」
「うっ、うん!」
友人の誘いを断り、幽霊とのコミュニケーション
ばかりを行っていました。
「あの男だけは苦しみながら死ぬ様子を見届け
なければぁ、私は成仏出来ないのよぉーーーー!!」
「…………そうだよね、お金を貰うために騙した挙げ句、
子供の頃にお姉さんを苛めた女の人とよにげする
なんて…………あんまりだよ!」
「…………ボクは、私の事…………騙される方が悪いとか、
女の分際で生意気だとか、滑稽だとか言わないの
…………??」
「言うわけ無いよ! だって、そんなのだます人間や
女の人を差別する人間や、人の不幸を笑う人間による
ゆがんだしゅちょうじゃん! お姉さんは悪くない!」
「ボク…………グスン…………」
そんな時に、新聞の号外が来たから、読み上げて
みたんだよ。
「…………と、思われる血飛沫が部屋中に舞い、…………
これ、何て読むの?」
「臓物、だね」
「臓物が飛び散る地獄絵図となっていた。2人を…………」
「惨殺」
「したのは、2人にパートナーを取られた男女
複数名と考えられ、…………」
「…………そっか、苦しんで死んだのか…………」
「警察は、冒険者ギルドに強力要請することも視野に
入れつつ、容疑者の逮捕ni…お、お姉さん!?」
新聞を読み上げている途中、幽霊のお姉さんの色が
薄くなっていました。
「フフフ…………どうやら私、この世に未練がなくなった
みたい。ボク、新聞でアイツ等の末路を教えてくれて、
そして、私の話に耳を傾けてくれてありがとう」
「うん、お姉さんが報われて、ボクも嬉しいよ…………」
「ウフフ、別の場所に行っても、ボクの活躍を
見守ってあげるわ。バイバイ」
「バイバイ…………」
このように、時に幽霊達の力になりながら、僕は
自分の能力を把握していきました。そして、5つの
特徴が分かりました。
1つ、この世の何かに恨みのある霊を寄せ付けること。
2つ、僕の魔力に影響を受けた霊は、殴る等の
物理攻撃が可能になること。
3つ、それでいて、こちら側の物理攻撃や
魔法攻撃は基本すり抜けること。
4つ、しかし、霊同士の攻撃は効果を示し、HPが
空になると、消滅して別の場所へ移動すること
(そこが天国か地獄かはたまた冥府なのかは不明)。
5つ、霊同士は合体により、強力な1個体に変化
可能なこと(しばらくすると、元の数に分離する)。
「研鑽は十分に出来た。後は実践あるのみ!」
十分に自分の能力と、効率的な戦法を考えた僕は、
いよいよ冒険者ギルドに登録を済ませ、着実にF級の
クエストをこなしていました。
しかし…………
「キモいんだよ!!」
「私達に声をかけないでくれる? ね・く・ら・くん!」
「消えろゴミカス」
「前髪キモッwwwww」
「ちゃんと転ばず歩けますか~~wwwww」
こんな風に、主に見た目が原因で、誰に
売り込んでも、パーティーに加えられることは
ありませんでした。
そんなある日
「ねぇ君ィ」
「はっ、はい」
声のする方を向くと、薄青色髪の爽やかな青年が
立っていました。
「僕達のパーティーなんだけどォ、どうしても
戦闘力が足りなくてさァ~~。君ィ、見たところ
死霊術士だねェ? 良ければ僕達のパーティーに
加わってくれないかなァ?」
「わ、分かりました! 頑張ります!」
「おッ、良い返事だねェ! 僕はサザン。よろしくゥ!」
「僕はリョウです。こちらこそよろしくお願いします」
サザンのパーティーもF級だが、今後を見据えて
モンスター相手に実戦練習を行うことが多いよう
でした。
…………そしてある日のこと
「よーしィ、今日は新メンバーのリョウも加えて、
実戦練習を行うぞォーーー!!」
初の…………そして、僕にとっては最後の実戦練習が
行われました。
「旋風業火ゥ!!」
サザンは魔拳士という変わった職業であり、風魔法で
強化した業火を殺人牛に食らわせました。
「ブモォオォオオオ!!」
「グアッ!!」
しかし、E級の鬼門と言われる殺人牛を止めるに
至らず、吹き飛ばされました。
「キャアッ!?」
サザンはそのまま魔法使いの女の子に衝突し、
一気に陣形が崩れました。
「く、来るなら来い!!」
重歩兵の青年が、両手槍を構えて殺人牛の
接近に備えました。
「怨霊召喚!」
このままでは、彼が致命傷を負うと考えた僕は、
一か八か殺人牛の特徴を逆手に取った賭けに出ました。
「ブモォッ!?」
『『『フォンオンオンオンオンオン!!』』』
「ブモオオオオオッッ!?」
この殺人牛は、相当数のモンスターを無惨な
方法で殺害していたらしく、20を下らない
怨霊達が現れました。
そして、彼等の連続攻撃によって、完全に動きが
止まりました。
「怨霊合体・巨人招来!!」
『ホォォォオオ…………』
「……………………」
怨霊達は、彼等の中で最も強かった冒険者の霊を
核とし、5m程の巨人となりました。殺人牛は最早、
恐怖で身動きが取れません。
「巨霊拳!!」
そして、巨大な拳によって、サザン達が相手に
ならなかった殺人牛は、呆気なく死亡しました。
「皆、協力してくれてありがとう!」
『フォロロロロロ…………』
『ホロロロロロロ…………』
『こちらこそ、一矢報いるチャンスをくれたことに
感謝する』
当然、彼等はこの世に未練が無くなり、天に
召されていきました。
「あっ、君。怪我はなかった?」
次に、僕は重歩兵に怪我が無かったか確認を
しようとしました。…………すると
「ウラァ!!」
「ガハッ!!」
あろうことか、彼が石突きで僕の鳩尾に痛い
一撃を入れたのです。
「あの程度! 俺なら返り討ちに出来たんだよ!!
新人の分際でしゃしゃり出んじゃねぇ!!!」
「そ、そんな…………酷いよ…………」
助けてやったのに、あまりにも酷い仕打ちでした。
「それにリョウゥ、そんな便利な技があるならァ、
この僕が怪我を負う前にィ、つ・か・え・よッッ!!」
「ギャアアアアッッ!!」
更に、サザンまでもが、両腕から僕の全身に、
電撃を流し始めました。
「「クスクス…………」」
女の子2人は、止めるどころか黒焦げの僕を
見て、笑っていました。
「さ、行こうか。案外僕達は4人で十分通用する
らしいね」
「当然だぜ」
そう言って、何事もないかのようにこの場から
移動し始めました。
「せ、せめて怪我を治してください!」
回復術士の女の子に懇願をしても、
「…………べーww」
挑発されるだけでした。この日以来、精力的に
クエストをこなせなくなり、そんな最中にカルロス
さんの襲撃を受け、僕は…………
~回想終了~
「冒険者として生きていく自信を失いました。
ワイルドさん、こんな…………暗くてつまらない
お話を最後まで聞いてくださり、ありがとう
ございました」
「…………リョウ君、今から俺の言うことを
良く聞いて欲しい」
「はい」
「君は、全く弱くなんて無いよ」
「でも、サザンのパーティーがあっという間に
E級に上り詰めたのに対し、僕は未だにF級の
ままです…………」
実績に差が出たためか、リョウは思い詰めている
様子だ。
「それは、単に人数差の違いと、モチベーションが
上がらない事が原因に過ぎないよ。ここからが本題、
さっき話してくれた殺人牛の戦いを、良く思い出して
ごらん」
「は、はい。…………」
「この話を聞いて、僕はこう思った。君を殴った
重歩兵は、きっと君の実力に怯えてこんな行動を
取ったのだよ。直後のサザンも同様さ、強すぎる
君に、パーティーを乗っ取られる事を恐れた」
「…………仮にそうだとしたら、女の子達が僕を
笑ったのはどうしてですか?」
「そうだね、魔法使いについては、サザンと
似たような理由かもしれない。しかし、俺は
別に理由があると思う」
「…………別の、理由??」
「うん、その理由は、君よりイケメンのサザンに
好かれたかったから。だと、俺は思う」
「……………………は??」
リョウは鳩が豆鉄砲を食ったような表情で
固まってしまった。そりゃそうだよ
「普通、力が全ての冒険者なら、強い方につく。
そう思うよね」
「え、ええ…………」
「けどね、女の人に多いけど、平然と合理性を
無視して、戦闘ではクソの役にも立たない顔や
容姿が優れている方の味方をする"外道"が
数多く存在するんだよ」
それは、アースヒーローズで嫌というほど見て
きた。外道の絶対数が多い以上、その行動原理を
理解したくなくても理解しなければ、足元を
掬われて殺されるのはこちらなのだ。
「顔…………ますます…………僕は無力じゃありません
かぁ~~~!」
リョウはたった今その現実を知らされ、感極まって
泣いてしまった。…………俺も、気持ちは痛い程に分かる。
「だが、君には力がある! それも、相手が強く、
残虐であればある程、倍増する力がね!」
「だけど…………容姿に優れない僕を加入する
パーティーなんて…………」
「俺が居るよ! 俺は純粋に君の力が欲しい!
少なくとも君の力は後々、俺に莫大な利益を
与えてくれる!」
俺は、リョウを最大限真剣な眼差しで見つめ
ながら、真実を伝えた。
「……………………」
このように人に言われたことが無かったからか、
リョウは泣くことも忘れて固まっている。
「だから、俺は君を強くし、君は来る時に、俺の
復讐を手伝って欲しい! どうだい? 悪い話じゃ
ないと思うんだ」
「…………サザン達を…………バカにした皆を…………
見返せるようになりますか?」
「当然だ。何なら、君さえ良ければ、君自身の復讐も
全面的にサポートするよ」
「…………僕を…………鍛えてください!!」
「交渉成立だな!」
「はいっ!!」
俺達は、互いの右手を合わせた。
『ガチャリ』
「上手くやってくれたな、ワイルド」
「ええ、フレイさんに交渉した甲斐がありました」
「あっ、フッ、フレイさん! きっ、今日はワイルド
さんに会わせていただき、ありがとうございました!」
リョウは緊張しつつ、誠意のこもった感謝を
フレイに返した。
「俺はコイツを連れてきたに過ぎない。己の過去を
精算し、立ち直れたのはお前自身の力だ。俺と
コイツに恩を感じるなら、今後の働きで示せ」
「はい!」
「ワイルド、精々精進することだな」
「はい。必ずや奴等を止めてみせます」
俺の返事を聞いたフレイさんは、宿を立ち去って
いった。
「奴等…………?? 先程も復讐という言葉を強く
繰り返していましたが…………」
「ああ、もう一度、君の寝室で話して良いかい?」
「はい」
俺は作戦会議もかねて、リョウに"この世界での
自分の過去"を打ち明けることにした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。




