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燃える心眼のギルド長

お待たせしました。なるべく明日もあげる予定です。


(リズさん…………どうかお願いします!!)


 俺は祈るように、右角を曲がった突き当たりで、

ギルド長に交渉をしているリズを応援した。


(…………というか、俺の聴力なら"盗聴"できるじゃん。

それに、良い感じに進んで…………おっ!)


 会話が切り上がり、リズが軽い足取りでこちらへ

向かってきた。


「ワイルドさん、交渉成功ですっ! こちらへどうぞ~♪」


「ありがとうございます!」


 無事、面会の許可が降りた。


『コン、コン、コン』

「入れ」


「失礼します」


 入室して、斜め45度のお辞儀。高校の特別講義で

やっていた面接講座の内容と、同じルールが異世界でも

通じている。


「お前がワイルド・サモン・フェリンか。良い活躍ぶり

だと、リズから聞いているぞ」


 20代後半~30代前半。見た目から受けた印象は、

ギルドマスターにしては随分と若かった。


「お褒めに預かり光栄です」


 斜め30度のお辞儀で、感謝を伝えた。


「そして俺への用件だが、お前の口から説明を

してもらおうか」


「はい、アースヒーローズのカルロスによる

暴行被害を届けた、男性冒険者と面会をさせて

頂きたいです」


 目を見据え、誠意を持って伝えた。誠意を

持つことは兎も角、他者と目を合わせるのは

まだまだ慣れない。


 陰キャの癖と皆は言うが、野良猫達と

コミュニケーションを取り続けた俺の推察だと、

野生の暗黙の了解"眼合わせる=喧嘩売る"を

行うことによる緊張が原因だと思っている。


 い、言い訳じゃないんだからなッッ!!!


「そうか、だが、どういう訳かを説明してもらおう」


「はい、先日、クエストを受けに本ギルドへ

赴いた時、戦士系の初心者2人組の男女が喧嘩を

しているのを目撃しました。泣いていた女子の方に

話を聞いたところ、カルロスに乱暴をされかけたと

言っておりました」


「それで?」


「以前よりカルロス…………ひいてはアースヒーローズの

黒い噂を聞いていた俺は、彼女の話ともう一人の

被害者の話を照らし合わせ、カルロスの危険性を

把握したいと考えました。これがギルド長に話を

伺いたい理由です…………」


 ここまで話していて、俺は半ば絶望感を感じていた。

心拍、目線、空気の揺らぎ、発汗物質…………ギルド長

から発する全てが、俺への不審・疑念だったからだ。


「…………そうか。リズ、席を外せ」


「は、はい! 失礼しました!」


 突然指示を飛ばされ、リズは慌てて退室した。


「…………これなら話せるな。アースヒーローズ在籍時、

お前に起きた"本当の事"を」

「!!」


 …………驚いた。ブラフでなければ、俺がショウで

あることを見抜いている。


「な、何故…………そう思うの…………ですか…………??」


「愚問だ。アースヒーローズから、駒使いの奴(ショウ)

消えた途端、カルロスは悪行をしくじった。

他メンバーの様子がおかしかったことも然り、

その直後に、ショウと同じ職業のお前が大型新人

として台頭した。ここから導き出される事は1つ。

何らかの切っ掛けで強くなったショウが、奴等の

悪行を食い止めるべく、力を振るったという事だ」


「…………」


「2度は質問に答えない。最も、質問しようとした

瞬間、その(あご)をギロチンするだけだがな」


 …………本気(マジ)かよ。行動が見透かされたことも、

ガチの殺害予告を出された事も怖すぎるのだが。


「…………本当…………です。俺の本名はショウ・ザ・

マジック、アースヒーローズの元荷物運びです」


「やはりな。加えて、お前の真の目的は奴等に

生き地獄を味合わせる事だろう。先日、既に

アーロン達が満身創(まんしんそう)()になっていた事から、

出だしは順調そうだな」


「…………ええ、メンバーは普段の悪行を妨害すること

で、ストレスによるパフォーマンス低下を促進し、

リーダーのアーロンには、精彩(せいさい)を欠いたメンバーの

みすぼらしさを見せつけて、ストレスを与えました」


「何故、アーロンには、直接仕掛けない?」


「…………奴のスキル : 光速移動で万一接近された時、

今の俺だと、まだ瞬殺されかねないからです。他の

メンバーなら、超遠距離から一方的に捩じ伏せる

ことが出来ますが、アーロンだけは、回避能力と

攻撃能力が高く、()(かつ)に仕掛けられません」


「成る程な…………それなら、精神面から追い詰めて

いく…………と」


「はい。奴の精神は、まるで甘やかされて

育てられた子供のような構造なので、付け入る

隙があると考えられます」


「良く分かった。ならば、漸くはワイルドとして

行動し、奴等の瓦解とお前自身の研鑽を行うと良い。

…………俺達も、奴等の台頭と比例して増加した"謎の

死傷事件"の増加には辟易としていたからな」


「ええ、俺は奴等の悪行を絶対に許せない。そして、

彼らが望むのであれば、奴等への復習は被害者の方に

直接行って貰いたい。したがって、カルロスの暴行

被害男性の居場所を教えて頂きたいです」


「分かった、許可しよう。ただし、随分と参っている

ようだから、入室許可を得られなければ、日を改めて

貰うぞ」


「構いません。俺と、彼の意思を尊重するつもりで

来ました」


「助かる。お前任せで悪いが、アースヒーローズの

壊滅も頼んだ。これ以上若い芽は詰ませない」


 そう言って、俺とギルド長…………フレイ・パイロン

は、カルロスのせいで精神を参らされた死霊術士

リョウ・エクト・ホロライズが引きこもる宿の1室

へと向かった。


『コン、コン』

「ヒイッッ!!! どっどどっちらっらっさまですっ

かっ??」


 ドアをノックされただけでこの反応。遠目で

カルロスを妨害していた俺だが、奴から暴行を

受けていたときの恐怖感を知っているため、彼が

こうなるのも痛い程分かる。


「俺だ。リョウ、お前の心を診療したいという奴が

居るのだが、入れてやっても良いか?」


「フッ、フッ、フレイギルド長…………えと…………

その…………」


「ソイツはカウンセラーの資格を持たないが、俺が

見た感じだと、いい加減なプロよりかは数倍お前の

精神を改善できると判断した。どうだ? ダメ元で

入れてみないか?」


「…………そし…………たら…………よろしくお……願い…………

し…………ま……す」


「分かった。入るぞ」


 そう言って、ドアを開ける前に、俺に一言呟いた。


「必ず(リョウ)の精神を立て直せ。俺のギルド長としての

信頼に関わる」


「まぁ、その…………俺としても利があるので、

そうするつもりです」


 フレイギルド長と接して、分かったことが1つある。

この人はギリギリ出来る難題を容赦なく押し付けてくる

タイプだと。ただ、今回は達成すれば俺にも利益が

あるかもしれないので、いずれにせよ全力で取り組む

までだ。


「こんにちは、リョウ君。とても快適そうな部屋だね」


 そこそこ散らかった部屋だが、俺は本心から

そう言った。何故なら、前世の頃は俺も部屋を

汚していたからだ。勿論、宿題はしょっちゅう

失くしたが、漫画やゲームはどこに置いてあるのか、

いつも把握していた。


「コッコッコッコッコンコンコンニャニィニャニィチワワワンッッ!!」


 鶏かと思いきや、正体は狐…………と見せかけて、

猫ちゃんを被りつつ、被り物を脱いだらチワワ

だったというオチだ。まずは緊張を解くのが先だな。


「俺の名はワイルド。普段は一風変わった召喚士を

やっているよ。良かったらリョウ君が少し前まで

活動していた職業について聞かせて欲しいな」


「えと…………死霊術士をやってました…………特に、

戦闘相手に関連のある霊を呼ぶことが得意です…………」


 緊張して途切れ途切れだが、誠心誠意をもって

話していることが、心拍数と汗に含まれる物質から、

読み取れる。


「ということは、モンスターに殺された人が、その

モンスターに復讐をするなんて事も出来るのかな?」


「はい。これまで5度モンスターとの戦闘を経験

しましたが、内、2度程…………殺された近隣住民の

方が復讐を成し遂げられました」


「凄いじゃないか! リョウ君の能力があれば、

世界中の未練が断ち切れるよ!」


 この能力は、アリス()を苦しめるのにうってつけ

ではないだろうか!


「かっ、買い被りすぎですよ~~」


 前髪が目を隠しているが、汗の物質と頬の赤らみ、

体温上昇から、照れていることが頷ける。


「多少博打だが、戦略的にも優れているな。だが、

そんなお前がどうしてパーティーメンバーから

仲間はずれにされ、そしてカルロスに狙われたのか、

ワイルドに話してくれないか? 後、俺は漸く席を

外す。気がすむまで話し込むと良い」


 そう言って、フレイは部屋を後にした。


「…………ワイルドさん、今から話すことは、誰にも

言わないで下さい。お願いします」


「勿論だよ。リョウ君、君の身に、何が起こったんだい?」


「僕は…………」

最後までお読みくださりありがとうございます。

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