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パワーVSテクニック!

10/4 本日夜投稿予定です。…………と、

    言っていましたが、無理そう

    なので明日の正午付近に投稿

    します。


 殺風景な断崖絶壁の中腹にある広間。その右側には、

両手斧を担いだ赤髪オールバックの大男が立ち、左側

には、戦槌を担いだ緑髪セミロングの女の子が立って

いた。


「構えて…………」


 中央奥に仁王立ちする黒髪サイドテールの女侍の

声で、2人はそれぞれの得物を構える。


「始めっ!」


 そして、開戦の号令が響き渡った。


「うおおおおおおおっっ!!」

「はああああっっ!!」


 2人は声を上げながら、互いの距離を縮めていく。

スピードは男が圧倒的に速い。


「オラァ!!」


 男は、大振りになりすぎず、それでいて斧頭の

速度も兼ね備えた一閃を繰り出した。


「フッ、はああっ!!」


 女は、その一閃を完璧に見切り、男の体制が

整う前に、回避の捻転動作を利用した戦槌の一撃を、

カウンターで放った。


「へっ、オラァ!!」


 男は回避動作を行いつつ、移動が足りない分は

両手斧を盾にしたガードで防ぎきり、自慢の脚力を

活かした瞬発的な切り返しで、攻めに転じた。


「フゥウッッ! だあっ!!」

「ぬおっ!?」


 が、女はそれを予測していたらしく、紙一重の

回避を行った直後に、到達速度に優れる突飛ばしで、

男をどついた。


「おおおおおおおおおっっ!!」

「ぬぅ…………くぅ…………!!」


 大きく体制が崩れた男に対し、細やか且つパワフル

な連続攻撃で畳み掛ける。男は防戦一方となり、体制

を整える暇がない。


「へへっ…………やっぱお前とのタイマンが1番楽しぃ

なぁ…………」

「!」


 しかし、男は不利であるにも関わらず、笑って

見せた。そして、女もそんな男の様子を、冷静に

分析し始めた。


「ここだぁ!!!」

『バゴォォオン!!!!』

「うわあっっ!!!」


 何と、男は体格と筋力を活かしたガードをしながら、

女の戦槌の速度に目を慣らし、僅かな隙をついて女の

攻撃速度の倍近い速度の一閃を繰り出したのだ。


 女も男の動きを良く見ていたので、ガードには

成功したものの、よろけた体制からの一撃で、猛獣の

突進を食らったかのような速度で吹き飛んだ。


「ッシャオラッッ!!」


 男は雄叫びで自らに渇を入れ、持ち前のスピードを

活かしたジグザグ移動をしながら、あっという間に

女の目前まで迫った。


「むん!!!」

「!!」


 そして、男が繰り出す一撃に対し、的確なガードを

試みた女だったが、目の前に居る筈の男の姿が無い。


『ジャリ……』

「っ!」

「ドルゥアアッッッ!!!!!」

「あっ…………ううっ…………!!!」


 そう、振りかぶりはフェイントであり、凄まじい

瞬発力で背後に回ってから、本命の一撃を与えたのだ。

女は聴覚と触覚も駆使して、どうにか男の動きについて

いき、戦槌の柄を器用に使ってガードした。


「うおおおおおおっっっ!!!!!」


 宙で高速スピンすらしている女にとどめを刺すべく、

男は狙いを定めて全速力で駆け出した。


「フッ…………」


 が、女は大きく吹き飛ばされた事で発生した滞空

時間を逆手にとり、一息ついて冷静さを取り戻した。

そして…………


『ギュルルルッッ!!』


 持ち前の平衡感覚を活かし、宙で体制を整えたのだ。


「!!、おおおおおおっっ!!」


 男もその様子を見逃さず、気合いを入れつつも女の

次の動きを注意深く観察した。


「ドォオ…っっ!!」


 男はとどめの一撃を放とうとしたが、中断して

後退した。


「ダアッッッ!!!!!」

『ドゴォン!!!!!』


 女が回転速度を活かした必殺の全宙叩き込みを

繰り出したからだ。が、この技は彼女の筋力では

出せない破壊力の技である。故に、


「貰ったぁ!!」


 浮いた女の胴体めがけて、男が全力の一閃を

繰り出したのだ。


『スカッ……』

「!?」


 が、浮き上がりつつある女の身体が急速に縮まり、

両手斧は空を斬ることになった。


「だあっ!!」

「うおっ!…っ!?」


 女は戦槌の一撃で得た反作用で浮きつつ、更に

身を縮めることで、戦槌と自身の空間を広げること

によって、回避していたのだ。


 それだけでなく、大きく獲得した前回転の速度を

利用した、踵落としをも繰り出したのだ。男は咄嗟に

両腕でガードしたが、腕に加わる衝撃の小ささに

違和感を感じた。


「なるっ…!!」


 直後、女の背中から美脚が眼前を過ったことで、

蹴りの威力を抑えて、素早く地面に落ちようと

したことを理解した。


「程なぁ!!」


 だったらと、落ちる前にぶったぎると言わん

ばかりの逆袈裟懸けを、持ち上げていた右腕のみで

繰り出そうとした。


「フンッ!」

『ガッ!』

「!」


 しかし、女はそれも読んでおり、右手を軸に全速力

で回した左足を、男の右手首にヒットさせることで、

斧の速度を一瞬止め、更に、自身は左手で戦槌を

取り戻しつつ、立位に戻って体制を整えた。


「だあっ!!」

「くっ!…オラッ!!」


 直ぐ様移動と攻撃のタイムラグが、ほぼ0の

袈裟懸(けさが)けを繰り出してきた女に対し、男は後退

して避けつつ、体制を崩さず畳み掛けてくる事を

逆手にとって、速攻で両手斧を垂直に振り下ろした。


「甘い!」

『ガゴン!!』

「ぬおっっ!!」



 が、女はこれを最小限の横移動で回避し、同時に

行っていた回転を活かし、間髪入れずに横薙ぎの

一撃を繰り出してきた。どうにか斧ガードで防いだ

男だったが、横方向の高速スピンが加わってしまう。


「ぐっ」


 斧を地面に刺して、回転から体制を整えるという

荒業をこなした男だが、随所の全力発揮と無駄な

動きによるスタミナの減少も相まって、焦りが

生まれている。


「はああああっっ!!」


 好機と見た女は、全力で距離を詰め、勢いを

乗せた一撃を繰り出してきた。


「ぬぐおっ…………!!」


 槌頭の速度が乗らない内にガードしたにも関わらず、

遂に男は後ろへ滑らされた。


「まだよっ!!」

「ここだ! っ!!」


 更に、攻撃速度と狙いも緩んでおり、カウンター

に放った上ずった横薙ぎを、軽くしゃがむだけで

避けられた。


「はあっ!!」

「うおあっ!!」


 女の効率的な横薙ぎこそかわしたものの、大きな

後ろ跳躍という隙だらけの回避となった。


「隙だらけね!」

「うっせぇ!!」


 勢いを着けて振りかぶった女に対し、斧頭の

突きで牽制しようとしたが、動作を簡略化した

振り下ろし攻撃によって、男の両手斧が、地面に

叩きつけられる形で、男の手から離れた。


「しまった!」

「終わりよ!!」

「当たるかぁ!!」


 ここからは、女の連撃による一方的な(じゅう)(りん)…………


(こうなりゃ素手でも…………)


 に抵抗しようと、男は懐に潜り込む隙を伺う。


(今だ!)

「フッ!!」

『ポグッ!』

「っはっ!!」


 隙を見て懐に潜り込もうとしたが、それを見越して

いた女の突きが飛んできたので、後退で致命打を防いだ。


 しかし、男のスタミナは限界に近づいており、息が

乱れた。


(斧さえ掴めればよぉ!!)

「はあっ!!」

「ウオラァアァッッッ!!!」


 やはり得意の両手斧だと言わんばかりに、女の

袈裟懸けをしゃがみで回避した後、低重心のまま

獣のような動きぶりで、斧の落下地点まで駆け抜けた。


「ッシャ!!……あ」


 しかし、スタミナ減少による動作の鈍りと、狙いを

読んでいたことが重なって、両手斧を手に取った男が

気づいた時には、女の戦槌が振り下ろされている最中

だった。


(……無理だな)


 瞬時に被弾の回避が不可能であることを悟った

男は、全身の筋肉を、斧の駆動のみに費やした。


「グガッ!!」


 男の首と肩甲骨の中心に、女の戦槌が激突。が、

同時に


「がはぁっっ!?」


 女の鳩尾にも、男の両手斧の斧頭が激突したの

だった。


「そこまで!!」


 ここで、ジャッジが下されることとなった。


「ガッ……ハアッ!!…………ゼエッ!…………ゼエッ!」

「ゲホッ! ゴホッ! …………はぁ…………はぁ」


 それぞれ、両手両膝を着いたり、うずくまったり

しながら、内容物を吐き、呼吸を整えた。


「両者同時に有効打を与えたことにより、引き分け

とする!」


 結果は、完全に引き分けと判断された。


「っはぁ、まーた引き分けかぁ。てか、

腹大丈夫か? ミュール」


「はぁ…………はぁ…………な、何とか大丈夫

…………バルディこそ、背骨ずれてない?」


「はっ、俺の頑丈さ舐めんじゃねーよ」


「私の事こそ、その辺の女みたいにか弱いと

思わないでくれる?」


「いや…………2人とも、バトルセンスヤバすぎだろ」


 俺は、バルディのパワー全開のスタイルと、

ミュールのスーパーテクニカルなスタイルを

見て、カルロスの舐め腐った戦闘とは質が

比べ物にならないと感じた。


「おいおい…………1番ヤベー奴に褒められたぞ

俺ら…………」

「ワイルドコーチ…………ほ、本当にそう…………

思う…………??」


 2人は、俺に褒められるとは思っていなかった

らしく、互いに顔を合わせ、喜びと照れが混じった

表情になった。


「本当だよ。けど…………なんていうかその…………」


「決着だが、何だあれは…………いつもあんな感じ

なのか…………? 実際の武器でああなったら、両方

とも死んでいてもおかしく無いぞ」


 クレインさんも同じことを思っていたようだ。

あれが武器だったら、バルディの背骨は間違いなく

ズレ砕け、ミュールのお腹に裂傷が走りつつ、

あばら骨が砕けていただろう。


 控えめに言って、大惨事だ。


「まーなー…………」

「本当ね~…………って、あれはバルディのカウンター

がムチャクチャすぎなのよ! 刺し違え前提の攻撃を

あんなに躊躇無く打つとか怖すぎよ!」

「ん~だよ、だから自分の勝ちだって言いてぇ

のか? ええ!?」

「そうじゃないけどさ…………」


「はぁ…………お互い、相手の長所をもう少し吸収

しないといけなさそうだな。ミュールは基礎筋力を、

バルディは身のこなしを私達から学び取るのだぞ。

良いな」


「ガッデム!」

「はい!…………だから何なのソレ!!」

「ソレって何だよ!」


(仲が良いのやら悪いのやら…………)


 直ぐに張り合う戦士訓練所ツートップの2人を

見て、俺の脳裏には良く分からない感情が渦巻いて

いた。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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